tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

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読み方、熟語、敬語…「日本語は難しい(1)」奈良新聞「明風清音」(67)

2021年12月18日 | 明風清音(奈良新聞)
奈良新聞の「明風清音」欄に、月1回ほど寄稿している。今週(2021.12.16)掲載されたのは、「日本語は難しい(1)」だった。主に会社勤務中に気づいた日本語の誤用などを、思い出すままに書いてみた。まだ他にもあるので、また思い出せば適宜(不定期に)紹介することにしたい。では記事全文を以下に紹介する。

全くいくつになっても、日本語は難しい。今回から、思いつくまま紹介してみることにする。

▼「拾う」の読み方
5年前、私のブログ「どっぷり!奈良漬」に、「ひらうORひろう」という記事を書き、今も毎日のようにアクセスをいただく。一般的に「拾う」は「ひろう」だが、私は常に「ひらう」と読んでしまう。これは私の出身地である紀州の方言なのか。ヤフー知恵袋に納得のいく説明があった。これは「誤用」なのだそうだ。

〈歌う→うとう、そこなう→そこのう、などのように「AU」という連母音の発音が苦手な日本人(地域は限りません)が「OU」と発音しつつ「本当はAUなんだが」という意識を維持している例が多々あります。「拾う(OU)」は、そのままで間違っていないにも関わらず、上記の例のように(「ひらう」を間違って「ひろう」と発音しているという意識が働く)と誤解して、正しく発音しようとして「ひらう」と誤用したものと思われます〉。これは、相当高度な誤用だ。

▼間髪、綺羅星
「間髪」「綺羅星」を熟語のように使う人がいる。しかし〈「間(かん)、髪(はつ)を容れず」と区切る。「かんぱつを、いれず」「かんぱつ、いれず」は誤り〉(デジタル大辞泉)。また〈「綺羅(きら)、星(ほし)のごとく居並ぶ」のような言いかたから来ており、言葉の切り方を間違って「綺羅星」としてしまった〉(新編日本語誤用・慣用小辞典)。

▼汚名返上か挽回か
「汚名挽回」という人がいて私は「汚名は挽回するものではなく、返上するものだろう」と心のなかでツッコミを入れていたが、今は「汚名挽回」でも間違いではないのだそうだ。平成26年に国語辞典編纂者の飯間浩明氏がツイートしていた。〈「挽回」は「元に戻す」という意味があるので、「汚名挽回」は「汚名の状態を元に戻す」と考えられ、誤用ではない。これは三省堂国語辞典第7版に記述しました〉。

▼とんでもございません
これも何となく誤用っぽい。小学館「Oggi」のサイトには〈「とんでもございません」は、“道筋、道理”といった意味の「途」に、否定語の「ない」をつけた「途でもない(とんでもない)」という言葉から来ています。(中略)「とんでもございません」は、上述の「とんでもない」の「ない」の部分を切り離し、敬語の「ございません」に置き換えた言葉になりますが、実は日本語としては正しくはありません。「とんでもない」を敬語として使う場合は、「とんでもないことです」や「とんでもないことでございます」が正しい表現です。しかし、現在では「とんでもございません」は一般的に広く使われているのが現状で、平成19年文化審議会が、謙遜的な意味合いを持つこの言葉の使用を認める発表をしました〉。

▼架電(電話をかける)
かつて私の職場では「〇〇さんから電話がかかってきました」の意味で「〇〇さんから架電あり」とよくメモ書きした。短く書けるので重宝していたが、あるとき新入の女性社員から「架電って、辞書に載ってませんよ」と指摘された。

しかし最近、架電は〈電話をかけること。「電話(線)を架ける」に由来する業界用語が、一般的に広まったものとされる。「架電の件」などのように、文書を簡素化する際に多く用いられている〉(実用日本語表現辞典)。広辞苑も第6版(平成20年)から載せている。

言葉は生きているから思い込みを廃し、時代に応じて頭をアップデートしなければならないのだ、全く日本語は難しい。(てつだ・のりお=奈良まほろばソムリエの会専務理事)


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