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精神科医師のブログ。
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安曇総合病院再構築マスタープラン(素素案)公表。

2012年05月01日 | Weblog
平成21年6月から安曇総合病院の将来計画会議病院再構築作業部会が立ち上がり、平成23年8月に再構築検討委員会ができ、その下部組織として8つの部会を置き各部会ごとのテーマに沿った議論をかさねられてきた。

しかし何をやるのかやらないのか、というような大方針がきまらないので、どんな部屋にするのかとか、ドアの形とか、節電はどうするとか枝葉末節に関わることしか議論ができなかった。
まさにパーキンソンの凡俗法則(自転車置き場の色の議論)だ。

各部会で検討された事項を発表した3月6日の委員会。
コンサルタントの試算を無視し、独自の試算をだしリニアックの導入を主張したがん診療部会の発表もあった。

慎重派の

「コンサルタントの試算とどうして違うんですか、もう少し検討をしたほうがいいんじゃないですか?」
「再構築でやること、やらないことというのは、誰が、いつ、どうやって決めるんですか!」
「例えばリニアックをやるのかということに関して賛成か反対か、ここで参考意見として聞いてみたらどうなですか・・。」


というような意見に対して、中川真一院長は、

「それは意味ないんじゃないですかね?言いづらいんじゃないかと思いますけど。」
「現実的なところに立脚してこの案をつくっているんですから。なんでもやりたいという総華的な案ではないと思うんですが。」
「コンサルタントが全てじゃないですから、コンサルタントの考えはやっぱり十分な検討がなされていないんじゃないかと思いましたけど。」
「がん診療部会でリニアックを導入することに結論がでてきたんですから。やるっていう方向でやっていくということでしょう。」
「とにかくリミットを限ってまとめていなかいとまとまらないですよ。いろいろこれからディスカッションをして行きましょうといってもまとまらないですよ。ずいぶん1年も議論してきているんですから。何か土台になるものがないと。場合によっては、がんとか救急をやらないという素案(そんな事は言っていないが)、そういうのを中心にしながら作っていくのもひとつの方法だと思いますけどね。」
「当院がどういう方向性に行くのかというのがないと、リニアックだけにこだわっていてもボクは意味ないんじゃないかと思うですよね。それはホンの一部じゃないかと思うですよね。リニアックも入れるとしたら、今回の再生基金の中で2億というお金がもらえなかったらリニアック諦めるしかないです。ところがそれがあるお陰でなんとかそれほど大きな赤字を出さずにやれるという見通しがあるからやったらどうかという提案になってくる。根本的にリニアックという問題じゃないと思います。今後の安曇病院の機能をどう考えていくのかという、長期的な見通しにたってどうするかという問題ですよね。」
「僕も入っていて、いろんな職種が入っている機能財務部会でまとめてそういう結論になったわけなので・・・。」
「赤字がこんなに出る案は認めてもらえないです。マスタープランをつくっても理事会は通らないです。」
「場合によっては僕の一つの考えなんですが、今ある建物を耐震化して使っていくということもひとつの案かなと。」


???、何をいっているのかサッパリ意味が分からない。
結局、ディスカッションにはならず、決め方もおかしいじゃないかという意見も聞き入れず、大方針も定まらないまま8つの部会のこれまでの検討内容をまとめたラフなマスタープラン素素案を事務局でつくって全体で検討していくということになった。(;´д`)トホホ…

その後のタイムスケジュールも明確に示されず、院長の出したいくつかの案を、全職員の投票で決める。いや、幹部の投票で決めるなどという噂が流れていた。

4月25日の職員全体集会でも、院長からは、ほとんど再構築については触れられず(院長補佐の一人が少し述べただけ)、相変わらず秘密裏にいろいろなことがすすんでいるようであった。
遅々として進まない議論に長野厚生連の本所では安曇総合病院の再構築は無理だというような声も聞こえてくる。

そんな前回の委員会からはや2ヶ月。
5月7日に再構築検討委員会を開催するという連絡があった。
連休明けのどう考えても現場が忙しいと予想される日に突然、再構築検討委員会を開催をするというのは現場にとっては迷惑きわまりないが・・・。しかも5日前の予告。

そして、そこで検討されるであろう「再構築マスタープラン(素素案)」が公表配布された。(それなら先日の職員全体集会で配ればよかったのにと思ってしまう。)
大方針も定まらないまま、マスタープランをまとめる業務を担った事務局の苦心がしのばれる。
市立大町総合病院改革プランと比べてもまだまだ完成度は低く相当無理のある内容だが素素案ならば仕方がないのだろうか・・・。

