地味ログ東洋硬化.うろつき雑記

寒い時も暑い時も、寒い場所も暑い場所も、処かまわず神出鬼没な東洋硬化の表面処理を、ポップに語ります。

バルカンの民族問題3類型

2009年03月29日 23時40分15秒 | 時事ネタ


出張中、京都市内にて飛び込んだ本屋の専門書コーナーで気になる小冊子
を入手しました。

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『バルカンの民族主義』          =柴宣弘・著
                  (山川出版社・729円)

(表紙裏表記から)「民族の悲劇」はなぜバルカンで生じるのであろうか。
凄惨なボスニア内戦を見るにつけ、だれしもが感じた疑問であろう。バルカ
ンは「ヨーロッパの火薬庫」と称されて以来、「紛争地域」「危険地域」との
イメージがつきまとっている。バルカンの民族主義を近現代史のなかで検討
し、この地域の諸民族の対立の背景を探ると同時に、諸民族が協力しよう
と模索した側面にも光を当てて、民族主義からの脱却の展望を考える。

(1996年4月25日 1版1刷発行、僕の購入分は2006年9月25日
1版10刷発行です。13年前現在のバルカン情勢を元に書かれています
ので、既に、記載状況が陳腐化している部分ありなのですが、「東欧現代史
(有斐閣)」や「ユーゴスラビア現代史(岩波書店)」をお書きになった当代一
の中東欧・バルカン研究家の書です。簡潔な文の中に的確さ透徹さ有り)

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本文86ページ程度の副読本的小冊子なのですが、オスマン帝国支配の
元で、18世紀初頭から始まったバルカン諸民族の民族主義的開放運動
の勃興をまず説明し、オスマン帝国の頚きから解き離れつつも各民族同士
で離反・集合した歴史と現時点での状況を淡々と記載なさっておいで
です。

ともすると陰惨な描写ばかりがクローズアップされるバルカン関係本です
が、この書籍では最後に「バルカン地域協力の可能性」との章を設け、
民族の対立・抗争を超えた共存・協調の関係をつくろうとする試みの一つ
として「バルカン連邦構想」を挙げ、その具現化についての歩みを記載
してある部分が救いと言えるかもしれません。

そうした文中で、昨今のバルカン情勢を端的に言い表す箇所に行き当たり
ましたので、ここに要約してみたく思います。


第二次大戦後、数十年に渡った東西冷戦が終息するに伴って、東欧諸国
の国家体制転換は1989年にポーランドとハンガリーを先頭に始まりまし
た。バルカン諸国においてもルーマニアやブルガリアにまず多大な影響を
与え、独自の社会主義の道を歩んでいたユーゴスラビアや鎖国政策を採り
続けていたアルバニアにさえ波紋を及ぼし、40年以上に渡り維持されて
きた社会主義は各国でことごとく否定されてしまいました。ことにユーゴ
スラビアにおいては国家解体にまで到ってしまうほどでした。

この独裁的社会主義体制の崩壊の流れの中で、バルカン各国の社会で
背後に押しやられていた民族主義が顕在化しました。

現在見られるバルカン地域での民族問題を以下に3分類してみます。

①第一次大戦後に、多民族から構成されていながら「(仮想)国民国家」
として建国されたユーゴスラビア内での主要構成民族間の対立。その典
型は、文字も宗教も異なったセルビア人とクロアチア人の対立が挙げられ
ます。両大戦間期にはセルビア人による中央集権体制に反発する「クロア
チア問題」として、ユーゴスラビアがすっかり解体し終わった現在では、
旧ユーゴスラビア各国内での「セルビア人問題」として。1992年に解体
したチェコスロヴァキア内のチェック人とスロヴァック人の対立もこの分類
にカテゴライズされますし、現在でも問題とされているのはモルドヴァ共和
国内に住むロシア人、バルカン地域ではありませんが、バルト3国に住む
ロシア人の問題などもここに分類されるものと思います。

②1912~13年のバルカン戦争や両大戦の結果、元々一つの連続性の
ある地域だったのが、周囲の数カ国によって分割されてしまい、さらに現在
その矛盾が顕在化している問題を挙げます。民族自決意識高揚の遅れか
ら、バルカン戦争によりギリシャとセルビアとブルガリアに分割されてしまっ
たマケドニアがその最たる例か
。①でも触れましたが、元々ルーマニア人が
居住していたにも関わらず第二次大戦によりソ連の一共和国となり、ソ連
解体に伴い独立したモルドヴァとルーマニアとの統合(いわゆるベッサラビ
ア問題)など。

③民族構成の複雑なバルカン諸国共通の少数民族の問題。(この書籍に
は記述されていませんが)昨年セルビアから独立したコソヴォ内で少数民
族の地位に転落したセルビア人の問題
、ルーマニアのトランシルヴァニア
地域におけるハンガリー人問題、ブルガリアでのトルコ人問題などが挙げ
られます。僕個人的にはセルビアのボイヴォディナ自治州のハンガリー人
問題もいずれ顕在化するのではないか、と懸念しています。それと、各国
にて非可触賎民扱いされ迫害されつつ、これまで自己主張してこなかった
ロマ(ジプシー)
が政党結成し権利主張し始めているのも懸念材料とされる、
とのこと。

あまりにも問題が山積し過ぎている感のあるバルカン地域ですが、今後、
地域間国家間協力が推進されることを祈念しつつ、僕なりにこのエリアに
ついて学んでいきたいと考えています。


これからも、時々、中東欧バルカンコーカサス地域の民族問題をブログネタ
にしていく所存です。ダレずにお付き合い下さるならば幸甚に思います。



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