手塚治虫「新選組」八月納涼歌舞伎第一部
見てきました!「新選組」!
原作が手塚治虫の漫画で、主人公は父の仇を討とうとして新選組に入る深草丘十郎と、彼と親友になる鎌切大作の二人の若者。仇討ちしか考えていない丘十郎が、仇を討った後に今度は自分が相手の娘や同僚に仇として狙われ、恨み・憎しみの連鎖のむなしさに気づき、新しい世界に向かっていこうとする成長物語。
勘九郎が20年前にこの漫画を読んで以来、自分がやりたいと思っていたが、時間がたっておじさんになってしまったので(笑)、今回、芝翫さんの次男・福之助、三男・歌之助の若い従弟たちに勧めて実現した舞台化。勘ちゃんは近藤勇、七之助が土方歳三という配役になっていた。この配役で開幕したのだが、福之助、歌之助、それに仇の娘役だった鶴松の若者3人がコロナに感染してしまい、結局、勘ちゃん兄弟が代役で主演をすることに!
今月の歌舞伎座は、ほかにも染五郎、團子など、若い人たちが感染、幸四郎パパは濃厚接触者となり、第一部から第三部まで、ほぼ9割が代役で続行という事態になっている。中止にせず、公演が続いているのはすごい。歌舞伎とはいえ、全部、古典ではなく新作なのだ。
というわけで、私としては予想外の、勘ちゃん兄弟主演で見ることができて、むしろラッキーだった。本役の兄弟には申し訳ないけど。
本役のほうを見てないのに言うのもなんだけど、単調な演技になりそうな内容を、感動にまで持っていけているのは、やはり代役兄弟のキャリアだろうなぁと思った。芹沢鴨役で共演している彌十郎さんも、勘九郎・七之助の代役のクオリティが凄いとブログに書いていた。
幕が開くとまず驚いたのは、両脇のセットの絵が手塚漫画の絵なの。漫画だ!と思っていると、発端の、丘十郎の家に逃げ込んできた男が襖の隙間に入り込むという、漫画だからこその動きをそのままやっちゃうの。
近藤局長が歩いてくる下駄の音、「カラーン」と「コローン」の2枚の札を黒子さんが持って出てきた!
あんなにすべて漫画に寄せて作っているとは!
髪型も漫画そのものにしてるんですよ、バサーッと風が吹いてるような髪なのに、そのままカツラに作ってるの。
ほかにも、全然関係ないのにブラックジャックが出てきて、遺体を診察して「もう手遅れです」なんて言うし、ピノコ(大きい女形さんがリボンいっぱいつけてた)も出るし、三つ目やひげおやじも出るし、アトムのテーマ曲で踊るし、襖絵は火の鳥、背景画の中にひょうたんつぎもジャングル大帝もいる。おむかえでごんすもやってたし、あと、私にはわからないキャラクターも出てきた、なんか頭にローソク立ててる人!
セットの使い方や場面転換も、普通の歌舞伎の書き割りではなくて、漫画的にしていて、どんどんテンポ早く展開して、「展開早いな!」「漫画ですから!」なんてやりとりも。
鴨の彌十郎さんが、思いっきり歌舞伎的な部分を担当していて、そこもおもしろかった。
おふざけだけでなく、ちゃんと全体がおもしろい作品になっていて、楽しめました。三谷さん、この舞台を見たらいいのに。歌舞伎ってこんなに自由なんだってわかると思うわ。
もう一本は舞踊「闇梅百物語」
いろんな妖怪が出てくる踊りで、勘ちゃんは骸骨、勘太郎くん長三郎くんは子骸骨で出る。勘ちゃんは子どものころに、同じ骸骨の場面をお父さんと踊ってるんですよね。私は映像で見たことがあるんだけど、勘ちゃん9歳ぐらいなのかな、すでにちゃんとした踊り手としてうまいの!でも、こまっちゃくれてないの。びっくりしますよ。
勘太郎くんたちはそこまでいかないけど、楽しそうに、きちんと踊ってました。
この演目で、感心した若手は、七之助の雪女郎の場面に新造役で出ていた千之助くん(仁左衛門さんの孫)。それから、お堀端の場面で河童と狸を踊っていた二人、狸は橋之助くん(芝翫さんの長男)、河童は虎之介くん(扇雀さんの息子)。きちんと動けていて、踊りがうまいなぁと思いました。
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