tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

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吉野葛がピンチ!(by 毎日新聞夕刊)

2021年06月23日 | 奈良にこだわる
これはショッキングな話だ。毎日新聞夕刊(2021.6.21付)一面トップに掲載された〈消えゆく「純」吉野の葛 原料採る「掘子」、奈良で数人に〉という記事である。あんなに大きな葛の根はなかなか採れないだろうな、と思っていたが、大半が中国産や九州産だったとは!葛根湯などの薬や、葛湯、葛きり、葛餅などの原料になる葛、やはり純県内産の吉野葛を求めたい。県内で葛を栽培する試みも始まっているそうで、これには大いに期待したい。長くなるが、以下に全文を掲載しておく(記事の載ったサイトは、こちら)。

夏の味覚・葛(くず)餅や葛切りなどに使われる奈良県吉野地方名産の葛粉「吉野の葛」が危機に直面している。山中に自生するクズの根を採取する「掘子(ほりこ)」が県内数人レベルまで減り、本来の原料である県産葛の入手が難しくなっているのだ。奈良県吉野地方周辺で精製されたことを示す地域団体商標の「吉野葛」「吉野本葛」でも、使われる原料葛は中国産や九州産が大半を占める。精製も原料も純県内産の吉野の葛は幻となってしまうのか。

「もう取引のある掘子さんは1人しかいない」。1870年の創業以来、吉野地方周辺で葛粉を作り続けてきた「井上天極堂」(同県御所市)の川本あづみさん(43)はため息をつく。同社の所在地はかつて葛村と呼ばれ、毎年村人が総出で葛根を採っていた。そんな葛粉作りの盛んな地域でも、今春は県内産の原料葛の入荷はほぼゼロになったという。



清流と寒冷さで高品質
クズはマメ科の多年草で、10メートル近くつるを伸ばす。繁殖力が強く、日本各地の山野に自生。美しい花をつけ、万葉集にも多く歌われるなど日本人にはなじみ深い植物だ。根に良質のデンプンを蓄えるため、葛根は古くから生薬として利用され、少なくとも江戸期にはデンプンとして精製された葛粉が料理や菓子にも使われるようになった。

しかし、厳冬期に山中から掘り出した根を砕き、何度も冷水にさらしてデンプンに精製する作業は非常に手間がかかる。今も各地で自家用などに細々と作られているが、吉野葛製造事業協同組合(同)によると、産業として葛粉を製造する業者は全国でも県内に4社、九州に3社あるのみ。葛粉の全国の生産量は公式な統計はないが年間1000トン程度にとどまるという。1キロ数千円はする最高級のデンプンだ。中でも吉野地方の葛粉は品質の高さなどから随一の知名度を誇る。吉野川の清流と寒冷な気候が葛粉の精製に適しており、江戸期から伝統的な製法が受け継がれてきた。組合によると、同地方を中心とした奈良県の葛粉生産量は約250トンで、全国の約4分の1を占める。

経験と体力必要
吉野地方では1980年代に本格的に輸入が始まるまで、農閑期の冬になると掘子と呼ばれる農家がこぞって山に入り、採取した自生のクズの根を原料に葛粉が生産されていた。10月から山に入り、葉が枯れて根に栄養が移る翌年2月に収穫の最盛期を迎える。井上天極堂と取引する唯一の掘子で旧葛村出身の竹川徳行さん(80)=同市櫛羅=は「道もない山中で落ち葉や風の方向を頼りに葛を探すには経験と体力が必要。蛇の群れやイノシシを避けて掘り出すのも骨が折れるが、報酬がいいのが魅力だった」と当時を振り返る。

しかし、掘子となる専業農家の減少や高齢化に加え、良質の自生クズが減っていることもあり、県内での原料葛の採取は激減。イノシシによる獣害の増加も追い打ちをかけ、組合によると、県内産の原料葛を使った葛粉の生産量は5%前後にまで減少しているという。竹川さんは勤務先を定年退職した20年前に掘子に戻ったが仲間は年々減る一方。5年もの10年ものの根となると数十キロもの重さとなるため採取の作業は1人では難しく、今春は新型コロナウイルス禍もあり自宅で過ごさざるを得なかった。「このまま伝統が消えていくのは悲しい。山歩きの方法や掘り方など、次の世代に伝えたいことはたくさんあるのに」と嘆く。

「絶やしたくない」自ら栽培
「今後掘子が増えることは想像しにくい」との見通しを語る井上天極堂の川本さんだが、「純県内産を絶やしたくない」との思いは強い。掘子が完全にいなくなった事態に備えてクズの栽培を始めた。厳冬期に山深くに入ってクズの根を掘り出すのは重労働だが、栽培ができれば負担は軽くなる。5年もの10年ものも多い天然のクズの根にはまだまだ及ばないが、製品化にこぎつけた業者も出始めた。川本さんは「栽培が成功すれば県内産の割合を10%、20%にできるはず」と期待を寄せる。【稲生陽】

◆ことば 海外原料使用の「吉野葛」も
吉野葛(よしのくず)

葛粉は本来クズの根を主原料とするが、栽培の容易なサツマイモやジャガイモから精製した安価なデンプンで代用されたり、混ぜて使われたりしてきた。現在も安価な菓子などにはイモなどのデンプンが使われることが多い。サツマイモのデンプン100%の奈良県外業者の製品が「吉野葛」として販売されたこともあり、2007年に吉野葛製造事業協同組合が「吉野地方や周辺で精製などの加工・製造が行われた葛デンプン」を地域団体商標として登録。原料が葛100%のものを「吉野本葛」、50%以上のものを「吉野葛」として振興を図っているが、原料葛の産地についてルールはない。


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