tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

コロナも落ちつき、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

油煙墨(ゆえんぼく)煤(すす)をかためた 奈良の墨/毎日新聞「かるたで知るなら」第33回

2021年12月11日 | かるたで知るなら(毎日新聞)
NPO法人「奈良まほろばソムリエの会」は、同会が制作した「奈良まほろばかるた」を題材に毎週木曜日、毎日新聞奈良版で「かるたで知るなら」を連載している。

今週(2021.12.9)掲載されたのは〈1000年残る文字を/油煙墨(奈良市)〉、執筆されたのは、ソムリエの会のサザエさんこと増田優子さんだ(奈良市出身・在住)。増田さんは古梅園や興福寺に何度も足を運び、臨場感あふれる文章に仕上げてくれた。では、記事全文を紹介する。

〈油煙墨 煤をかためた奈良の墨〉
奈良墨は奈良市で生産され、現在、固形墨の国内シェア90%強を占め、経済産業省の伝統的工芸品に指定されています。わが国で最初に墨について書かれた文献は『日本書紀』で、610(推古天皇18)年、高句麗の僧・曇徴(どんちょう)により製法が伝来。飛鳥時代以降、仏教の布教や朝廷の事務などで需要が高まりました。
 
奈良墨は室町時代、財力豊かな興福寺の二諦坊(にたいぼう)で灯明(とうみょう)の煤(すす)を用いて作られた「油煙墨(ゆえんぼく)」が起源とされ、それまでより、はるかに濃く、艶があり、「南都油煙」と呼ばれ、全国に流通しました。しかし、時代の流れで寺社お抱えの墨職人は独立し、墨の商いをするようになりました。その代表は1577(天正5)年創業の古梅園 (奈良市椿井(つばい)町)で、現在も製法は受け継がれています。

窓のない蔵で菜種油などの量で炎を加減、土器に付いた煤を採ります。そして動物の骨や皮から生成した上質の膠(にかわ)の溶液と香料を混ぜ、手足で練り木型に入れます。次に木型から取り出して灰で乾燥。さらに藁(わら)でくくり、天井からつるし、自然乾燥させます。最後に磨きをかけ、金粉や顔料などで彩色する匠(たくみ)の技が今も続いています。

墨で書いた文書が1000年以上も保存できるからこそ、日本の歴史は現代に伝わりました。今で奈良墨は書道、写経で大切に使われています。今年は奈良墨をすって香りも楽しみつつ、年賀状を書いてみてはいかがでしょう。古梅園では11月~4月に予約すれば「にぎり墨体験」ができ、墨の製造過程も見学可能です。(奈良まほろばソムリエの会会員 増田優子) 

【興福寺】
(住 所)奈良市登大路町48
(交 通)近鉄奈良駅から徒歩約5分、JR奈良駅から徒歩約20分
(拝 観)9~17時(最終受付は16時45分)
(料 金)国宝館は大人700円、東金堂300円。中金堂は現在、拝観停止中
(寺務所)0742・22・7755


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