特捜最前線日記

特捜最前線について語ります。
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第363話 獄中からのラブレター!

2007年11月16日 01時45分26秒 | Weblog
脚本 峯尾基三、監督 村山新治

ホステスが自宅で殺された。被害者の顔を見た吉野は驚く。それは、かつて吉野が逮捕した男の恋人だった。4年前、二人組の銀行強盗が女行員を射殺し、現金を奪って逃走した。共犯に裏切られた男は、逃亡中に恋人に助けを求めたところを、恋人を張り込んでいた吉野に逮捕された。男の証言に寄れば、強盗を計画したのも、二人分の銃を用意したのも、女行員を射殺したのも、金を独り占めして持ち去った共犯の仕業。競輪場で知り合っただけで名前も知らなかったため、共犯は今も逃亡したままだった。
男は従犯ゆえに刑期も短く、模範囚だったために仮釈放を目前に控えていた。面会に訪れた吉野から恋人の死を知らされ、男は慟哭する。男への同情を抱きつつ、捜査を開始する特命課。鑑識の結果、被害者の爪に残っていた毛髪が人口毛髪だと判明。人口毛髪メーカーから顧客リストを入手した特命課は、目撃者の証言から割り出した容疑者を逮捕する。
だが、現場から金品が奪われた形跡はなく、犯行動機は謎だった。容疑者の自宅から、男が獄中からホステスに送った手紙が発見され、吉野は容疑者が4年前の共犯だと気付く。容疑者は強盗もホステス殺しも認めたものの、4年前の事件の真相については異を唱えた。主犯格も、女行員を殺したのも、金を独り占めしたのも、すべて服役中の男だったと言うのだ。
4年前、自ら取調べに当たった吉野は、男の証言を支持。白黒を付けるべく、収監中の男を容疑者と対決させる吉野。4年ぶりに対面を果たした二人の証言は、真っ向から食い違う。強盗の舞台となった銀行で現場検証を行ったところ、男は「女行員が非常ベルを押そうとしたのを見ていたが、手が震えて撃てなかった。その隙にこいつが発砲したんだ」と主張する。だが、別の行員の証言によれば、銃を撃たなかった男の位置からでは、非常ベルが見えなかった。男を信じたい吉野だが、容疑者の4年間の足取りを洗って見ても、大金を得た様子はどこにもなかった。自分が欺かれていたことを悟る吉野。だが、男は吉野の追及にもシラを切り続ける。
その間、桜井は容疑者が銃を売ったというチンピラを締め上げる。発見された銃の弾丸は女行員を撃ったものとは一致せず、女行員を撃ったのは男だったと証明される。動かぬ証拠を前に、ついに男は自白する。独り占めした金を隠し、従犯として逮捕されることで、晴れて大金を手にするという計画だった。だが、一事不再理(一度確定判決を受けた事件については、再度の実体審理を認めない)の原則によって、男を再度主犯として裁くことはできない。真実を明らかにしたものの、男を断罪できない矛盾の前に、吉野は苦い表情を浮かべるのだった。

なぜか吉野メインが多い峯尾氏の脚本ですが、毎回どうにも練り込み不足な印象が否めません(第284話「恐喝!」、第295話「モーニングサービスの謎!」、第307話「証言を拒む女!」)。今回は「一事不再理」という、本来は検察側の暴走から市民を守るためのルール(判決に納得いかない検察が、別の罪状で何度も起訴を繰り返すことを防ぐため)を逆手に取った、なかなか興味深いプロットでした。とはいえ、真相が明らかになるプロセスは、あまりにひねりが無さすぎ。何の盛り上がりもなく終わってしまいました。
真相を暴いても断罪できないという「一事不再理」の矛盾をテーマにするなら、自白した男が泣き崩れるのではなく、「それがどうした。もう一度裁判できるものならやって見ろ」とでも開き直った方が、後味の悪さが出て良かったのではないでしょうか?