国道122号沿いの音楽喫茶 『ドルフィン』

さぁ、音楽を聴け!
コーヒーは自分で沸かして用意して…
そんな仮想の音楽喫茶

名曲が名ピアニストと出会ったならば…

2010年01月08日 | マスターの独り言(アルバムのこと)
セロニアス・モンクの曲というのは独特の響きを持っている。
メロディー運びは単純で
それこそ子どもが無意識のうちに創りだしてしまったような感じである。
だが実際の演奏はかなり大変なようだ。
マイルスがモンクの「ラウンド・ミッドナイト」を
なかなか上手に演奏できずにいたというエピソードを持っている。

僕はモンクについてはピアニストとしても力はあるが、
それ以上にコンポーザーとして、またバンドリーダーとして
結構全体の構成、表現に力を置いていたと考えている。
そんなモンクの曲を多くのジャズミュージシャンたちは取り上げる。
それはバド・パウエル例外ではない。
パウエルといえば弾く曲は全てパウエル色となり、
しかもそれがカラフルではなく、「灰色」を基調にした音に変えてしまう。
明るい曲なのにどこか鬱的で、暗い曲なのに行間に美しさがあるという
あまのじゃく的なパウエルもモンクの曲を取り上げたアルバムを残している。

『ア・ポートレート・オブ・セロニアス』
パウエルがパリで録音した後期の作品である。
ライブ音源であるが、その凄みは客の拍手からも感じ取れる。
モンクの曲を全部で4曲演奏しているが、どれも素晴らしい。
3曲目の「ルビー・マイ・ディア」では、
パウエルが思い切り沈み込むような美しさで語っている。
パウエルというと「狂気の人」のようにとられがちだが、
バラードではこれ以上ないロマンチックな一面を見せてくれる。
5曲目は僕の好きな「セロニアス」である。
同じメロディーを表情を変えながら調子よく演奏していく。

ここでのパウエルは緊迫感に溢れた感じではなく、
どこまでも気楽に快調に飛ばしていく。
脇を固めるケニー・クラークの軽妙なドラミングも聴き所だ。
ジャズ界の名曲が名ピアニストに出会うとスゴイ物が生まれてしまうのだ。