ただ反対だけしていても仕方がないので独自に(安曇総合病院マスタープラン(案))を作り地域医療部会でも検討をしたということは以前述べた。
採算性、急増した現在の職員の雇用の確保という点での検討は必要であるが・・。

今回、機能財務部会と院長周辺からだされたマスタープラン(素素案)の中身に関して少し見ておく。

「県は、2012年度の第6次保健医療計画(2013~2017年度)策定で4医療圏(北信、大北、木曽、上伊那)の範囲の見直しを検討している。(2012年2月11日信濃毎日新聞)
大北保健医療圏から21.9%の患者が松本保健医療圏で受療しており、大北地域の中核病院である、当院と大町総合病院の医療提供内容が住民の期待に答えられていないことの現れである。地域住民の利便性をそこなうことのないような、医療機能を考えていく必要がある。」


 →どうしてそういう結論になるかなぁ。

4-2-2 新たな機能:循環器病診断・治療、放射線診断・治療

(1)循環器病診断・治療センター
大北保健医療圏は心疾患による死亡者数は二次医療圏の中で木曽についで、二番目に多い。心カテ室を整備し、当院の心疾患に対する診療レベルの向上を目指す。



私としては心カテ室を整備するより以前に、糖尿病や高血圧、CKD、心房細動などの地域疾病管理を徹底することが先だと思う。
高血圧や糖尿病などの生活習慣病の多くは病院・診療所で治療内容がシームレスに継続し、同レベルまたは平準化した治療を継続して行う。そのためには技術移転が不可欠である。
その仕掛けとして電子化地域連携パスとミニマムデータセットを登録できる簡易型地域EHR(地域電子カルテ)を活用すべし。
例えばDM患者にはIMTでスクリーニングをして、引っかかった方に64列冠動脈CT造影をおこない、なおかつ必要な方に心カテを行う。待機カテしかできないのであれば、なおさら当院でやる意義は薄い。
地域ぐるみで人工透析にさせない、心筋梗塞にさせない、脳梗塞にさせないという目標をかかげリスクをミニマイズするべし。


(2)救急診療機能の充実
 ER医を招聘し、救急診療機能の向上と将来における救急診療部の創設を目指す。



当院に専従のERチームを配置できるほどの患者数も余裕もない。ER医一人いたところでどうにかなるものでもない。ただそれなりの救急患者がある日もあるから、救急外来業務を余分な業務とおもわずに行えるように、当直をした分、休みが取れるような体制をつくる必要はあるだろう。
また、質を担保するためには全医師の診療態度や能力などをチェックして、救急医療を担えると判断した医師だけを当直に入れ、それ以外の医師は救急当直から外すことも考える必要もあるだろう。
それほど大きな病院でもないのだから、できれば医局で朝会を毎朝開き、前日の入院患者をプレゼンして、だれが入院主治医となるかをきめる体制にするのがよいだろう。
救急外来にでている医師、看護スタッフの質向上のためにさまざまな勉強会を開催すべし。
「原則、本日は◯◯科の医師が当直ですから・・・。」と断らず「心配なら、まず、来て下さい。」と言えるようにする。どの医師も救急外来に最低限の知識をもって救急外来にでられるように院内の勉強会を開催する。(ICLSやJPTEC/JATECなどのコースの受講を推奨。また倶知安厚生病院のように研修医当直ご法度などをテキストに当直に出る医師全体で勉強会するのが良いと思う)
救急外来で、問題となったケースなどを、きちんとM&Mカンファレンスやグループウェアなどで共有して質向上を図るべし。(研修医と一部で細々と行なわれているのみ。)
救急外来は、かかりつけの患者の2次救急と、3次救急のトリアージ機能に徹し、そのレベルを向上すべし。


(3)放射線診断・治療センター
 大北保健医療圏は悪性新生物による死亡者数は、木曽、北信に次いで3番目に多い。放射線診断機能を高めることにより、地域での放射線診断に貢献し、診断機能の向上と、治療機器の導入により地域の健康増進に貢献する。


意図的にかさらっとしか述べられていないが、放射線治療機器をいれるかどうかは再構築マスタープランの天王山である。
必要がないとまではいわないが、個人的意見をいわせてもらえば優先順位はかなり下になると思う。ただ機械をかって建物を建てて導入するだけなら一番簡単だけれどニーズ的にも財務的にも???。
がん診療に関して言えば在宅医療部門と連携した緩和ケア病棟の方が先だと思う。(がん相談支援センターの専従ナースも欲しいのは緩和ケア病棟であると述べていた。)

さて、5月7日が楽しみだ。。