tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

コロナも落ちつき、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

秋山利隆さん(南都経済研究所)の論文が、「論文アワード2021」で最優秀賞「総務大臣賞」を受賞!

2021年12月22日 | 観光にまつわるエトセトラ
一般財団法人南都経済研究所は、南都銀行グループの地方シンクタンクである。ここに勤務する主任研究員の秋山利隆さんは、私のもと同僚だ。以前には、秋山さんの力の入ったレポートを当ブログでも紹介したことがある。
※トップ画像は12/27付奈良新聞の記事、同日午後に追記した

秋山さんは南都銀行から同法人に移って約1年9ヵ月、「観光」と「統計分析」を研究し続けた成果を 「奈良県観光の現状とポストコロナの展望」という論文にまとめ、地方シンクタンク協議会主催の「論文アワード2021」に応募されたところ、見事、最優秀賞の「総務大臣賞」を受賞された、おめでとうございます!

なお過去には、同法人副主任研究員の太田宣志さんが「論文アワード2019」で佳作、「論文アワード2020」で優秀賞を受賞されている。秋山論文の全容はこちら、要約(概要)はこちら、本件に関するニュースリリースはこちらにそれぞれPDFで掲載されている。

なお明日(12/23)には、講演会・パネルディスカッション・表彰式が「第34回地方シンクタンクフォーラム」としてオンラインで開催される(参加申し込みは、こちら)。以下、秋山論文の要約(概要)を紹介しておく。

(地方シンクタンク協議会 論文アワード2021 最優秀論文)
奈良県観光の現状とポストコロナの展望 -統計的手法を活用したアプローチ-
一般財団法人南都経済研究所 主任研究員 秋山 利隆


【論文の概要】 本論文執筆の契機となったのは、コロナ前およびコロナ禍における奈良県観光の状況に対する危機意識である。 コロナ前において奈良県は、インバウンドが年々増加し、公共交通機関の混雑や商店街・観光地の喧騒など、住民生活への支障や住民の不満が顕在化していた。

その原因の一つとして、インバウンドがもたらす効用に比べて、住民が被る不利益の方が大きいことが挙げられる。主要な観光地は全国的にこのようなオーバーツーリズムの状況に陥っていたが、経済活動が優先された結果、コロナ前までインバウンドは拡大し続けた。

本稿では、インバウンドの問題について詳細を論じていないが、コロナ禍でインバウンド需要が蒸発した現在こそ、地域がWin-Winとなる新たな観光振興を考える絶好の機会と考えた。そして奈良県の観光関連データを中心に、相関分析や因子分析などの統計的手法を活用し、新たな視点からポストコロナの観光の展望につながる分析を行った。

まず、人口規模と宿泊者数の関係についての相関分析(単回帰分析)を行った。これは前述のオーバーツーリズムの問題を踏まえ、観光客(本稿の場合は宿泊客)の受入余力について分析したものである。

奈良市はすでに人口規模に比して多くの観光客を受け入れているが、本稿では奈良市は観光地、さらには県庁所在地として商工業の集積があり対応可能な状況と結論付けた。今後、この分析結果を基に、地域シンクタンクとして定性的な情報収集もあわせて行い、さらなる実態解明に取り組んでいきたい。

続いて、観光地のタイプについて日本交通公社が実施したアンケートを基に因子分析を行った。これは、コロナ禍において奈良県の宿泊客の回復度合が弱いことから、「その要因が観光地のタイプによるのではないか」との仮説を立て分析したものである。

奈良県など「文化・周遊目的型観光地」は、確かにコロナ禍では苦戦しているものの、コロナ禍での旅行でやり残したことのあるリピーターを獲得するチャンスもあり、「今こそ今後のリピーター獲得のための対策が必要である」との提言を行った。

最後に、南都経済研究所が今回の論文執筆のために既存調査の付帯調査として独自に実施したアンケート調査では、ホテル・旅館が他業種に比べて「県内からの仕入れ、県外への販売」という地域経済循環の促進に繋がる取引を多く行っており、その点から「製造業や農業といった稼げる産業が少ない奈良県にとって、観光関連産業は引き続き重要な産業である」という提言で締めた。

奈良県に関する分析で、回帰分析や多変量解析といった統計的手法を活用したものはほとんどない。本稿は、「統計的手法を地域に認識してもらうことで、今後の分析に積極的に活用していきたい」との思いを込めて執筆した。

本稿を掲載したナント経済月報の主な閲覧者は行政機関職員や中小企業経営者であり、そういった方々と協働し統計についての地域の理解を深めていきたいとの思いもある。今回は基礎的な内容の分析に留めたが、今後統計分析のさらなる高度化に取り組み、その分野で地域をリードしていきたいと考える。


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