特捜最前線日記

特捜最前線について語ります。
ネタバレを含んでいますので、ご注意ください。

第433話 モーニング・コールの証明!

2008年09月05日 01時47分03秒 | Weblog
脚本 押川國秋、監督 宮越澄
1985年9月18日放送

【あらすじ】
ある日、特命課に富山県の女性から手紙が届いた。そこには、東京に単身赴任した夫の窮地を救って欲しいとの願いがしたためられてあった。一年前、酒場の女店主が自宅マンションで絞殺された事件で、夫は容疑者として逮捕された。検察が証拠不十分のため処分保留とし、夫は釈放されものの、一年経った今でも被疑者のままであり、世間の目は厳しかった。
再捜査に乗り出した特命課は、職を失って酒浸りの日々を送る夫や、事件を担当した所轄署に事情を聞く。被害者の店は「望郷酒場」と呼ばれる単身赴任者の溜まり場で、夫は酒も飲めないのに酒場に通い、閉店後に被害者を自宅まで車で送り届ける仲だった。事件当夜も車で送っており、マンションの管理人は、夫に背格好が似た男が、深夜に被害者と一緒にマンションに入り、早朝になって出て行く姿を目撃していた。
しかし、夫の証言では、被害者を送るのはアルバイトであり、犯行当日はマンションから1キロも前で被害者を降ろし、犯行時刻にはアパートにいたという。夫のアリバイを証明するのは、故郷の妻からのモーニング・コールと、パトカーらしきサイレンで目を覚ましたという自身の証言だけ。だが、所轄署が調べたところ、事件当日、パトカー類がアパート付近を走ったという事実はなかった。
紅林らは、夫が被害者を降ろした付近で聞き込みを開始。コンビニの防犯用カメラにたまたま残っていた事件当夜の映像から、被害者が買い物をしている姿を確認する。管理人が目撃した男が待っていたようだが、顔は判別できなかった。
そんななか、所轄署は「新たな証拠を発見した」と、夫を再逮捕。逮捕した窃盗犯が所有していた写真の中から、事件当日の早朝、現場近くを走る電車に夫が乗っている姿を発見したのだ。写真の日付は確かにものだったが、紅林は電車内の中吊り広告から、その日付が一日ずれていたことを立証。さらに、夫の聞いたサイレンが、隣室の子供の持つおもちゃのパトカーのものだと判明し、夫の無実は立証される。
一方、桜井は被害者が過去に子供を産み、養子に出していたことを調べ上げる。子供の父親は、望郷酒場の常連の一人だった。養子に出した我が子の姿を、陰から見つめる父親を逮捕する特命課。被害者は、自分の都合で子供を養子に出しながら、前夫との離婚が成立するや、事情を知らない子供や養父母の気持ちも顧みず「子供を取り戻す」と言い出したという。父親はそれが許せず、口論の末に殺害したのだ。
「故郷の奥さんやお子さんが可愛そう・・・」富山から上京してきた妻の涙は、夫の無実を喜ぶものか、それとも、真犯人として逮捕された父親とその家族を哀れんでのものか、紅林にはどちらとも分からなかった。

【感想など】
「処分保留」という宙ぶらりんの状態のまま、殺人犯の汚名を着せられた男の悲劇を、妻子との触れ合いのなかに描いた一本。特命課の捜査によって新たな証拠が次々と(それもあっさりと)見つかる展開に、特命課の有能ぶりよりも、所轄署の無能かつ強引な捜査が際立つばかりで、「こんな杜撰な捜査で冤罪が生み出されているのか・・・」と薄ら寒い思いがしました。
夫役の河原崎次郎氏と父親役の北条清嗣氏、いずれも孤独な単身赴任者(第431話に続いて単身赴任者がドラマの中心というのは、よほど当時の社会が単身赴任を問題視していたのでしょうか?)を演じたゲスト俳優陣の好演はともかく、起伏に欠ける割に唐突なドラマ展開には見るべきものがなく、長々と感想を書くほどのこともありません。