国際競争力が落ち、円安が進み、少子高齢化で人口減少・・・すっかり自信をなくしているこの国。
「ジャパン アズ No.1」と言われた輝ける1980年代・・・あの栄光の影もありません。
GAFAに体表される米国のIT企業に席巻され、すっかりガラパゴスになった日本。
イノベーションを起こそう!DXの推進だ!SDGs先進国へ、ソサエティ5.0などと勇ましい掛け声が上がっていますが、なかなかアクション、成果に結びついていません。
日本人の気質からして、GAFAや中国のBATに対抗していくという戦略は、もう難しいと思います。
というより、既にIT分野では周回遅れになっているため、同じ分野ではおそらく追いつかないでしょう。
とすると、日本人の得意技は、「改善」力。
KAIZENと言う言葉は英語でも通用するくらいの、世界を席巻した日本の独自力です。
「改善」とは、悪い所を改めて良くすること。
日本の製造業は、5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)と共に、このKAIZENでは世界最高レベルにあります。
中堅企業以上の製造現場に行くと、工員、エンジニアひとり一人が日々カイゼン活動を続けており、その問題意識の高さには脱帽です。
改善の基本には、大きく3つの方法論があります。
1 「止める」こと・・・ムダをやめる、不要をやめる、過剰を止める
2 「減らす」・・・部分的な停止・廃止
3 「変える」こと・・・視点、立場を変える 手順・方法を改える 素材・部品を代える ピンチをチャンスに変える 原点・初心に返る。
また、今風に言うと「ECRS」というムリ・ムダ・ムラ排除する「業務改善」の方法論があります。
「イクルス」と読みます。
E=Eliminate 除去する 無駄な作業を除去していくこと
C=Combine まとめる 業務をまとめること
R=Rearrange 整理する 業務を整理すること
S=Simplify 簡単にする 物事をシンプルにすること
これらを考えることで業務改善を行おうという業務改善ステップです。
「E → C → R → S」の順で取り組むことが一般的です。
「S < R < C < E 」という順で改善効果が増すとされています。
仕事や家事、キャリア設計、人生計画にも応用が効くフレームワークです。
これらのムリ・ムダ・ムラの排除も今から100年前に米国の工場で発明されたマネジメント手法が原点になります。
テーラーやギルブレスの科学的管理法が礎になっています。
それを日本に輸入したのが、能率技師(経営コンサルタント)の上野陽一(1883年~1957年)。
日本の「能率の父」と呼ばれました。
ムリ・ムダ・ムラを「3ム」として、これをなくしていくことに生涯をかけました。
これにより、それまで「経験・勘・度胸」で進められていた現場に、サイエンスが持ち込まれました。
上野陽一が語る3つの「ム」
1 ムダ…「ムダ」というのは、達成しようという目的と比較して、そのために投入しようとする手段が大きすぎるという場合である。たとえば、1トンの貨物を運ぶのに、4トン積みのトラックを用いるようなケースがそれである。この場合には、トラックの持つ能力のわずか4分の1しか使われていないので、明らかに手段が大きすぎるということになる。
2 ムリ…これは達成しようという目的に比較して、そのために投入しようとする手段が小さすぎる場合である。たとえば、4トンの貨物を運ぶのに、1トン積みのトラックを用いるようなケースがそれである。この場合には、トラックの持つ能力が不足している。
3 ムラ…ムダやムリが生じる状態はしばしば発生する。ときには、ムダとムリとが同時に発生することもある。このようにムダやムリが発生する状態にあることを「ムラがある」という。
上野陽一のオリジナルの図です。
なかなか素敵なコンセプトです。
そして、上野陽一はムリ・ムダ・ムラをなくし、能率を高めていくために6つの原理を提唱します。
能率の6原理
1.移転(ウツシ)の原理…労力、熟練、判断・高度な技術・専門能力などを道具、機械、装置などにウツス。
2.補足(オギナイ)の原理…人間の持っている能力で不足しているものをオギナウ。
・判断力の不足…コンピュータ、データベース、シンクタンク
・感覚力の不足…マイク、スピーカー、字幕スーパー
・行動力の不足…交通機関、電話、ファックス
・記憶力の不足…磁気テープ、フロッピーディスク
3.分担(テワケ)の原理…労働の分担 機能の分担 製造の分担 産業の分担
4.連結(ツナゲ)の原理…ヨコ串を刺す
5.集約(マトメ)の原理…単純化 標準化 中心化
6.発奮(ハゲミ)の原理…意気込みの違いが仕事に大きく影響する
そして、上野陽一は、人生と能率についても言及します。
いつ、いかなる状況、いかなる目的と手段の段階でも、常にそのもちまえを十分に発揮させなければならないものがあるとすれば、それは人間の能力である。
目的と手段を考え、それを実行するのは人間だが、そのもちまえを発揮せず、無為にその日その日を過ごすなら、いかなる目的も達成することは出来ない。
これは個人的にも社会的にも大きな損失であると言わねばならない。
どんな分野であれ、成功者と言われる人は、無意識のうちに「目的と実績の比」を考え、反省しながら、自分の能力を伸ばしている。
目的と手段を意識しながら、ムリ・ムダ・ムラをなくしてシンプルに生きる・・・
足るを知る・・・
とっても日本的なコンセプトだと思います。
がんばろう!ニッポン