tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

コロナも落ちつき、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

かぎろひを観る会、今回から2本立てに/12月20日(月)と2月11日(金)(2021 Topic)

2021年12月19日 | お知らせ
毎日新聞奈良版(2021.12.15付)に〈レアな「かぎろひ」見たい 「観る会」50回節目に日程変更 プレイベントも 発生率高い2月11日に〉という記事が出ていた。
※トップ写真は「かぎろひ」(宇陀市の提供写真)。毎日新聞の記事サイトから拝借した

毎年、旧暦の11月17日(2021年は12月20日)の夜明け前に開催されてきた「かぎろひを観る会」だが、ここ数十年は地球温暖化などの影響で、「かぎろひ」は発生しなかった。そこでもっと気温の低い2月11日(建国記念の日)に固定して、旧暦11月17日との2本立てで行おう、という話である。まずは記事全文を紹介する。


宇陀市観光協会大宇陀支部の清水誠さん。毎日新聞の記事サイトから拝借

「ひむがしの 野にかぎろひの立つ見えて かへり見すれば月かたぶきぬ」――。歌人・柿本人麻呂の作品に登場する自然現象「かぎろひ」を観賞する宇陀市大宇陀地区の恒例行事が2022年に開催から50回を迎えるのを機に日程を変更し、内容も刷新されることになった。伝統ある行事だけに往年のファンからは異論もあったという。どんな事情があっての決断なのか。【広瀬晃子】

人麻呂の歌にちなみ、市観光協会大宇陀支部が1972年から毎年旧暦の11月17日(現在の12~1月)に、かぎろひの丘万葉公園(同市大宇陀中庄)を舞台に開いてきた「かぎろひを観(み)る会」で、全国の万葉ファンらが参加してきた。しかし、半世紀の歴史の中で実際にかぎろひを観賞できたのは数回だけ。同支部によると、ここ数十年は肝心のかぎろひが発生しない状態が続いており、ピーク時に約1200人いた参加者も年々減少、前回は約100人だったという。

「このままでは行事が継続できなくなる」。そんな危機感から、50回の節目に会の日程を見直し、かぎろひの発生率がより高まると考えられる毎年2月11日に変更することに。一方、「旧暦にこだわるべき」「なかなか見られないからこそ浪漫がある」との意見も重んじ、旧暦の11月17日(2021年は12月20日)にもプレイベントとして、ガイドによる現地説明会を開く“2本立て”とすることにした。

かぎろひの解釈には諸説あるが、厳冬の晴れた早朝に見られる陽光で、空が赤く染まる現象を指す。奈良地方気象台によると、かぎろひは気象用語にはないが、蜃気楼(しんきろう)と同様の現象で、(1)よく晴れた冬の日で(2)風が強くなく(3)強い放射冷却が起こったとき、夜明けの1時間ぐらい前に発生しやすいという。地球温暖化などの影響で過去30年の最低気温は上昇しており、「12、1月よりは2月の方が(かぎろひの)発生確率が高まる可能性はある」とする。

いずれにしても、かなりの好条件がそろわないとお目にかかれない貴重な現象だ。同支部メンバーで、地元で商店を営む清水誠さん(56)は「ここ何年もがっかりする参加者を見るたび心を痛めてきた。日程を変更しても観賞できる保証はないが、(2月11日に固定化することで)次の年も挑戦してもらいやすくなる」と説明。別の関係者も「(旧暦開催の)歴史を重んじつつ、来年こそリベンジを果たしたい」と意気込んでいる。


「かぎろひを観る会」のご努力には敬意を表するが、人麻呂の「東の野に炎の立つ見えて…」の歌は、最近の学説では「東の野良にけぶり(煙火)の立つ見えて…」だとされており、当ブログでも紹介した。岩波文庫『万葉集(1)』の注釈によると〈東の野に煙の立つのが見えて、振り返って見ると月は西に傾いてしまった〉。

〈(賀茂)真淵は「かぎろひ」を曙光の意としたが、その意の用例はなく、「かぎろひ」は陽炎の意。しかし、「み雪降る」冬の夜に陽炎は見られないだろう。しかも「かぎろひ」は「燃ゆ」と言い、「立つ」とは言わない。今は、原文「野」を「野ら」と訓み「海女娘子塩焼く煙(炎)」の例を参照して、「炎」は「けぶり」と訓むこととする〉。

〈「けぶり」は狩猟に関わる煙火と理解できよう。「炎」は「ほのけ」「ほのほ」「とぶひ」と訓むことも可能》。つまり「炎」は従来のかぎろひ(=曙光)ではなく、狩猟の合図であるのろし(煙火)とするのが最新の学説なのだ。

まあ学説はまたひっくり返ることもあるので、「炎=かぎろひ」説を踏襲することもアリだろう。12月20日(月)は、明日に迫っている。数十年ぶりのかぎろひが、見えますように。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする