寅の子文庫の、とらのこ日記

本が読みたいけど本が読めない備忘録

田部重治さんの本、また旅に出ました。

2006年03月30日 23時03分50秒 | 売れた本と売りたくなかった本
ボロボロに赤くヤケて書き込み多数、カバー無し・・・
流れ流れて辿り着いたうちの本棚を
終の棲家とさせてやりたかった。

売らないはずの本だけど、
売れないはずの本なのに、

是非にと、直接お電話を受けました。
慌しくまた旅支度、後ろ髪を引かれて写真も撮りました。
カバーの替わりにパラフィン紙を巻いておきます。
手放すときはうちで買取ります、もういちどお声を掛けてください。

今日、笑顔で送り出しました。
武蔵野市のSさん、宜しく頼みます。


今日売れてしまった本~
【山と渓谷~随筆篇/田部重治・角川文庫・昭和29年4刷/定価70円】

旅する本 ~井上靖/美也と六人の恋人、売れました。

2005年06月28日 22時36分33秒 | 売れた本と売りたくなかった本


古本屋とは因果な商売。読みたいけれども読めない。買ってすぐ読める本と、そうでない本とがある。そうでない本とは、本棚に暫く立てて本の体裁を眺めてみたり、ちょっと手にしてはまた棚に返したり、少し遠目に棚を見ては心落ち着かせ、そんな他愛ないことを繰り返しながら、子どもの頃一番おいしいものは最後までとっておいた!、あの食べ方の心理に似て、いつまでたっても手を付けない。本文は読まずに先ず、こてならしとばかり、あとがきに目を通したり、カバーの袖書きを読んでみたりと、一向にページをめくれないで居る。そして或るとき、わけもなく自然と一気と読み上げてしまう。内に秘めたる本への思いが何かの拍子で本に触れ、意思を待たないはずの本と通じ合ってしまうのだ。そんなゾクゾクする本に出会うことがある。そして大概、そういう本は意図も容易く売れてしまうのである。

【美也と六人の恋人】井上靖/光文社/昭和30年3月5日初版/定価100円
収録作品は短編6作
【薄氷】昭和27年/新潮1月号
【美也と六人の恋人】昭和27年/文藝春秋別冊30号
【夜の金魚】昭和29年/改造10月号
【チャンピオン】昭和29年/文藝春秋別冊42号
【投網】昭和29年/知性11月号
【合流点】昭和30年/新潮1月号

若い日に井上靖を右から左とむさぼり読んだがこれらの短編にお目にかかったことはなかった。

見返しに昭和三十年三月二十九日 竹田晴代、14才、と記名がある。
きっと小さな胸を躍らせながら、読みふけったに違いない。
50年の歳月を経て乙女は人生総仕上げのときを迎えていると、願う。
私はこの本を200円で買い、手元に2年置いただけで仮の宿となった。
昨日、400円で売り、今朝一番で冊子小包にして大阪へ送り出した。
1冊の本が何人もの人を介して旅をする、不思議さ。
介した人の数だけ本は傷みもする。しかし、それは古本の値打ちであると信ずる。
そして古い本はどこか母に似ている、大切にしなくては。

大阪のKさん、宜しく頼みます。

芹沢光治良売れました。

2005年04月29日 22時35分25秒 | 売れた本と売りたくなかった本

芹沢光治良
の文庫本が2冊売れた。
ともに状態はよくない、並下。しかし思い入れの2冊、付き合いは長い。オンライン古書店なんぞ始めなければ本棚の奥で穏やかな余生を送っていたに違い無い。誰も買わないから大丈夫だよ~などとサクラを頼んで目録に載せていたが後の祭り。今朝、梱包する前にお別れ写真を撮った。

【告別/昭和54年初版/本人あとがき/定価260円】/左
新刊を 芹沢文学館 で購入、シスレーのカバー絵/が気に入っていた。

【弧絶/昭和30年初版/解説・佐古純一郎/定価70円】
20年以上昔に神田で見つけた、氏を語るには必読の書。

離れ離れにならなかったのがせめてもの救い。新しいご主人様のお手元で確り使命を果たせと笑顔で送り出した。北九州のSさん、どうか宜しく頼みます。

芹沢光治良の『人間の運命』

2005年01月11日 00時30分16秒 | 売れた本と売りたくなかった本
芹沢光治良の傑作『人間の運命』単行本全14巻をUPする。
作者自身の多感な成長期に目に映る沼津我入道浜の生活風景描写が好きだ。
この郷土の偉人を広く世の中に宣揚し啓蒙したい。
1年中、恐らくは西風の強いであろう海岸の松林の中にひっそりと文学館が立つ。
少し離れている街中に生誕地の碑が建っていた。