よむよま

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「芙蓉の干城」松井今朝子

2019-05-12 20:51:17 | 読む
松井今朝子「芙蓉の干城」集英社

昭和8年の東京、
歌舞伎の関係者でもある早稲田の教授が探偵役。
たまたま教授が歌舞伎座で見かけた右翼の大物が殺害され、
その事件を探るうちに、5年前の歌舞伎役者の死の真相にたどり着く。
5・15事件(犬養毅首相暗殺)の翌年の時期、
軍部と右翼のつながり、右翼とやくざのつながり、
中国大陸の動向、
そこに歌舞伎界の人々が絡んでいる。

昭和初期、戦前の時代の空気に、古風な文章が似合っていて、
とてもおもしろかった。
私は、松井今朝子の文章っていままでちょっと苦手だったんだけど、
この作品は全然抵抗なく、入りこめた。
江戸川乱歩みたいと思えて、それが時代の感じにちょうどよかったからかな。
主人公の教授も、彼の働きを利用する刑事も、
リアルにずるかったり弱かったりするので、
一直線に真相に迫っていく構成にはなってないし、
結末は、エッというもので、けっこう惨い。
でも、おもしろかったので、これの前作「壺中の回廊」も買ってきてしまいました。

題名にある「干城」は軍人などが「国の干城になる!」と言う、
国を守る盾・城という言葉。
読みはカンジョウだが、この題名ではタテと読ませている。
でも、私はこの字を見ると、谷干城!とパッと思ってしまうのよね、
土佐の谷干城、近藤さんを殺したヤツである。キーッ!
コメント
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