特捜最前線日記

特捜最前線について語ります。
ネタバレを含んでいますので、ご注意ください。

第385話 新幹線出張殺人!

2008年02月21日 23時26分23秒 | Weblog
脚本 佐藤五月、監督 辻理

一人暮らしの老人が自宅で殺された。現場の様子から、年金狙いの顔見知りの犯行と見た特命課は、現場に残された銀行員の名刺と、口紅のついたチリ紙を手掛かりに捜査を開始する。近所の証言では、半年ほど前、被害者宅を訪れた銀行員が、口論の末に追い返されていた。銀行員は、現在では三重の四日市に転勤しており、そのアリバイを調べるべく紅林と叶が四日市へ向かった。
妻とともに取引先の娘の結婚式に出席していた銀行員に同行を求め、事情を聞く紅林。銀行員は「被害社宅には預金の勧誘にいっただけ」と犯行を否定するが、犯行当夜の行動については口を閉ざした。警察を訪ねてきた銀行員の妻が「夫は犯行当夜、浮気相手の若い女と一緒でした」と証言したことで、銀行員の無実は証明される。その浮気相手が、先ほどの結婚式の新婦だと知った紅林は、驚きとともに、妻への同情を隠せなかった。
その頃、東京で被害者の交友関係を調べていた船村と吉野は、被害者の通っていたローケツ染め教室に銀行員の妻も通っていたという事実を掴む。妻を問い質すべく銀行員宅を訪れた紅林は、貞淑な妻という第一印象とは異なり、散らかし放題の住まいに違和感を覚える。妻は被害者に亡き父親の面影を見ていただけだったが、銀行員が二人の仲を誤解したのだという。だが、その後の調べで、夫婦仲が冷え切っていたが、銀行内での評価を気にして離婚を避けていることや、妻が金に飽かせて夜の街を遊び歩いていることが判明。妻に対する不信感を募らせる紅林。
一方東京では、被害者の通っていたキャバレーの馴染みのホステスが、銀行員の妻の変装ではないかとの疑惑が浮上する。別の馴染み客である老人を訪ねたところ、事件の夜に被害者宅から飛び出してくるホステスを見たという。さらに、今夜、ホステスと東京駅で会う約束をしているとの情報を得る。紅林が尾行したところ、妻は東京行きの新幹線に乗り、社内のトイレでホステスの姿に変装。東京駅に着いたところで待ち受けていた特命課が逮捕する。
妻はあっさり犯行を認め「あのおじいちゃんが付け上がるから悪い」と悪びれることなく言い放つ。銀行員にはない優しさにほだされ、遊び半分に付き合っていたら、次第に下心をむき出しにしてくる被害者の姿に「こいつも妻を女中代わりにする亭主と同じだ」と思い、殺意を抱いたという。取調室での妻の告白を聞いていた銀行員に、紅林は断罪するように言う「彼女はあんたに復讐しているんだ。彼女の最大の目的は、世間体や出世だけを考え、自分をモノのように扱ってきたあんたが、社会的に手ひどい報復を受けることなんだよ!」取調室から出てきた妻に土下座し「私を助けると思って判子を押してくれ!」と離婚届を差し出す銀行員を、嘲笑する妻。互いの自己保身と自己憐憫、そして自己正当化がぶつかり合う醜い夫婦の姿を、紅林らは暗然たる思いで見つめるほかなかった。

良かれ悪しかれ極端なエピソードが多く、評価の難しい佐藤五月氏の脚本ですが、今回も話の整合性はかなりアバウトながら(特に、殺人現場から出てくる不審な女を見ても全く疑惑を感じないエロ老人は、正直言って頭が悪すぎ。また、現場付近の聞き込みでこうした目撃証言が一切出てこないのも変)、「結婚なんてするもんじゃない」という熱いメッセージだけは、痛いほどに伝わってきます。
流産して臥せっている妻の枕を蹴飛ばし「亭主が帰ってきたら風呂とメシだ!」と罵る銀行員はもちろん、自分の年齢を省みず若い人妻に下心をむき出しにする老人に対しても、全く同情心は湧きません。しかし、それとは全く別次元で「私が亭主から教わったのは、弱い者虐めのやり方だけ」などと世迷言をぬかし、被害者意識に凝り固まって自分を正当化する妻に対しても、反吐が出るような嫌悪感以外、何の感慨も起こりません。こうした感想は、40前になっても結婚できない社会不適格者ならではの歪んだ見方ではなく、脚本家の狙いそのものとしか思えません。取調室で、化粧を落とそうと掻きむしるように顔をぬぐう妻の姿には「女を醜く描こう」という意思がはっきりと現れており、その後の銀行員に対する過剰なまでの憎まれ口も含めて、視聴者に女に対する嫌悪感を植えつけんとする狙いは明らかです。思い起こせば、第314話「妻たちの犯罪日誌」や第336話「緑色の爪の娘たち」でもそうでしたが、女性に対する激しい憎悪は佐藤脚本の一つの典型であり、誠に余計なお世話ながら、さぞ女性問題で辛い目にあったのだろうと同情を隠せません。
ラストシーン、新婚当初の銀行員夫婦の仲睦まじい写真を見て沈黙する紅林に、神代課長は「夫婦の間のことっていうのは、二人の間にしかわからん。長い間にはいろんなことが起こるし、全く変わってしまうこともある」と語りかけます。「それでも我慢して暮らしてきたんだ、我々の世代は」と続けるおやっさんに「我慢も忍耐も、いまや美徳じゃないからね」と応じる課長。これに対して紅林は、「どうしてそん風になってしまったんですか?人間にとって、愛は変わらぬものと考えるのは甘いんですか?」と答えの返るはずのない虚しい質問をぶつけます。神代課長やおやっさんの台詞は、いずれも悲劇に終わった二人の夫婦生活を知る者の胸に、ひときわ切なく迫ります。その一方で、独身である紅林の台詞が哀しいまでに奇麗事に聞こえるのも、やはり脚本家の狙い通りなのでしょうか?

2 コメント

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これも微妙な話ですな (ですとら)
2008-03-25 01:14:32
引き続いて見ました。
今回も微妙な話ですね。登場人物の行動や態度も極端で、かなり??と疑問符がつく内容でした。
結婚なんてするもんじゃないというのと、女なんて酷いものだというのを主張しすぎて私も嫌悪感を持ちました。
最後の紅林のセリフもとても絵空事に感じられ、ちょっとこの回は残念な感想しか思い浮かびませんでした。
続いて他の回を見て行きたいと思います。
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ラピュタ阿佐ヶ谷 (コロンボ)
2011-08-15 21:15:22
8月13日~10月21日までラピュタ阿佐ヶ谷にて大映ハレンチ青春白書 キケンなお年頃 が上映中!

私は小野川公三郎さんと云えば「トリプルファイター」の早瀬勇二(レッドファイター)の世代なので本作の情けない銀行員役は正直見たくない(苦笑)。

大映も日活よろしくポルノ作品を制作してたんですね。ラインナップで気になったのは「高校生番長 深夜放送」と「高校生番長 ズベ公正統派」(共に小野川さんご出演)。大穴は「穴場あらし」でしょうか。なんたって#31「浅草・愛と逃亡の街」の川崎あかねさんが出てるし(^^)。浅草から二人を逃がすために自己犠牲を捧げるシーンは堪らなく好きです。フ~ンこういう作品群に出てた女優だったのか~(しみじみ)。
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