寅の子文庫の、とらのこ日記

本が読みたいけど本が読めない備忘録

7冊のカラーブックス178~184まで。

2005年07月11日 18時55分01秒 | カラーブックス
【7冊のカラーブックス】 今週は178番から184番まで掲載します。

178番【山陰/歴史と文学の旅】宮崎修二朗/初版44年8月1日
179 【グッピーの魅力】牧野信司/初版44年9月1日
180 【法隆寺】寺尾勇・入江泰吉/初版44年9月1日
181 【国会】久保田冨弘/初版44年10月1日
182 【こけし】山中登/初版44年10月1日
183 【名画に見るキリスト】田中忠雄・田中文雄/初版44年11月1日
184 【佐保寺の寺】門脇禎二・入江泰吉/初版44年11月1日



178番【山陰/歴史と文学の旅】の宮崎修二朗氏は【166番・岬/文学と旅情】に継ぐ執筆、今回も楽しい文学散歩となりました。33ページには私の好きな井上靖の『通夜の客』の舞台となった鳥取県日南町生山(旧福栄村)が出ています。一般に山陰、(または裏日本)という地名の響きは同じ中国地方の山陽に相対して暗いマイナスイメージをもちますが古来、大陸との文化、経済の交流はむしろこの地方が表日本側であり、山陰道八カ国の隅々には日本書記の時代より連綿と受け継がれてきた文化伝統の遺産を数多く見付けることが出来ます。学校の授業では決して教わることのない歴史の残り香や文学の面影を、寝転んで勉強できる楽しさがこの一冊にはあります。勿論、そんなときは中学校の地図帳は必携ですね。

179番【グッピーの魅力】の牧野信司氏は早くもカラーブックス4冊目の執筆となりました。今からおよそ40年も以前にグッピー人気の時代があったかと思うと、ちょっと想像できません。後文で述べられているように熱帯魚には『グッピーに始まり、グッピーに戻る』という言葉があるそうです。これはその道の奥義を極める譬えですが、本書ではまさにグッピーの魅力がまるごと一冊に凝縮しています。卵を産まずに仔魚を産む(胎生)あたりが猶のこと可愛いくなるのでしょうか。

さて、カラーブックスでは【奈良の寺シリーズ】が始まります。今回の7冊、の中にも180番【法隆寺】と184番【佐保路の寺】の2冊が登場しています。これから208番までの間に合計7冊が出てきます。いずれも入江泰吉氏の美しいカラー写真と当代一級の史学者や文学者の方の丁寧な解説により、古都の歴史を、その時代を生き抜いた人びとの息使いまで伝わってくるような旅愁溢れる仕上がりになっています。どうぞお楽しみに。

181番【国会】はカラーブックスの中ではちょっと異色な存在です。岩波書店の【日本史年表/ISBN4-00-001702】を引くと、本書が刊行された昭和44年10月当時は第2次佐藤栄作内閣とありました。この年の1月には学生紛争が頂点に達した東大安田講堂における機動隊8500名との衝突、374人の検挙の記事が出ていました。本書では内閣総理大臣官邸写真室に従事した筆者がカラーブックスを借りて、この国の政治について、政治を司る国会議事堂の内部をつぶさに写真紹介することにより、一般世間に広く理解を求めた会心の一冊となりました。特定の政治色を出さない内容が爽やかな読後感となっています。

183番【名画に見るキリスト】はキリスト教美術の散策を気軽に楽しめるということと、実は聖書を読むことが出来ない人たちをも含めてそれは描かれているということ。そして、絵を見て誰にでもイエス・キリストの教えが明快にわかるということの素晴らしさと、更にはその名画自体が信仰の対象物に足りうることまで教えています。厚い聖書の代わりにポケットに入れて、キリストを伝える名画を時として会社の昼休み、気軽に楽しんでみてはいかがですか。