国道122号沿いの音楽喫茶 『ドルフィン』

さぁ、音楽を聴け!
コーヒーは自分で沸かして用意して…
そんな仮想の音楽喫茶

ライブはタイミング!…もある

2010年01月07日 | マスターの独り言(ライブのこと)
実を言えばちょっと心配だった。
「ライブ」とは訳せば「生」である。
ジャズが人によって演奏される限り、その演奏は「生き物」となるわけだ。
「生き物」だっていろいろいる。
つかまえるのが難しいほど元気なこともあれば、ちょっと弱ったことだってある。
まぁ、それがライブの醍醐味にもつながっているのだろう…

今回シダー・ウォルトンのライブで僕が心配だったのは、
初日の1stShowだったことだ。
その日に来日してすぐ演奏、ということはないだろうが、
実は公演初日というのはあまりよくない。
何がよくないかというとやはり旅の疲れが出やすかったり、
環境になれずに慣らし運転といった感がよくあるのだ。
で、今回はまさにそれが的中してしまったと個人的に思っている。

順を追えば、1曲目「The Newest Blues」はとてもノリがよかった。
全体としてメリハリがあり、
シダーのソロも非常に流れるように美しいメロディーを紡いでいた。
これはトリオ全員に見せ場があったし、曲としてのまとまりもあった。
ところが進むにつれて、どこか冷めていく感じがした。
ジャズにとって会場の興奮が落ち着きに変わっていってしまうのはよくない。

4曲目は僕の大好きな「ホリーランド」だった。
正直この瞬間、僕はまさか作曲者自身の生演奏が聴けるとはとかなり興奮した。
盛大な拍手を送ってもいいぐらいだった。
何せ名曲である。
だが、思ってみれば会場にいた人が
どれだけシダーの「ホーリーランド」を待ち望んでいたのだろう?
しかも演奏は残念と言うか何と言うかベースソロが一番長く、
シダーのソロはほとんど無いに等しかった。
終わった後にやっぱりタイトルコールで拍手をすればよかったと後悔してしまう。

最後はアンコールもなく1時間ちょっとのライブはあっさりと終わってしまった。
確かにシダーの演奏はよかった。
鍵盤にとても軽やかにタッチし、
撫でているようにしか見えないのに力強さも優美さも奏でていた。
最後のモンクの曲のメドレーはかなりノってきていたと思う。
ときおり笑みもこぼれ、トリオも息が揃ってきた様子だった。
それだけにアンコールがなかったのは、ちょっと残念だった。

もしかすると2ndShowは、かなりノッてきていたのかもしれない。
徐々に調子が上がってきて、
今日ぐらいにはかなりノッた演奏があったのかもしれない。
これがライブの怖いところだ。
「生」であるが故の「タイミング」があるのだ。
生シダーが見られたことはよかった。
でも、生シダーの「演奏」が聴けなかった今回はちょっと残念なライブだった。
明日が最終日である。
きっと明日は最後の全てを絞り出したシダートリオが
良い演奏を聴かせてくれるかもしれない。