tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

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奈良公園の「ナンキンハゼ」問題

2022年11月20日 | 観光にまつわるエトセトラ
先週(2022.11.17)、奈良もちいどのセンター街へ出る用事があったので、少し早めに出て、県庁前まで散歩した。県庁横の奈良県文化会館の前庭では、いい感じでカエデの紅葉が始まっていた。横断歩道を渡り、県庁の正面に近づくと、鮮やかな赤、黄、緑に色づいた大木があった。葉を見ると、おお、これはナンキンハゼ!
※写真はすべて、奈良県庁前で11/17(木)に撮影した

本来の生態系を脅かす外来種として、駆除の対象となっている木である。しかしまるでシンボルツリーのように、堂々と県庁前で茂っている。同日付の奈良新聞にも、

奈良・春日山原始林を保全 ナンキンハゼ伐採
特別天然記念物で世界遺産にも登録されている奈良市の春日山原始林(298ヘクタール)を保全するため、奈良県奈良公園室は16日、同原始林内で、本来の生態系を脅かす外来種、ナンキンハゼの伐採作業を行った。

本年度は成木24本が対象で、この日は最後の3本を伐採した。県は2016年に春日山原始林保全計画を策定。伐採は同計画に基づき、森を本来の植生に戻すため20年度から実施しており、併せて鹿などの侵入を防ぐ保護柵設置による弱った植生の回復や害虫の駆除なども進めている。

昭和初期に奈良公園の平たん部に植樹 鹿が好まないため増殖、生態系を脅かす存在に
ナンキンハゼは中国を原産地とする外来植物。昭和初期に奈良公園の平たん部に植樹されたが、鹿が好まない植物のため増殖し、春日山原始林にも侵入。近年はスギ、ヒノキのほか、シイやカシなどの常緑広葉樹で構成される同原始林の本来の生態系を脅かす存在になってきているという。(後略)



背後に、県庁の建物が見える

昭和初期とあるとおり、県の報告書によれば、1930年代に植栽されたそうだ。昨日(11/19付)の奈良新聞には〈外来種対策で意見交換 奈良公園植栽計画検討委〉の見出しで、11/18に開催された「第22回奈良公園植栽計画検討委員会」の様子が報じられていた。同委員会は2012年(平成24年)11月2日に初回が開催された。大学教授などが委員となり、検討が続けられてきた。記事全文は画像を見ていただくとして、一部を抜粋すると、

ナンキンハゼは昭和初期に奈良公園の平たん部に植栽され、その後、鳥が種子を運ぶなどして若草山一帯に拡大。県がドローンを使って先月撮影した航空写真による調査では、若草山の植生区分はススキ73.3%、シバ15.8%、ナンキンハゼは2.7%。また周辺の樹林地にもナンキンハゼの成木が多く育っていることなどが分かった。

県は「草地のナンキンハゼは年1回、刈り払っているが生育範囲は拡大している」と報告。今後の管理方法として、刈り払いの回数増加や除草剤処置の実施など複数の手法を提案し、現行管理と比較する試行調査を行いたいと説明した。




「2.7%」と聞くと「大したことないな」と思われるかも知れないが、そんなことはない。昨秋、テレビの仕事で若草山を登った。南側の階段を登ったのだが、階段の左手(北側)には背の低いナンキンハゼがびっしりと群落のように茂っていて(下から一重目まで)、テレビクルーもびっくりされていた。

ナンキンハゼは奈良公園だけでなく、天理の市街地の川べりでも見かけたし、近鉄学園前駅の北側には大木があった(街路樹として植えられたようだが最近、伐採された)。ネットで検索すると全国的に街路樹などとして植えられているようだが、特に問題になっている様子はない。奈良公園は広々とした原っぱなので、陽樹(日当たりのよい環境でよく育つ植物)であるナンキンハゼには、絶好の生育環境だったようだ。私が撮ったナンキンハゼの写真をFacebookに載せると、いろんなコメントをいただいた。一部を匿名で紹介すると、



Iさん(男性)「守る会のSさんはナンキンハゼに関して、“紅葉が綺麗なだけにタチが悪い”と苦笑しておられました」。

Tさん(女性)ナンキンハゼが減らされたから、奈良公園で紅い紅葉楽しめなくなったとの声もお聞きしました(銀杏メインの黄色の紅葉ばかりと)。ある神社の方は「外来種ではあるのですが、縁あって奈良の地に根差したものだから…」とも。

Mさん(男性)若草山に登ってみるとナンキンハゼだらけ。逆に若草山の景観が崩れてしまいます。繁殖力は異常に強く、若葉を鹿が食べないのて増える一方!!地域を限定して、若葉のうちに根から取り除くなどして管理する必要があると思います。綺麗だからとかの感傷で放置していたら奈良公園、若草山はナンキンハゼだらけになってしまいます。


いずれも納得できるご意見であるが、「『奈良公園植栽計画』中間報告書」(2017年3月 県奈良公園室のHP)の「第2章.公園全体の植栽方針」には、このように記されている。

方針-3 ナンキンハゼは自然環境の保全に支障を来す恐れのあることから、原則として駆除する。但し、以下のものについては、植栽管理等により自然増殖を抑制する場合に限り、例外として駆除対象外とする。
〇例外を認めるもの ①奈良公園の景観の一部として欠かせないもの。②公園の植栽として歴史的価値のあるもの


私が撮った県庁前のナンキンハゼは「景観の一部として欠かせないもの」に該当するのだろう。ナンキンハゼは緑色から黄色、オレンジ色となり、最終的には濃い紅色(深紅色)に変化する。全く「紅葉が綺麗なだけにタチが悪い」植物である。種子は白い蝋(ロウ)のようなもので覆われ、これが美味しいらしく、鳥がしきりにつつき、核である種は糞に混じって排出される。

「景観の一部として欠かせない」ナンキンハゼからも、種は鳥によってばらまかれる。例外は最少限度とし、特に多くの種をつける大木から、駆除していただくのが良さそうだ。

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