厚生労働相に対して執行するとともに、労働政策審議会職業能力開発分科会委員に参考送付しました。
訓練・生活支援給付に関する要望書
厚生労働大臣 細川律夫 殿
労働政策審議会職業能力開発分科会 御中
とすねっと要望書第16号
平成23年6月27日
東京災害支援ネット(とすねっと)
代表 森 川 清
(事務局)
〒170-0003 東京都豊島区駒込1-43-14
SK90ビル302森川清法律事務所内
電話:080-4322-2018
第1 要望の趣旨
東日本大震災における求職者支援制度での震災対応の追加的措置として、訓練・生活支援給付の支給の対象者を世帯の主たる生計者以外にも拡充し、申請時点での世帯全体の年収要件を緩和してください。
第2 要望の理由
1 わたしたちは、主に都内で東日本大震災の被災者を支援する活動に携わっている弁護士・司法書士・市民等のボランティア・グループです(代表・森川清弁護士)。インターネット(ブログ)やニュースレター「とすねっと通信」を通じて被災者に必要な情報を提供し、避難所や電話での相談活動を行っております。
2 私たちが支援活動に当たっている避難者には、乳幼児を始めとする子どもの放射線被ばくを恐れて都内に避難している母親が多数いらっしゃいます。そのうち、特に生計を維持するために父親が福島県に残って仕事をするという二重生活を強いられているケースも多数あります。
また、夫婦で都内に避難している人で、世帯主である夫が就職できたものの妻が就職できずに苦労しているケースもあります。
3 上記の母親たちが就労するにも、避難して見知らぬ土地で不安定な生活をせざるを得ない負担の大きさ、保育サービスの利用も必ずしもスムーズにいかないこと、家族やコミュニティと離れることで生活や子育てにも不安が強くなること、求職する側も偏見を持って対応し求職する避難者の意欲をそいでいくこと(例えば「福島にすぐ帰るんですよね」などと心ない言葉が投げかけられて不採用となった人もおります)など、雇用状況がよくない現状において、求職する被災者の負担、求職・就労における不利は極めて大きくなっています。
就職に向けての導入として、都内に避難してきた被災者について職業訓練を実施する意義は大きいものです。
4 しかし、二重生活をすることで生計が厳しい状態にあったり、夫婦で避難して世帯主が就職しても低収入だったりしており、避難者が生活費の保障なしに職業訓練を受ける余裕はありません。
このままの状態では最も職業訓練をすることが望ましい人たちに職業訓練の機会を与えないに均しいと言っても過言ではありません。
5 現在、労働政策審議会職業能力開発分科会において、求職者支援制度での震災対応として被災者の訓練受講機会の拡充について検討がなされていることからすれば、二重生活を強いられるなどしている被災者が求職者支援制度を利用できるよう改善がなされるべきです。
6 このことは、国連の「国内強制移動に関する指導原則」23−4からも要求されるものと言えます。
同原則の主体である国内避難民には避難を「余儀なくされた者」も含まれており、予防原則の観点からすれば、30キロ圏外からの避難者も、その多く(特に子ども及びその養育者や妊婦)が国内避難民といえます。
そうであれば、同原則23−4「教育および訓練の施設については、条件が許す限り速やかに、キャンプに居住しているか否かにかかわらず国内避難民(特に未成年者および女性)にとって利用可能なものとする」ことからすれば、父親と離れて暮らしている女性である母親が職業訓練を受ける条件を整備すべきこととなります。
7 よって、避難者が二重生活を強いられ家計が圧迫されたり世帯主が低収入であったりすることなどから避難者の生活の負担が増大していますので、東日本大震災の被災者については、特例として①世帯主以外の者を支給の対象者とすることと、②世帯全体の年収が300万円以下という要件を緩和する措置をとることを要請いたします。
以上