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映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「ヴァン・ショーをあなたに」 近藤史恵

2015年09月10日 | 本(ミステリ)
味噌汁とヴァン・ショーと

ヴァン・ショーをあなたに (創元推理文庫)
近藤 史恵
東京創元社


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下町のフレンチレストラン、ビストロ・パ・マル。
フランスの田舎で修業した変人シェフの三舟さんは、
実は客たちの持ち込む不可解な謎をあざやかに解く名探偵。
田上家のスキレットはなぜすぐ錆びる?
ブイヤベース・ファンの女性客の正体は?
ミリアムおばあちゃんが夢のように美味しいヴァン・ショーを作らなくなったわけは?
シェフの修業時代も知ることができる魅惑の一冊。


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さっそく、ビストロ・パ・マルのシリーズ、続編を読みました。
全く余談ですが、先日NHKの朝ドラ「まれ」で、
まれが「タルト・タタン」を焼いていまして、
あ、なーるほど、これか!!と思いました。
焼き上がりはひっくり返すのだというのにも納得。
勉強になるなあ・・・。


本巻は、やはりシリーズ短編集となっていますが、
はじめの4作は前巻と同じくギャルソンの高築くんが語り手です。
あの三舟シェフが恋?!などというくだりもあって、楽しいですよ。
そしてその後の3作は、語り手交代。
特に「天空の泉」と「ヴァン・ショーをあなたに」は、
三舟シェフのフランス修行時代の事が書かれているので、非常に興味深いです。
同じく日本から来ていて体調を崩し寝込んでしまった友人に、
三舟がそっと差し出す味噌汁。
これはいい!!
そしていつも「ビストロ・パ・マル」で出される
ヴァン・ショーの秘密も書かれているので、必見です。


異国の街の描写、「サクリファイス」のシリーズにもありますが、
近藤史恵さんのこの描写がいいんですよね。
日本人が見た「観光地」としてではない異国の風景。
フランスのシェフ三舟、もっと知りたいので、ぜひ続きをお願いします!! 
多分志村さんとの出会いもあるのじゃないかな?

「ヴァン・ショーをあなたに」近藤史恵 創元推理文庫
満足度★★★★★



ヴィンセントが教えてくれたこと

2015年09月09日 | 映画(あ行)
「叔父さん」の効用



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アルコールとギャンブルを愛する、嫌われ者の偏屈オヤジ、ヴィンセント(ビル・マーレイ)。
その隣の家にシングルマザーのマギー(メリッサ・マッカーシー)と
12歳の息子オリバー(ジェイデン・リーベラー)が越してきます。
女手一つでオリバーを育てなければならないので
マギーは仕事をしなければなりません。

かなり不安はあったものの、とりあえず暇そうなヴィンセントに
息子の面倒をみてもらうことにします。
しかし、ヴィンセントはオリバーをバーや競馬場に連れて行ったり
喧嘩の仕方を教えたり・・・。
けれどそんなヴィンセントと共に過ごすうちに、
オリバーは彼の表面的な口の悪さや荒っぽさとは別の、優しさに気づいていくのです。



何かの本で読んだのですが、
子どもの成長には親とは別に「叔父さん」の存在が必要なのだと。
ここでいう「叔父さん」は、一般的な年輩の男性ではなくて、
父や母の兄弟である親戚の「叔父さん」。
必ずしもそうであるわけではありませんが、
イメージ的に、まだ両親よりは若くて、定職についていないような。
親や兄姉からは
「いつまでもふらふらしていてしょーもないやつだ・・・」
なんて思われている存在。
しかしその存在が、甥や姪にとっては有用だというのです。
親はどうしても子どもには「正しく」あることを望みます。
だからまあ、自分たちの隙をあまり子どもには見せないようにする。
ところが「叔父さん」は、本来その子の将来に責任があるでなし、
自らのだらしなさや世の中の影の部分も
平気で見せてしまうわけです。
そしてまた本人の自由さをも。
子どもは、そんな叔父さんを反面教師とすることもあればまた、
その自由さに憧れたり、社会勉強をしたり・・・、
親からは得られない色々なとこを学び取るという訳ですね。



それで思ったのは、本作のヴィンセントは、
まさにそういう「叔父さん」的存在なわけです。
決して「父親」ではない。
ところがですね、私、オリバーがこんな風に人の気持ちが分かる子にここまで成長してきたのは
やっぱり両親の育て方が良かったんだろうなあ・・・と思ってしまいました。
パパはちょっと浮気性が玉にキズかもしれないけれど、
基本的に子ども好きのいいお父さんなんですよ、きっと。



「聖人発表会」という学校の催しでのオリバーの発表には、つい泣かされました・・・。
本作で泣かされるなんて思ってもいませんでしたが。
オリバーは腹筋一回のへなちょこではありますが、
頭が良くて、人の気持ちがわかる、いい子ですよねー。
いじめっ子と結局一番の仲良しになるところもステキです。



そしてヴィンセント!!
全く、悪ぶっているくせに、
ネコを可愛がり、妊婦のストリッパー(ナオミ・ワッツ!!)を気にかけ、
自分を夫と認識していない妻を見舞い・・・、
そして孤独だ。
実にかっこわるくてカッコいいオヤジを見事に演じたビル・マーレイ、ナイスでした。



「ヴィンセントが教えてくれたこと」
2014年/アメリカ/102分
監督・脚本:セオドア・メルフィ
出演:ビル・マーレイ、メリッサ・マッカーシー、ナオミ・ワッツ、クリス・オダウド、ジェイソン・リーベラー

オヤジのカッコ悪さ★★★★☆
オヤジのカッコよさ★★★★★
満足度★★★★★

ヒックとドラゴン2

2015年09月07日 | 映画(は行)
空を飛ぶシーンの例えようもない開放感



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本作「1」を見た時にも思ったのですが、
このポスターとか一場面の写真を見てもあまりそそられないんですね。
特別見たいとは思わない。
ところがです、実際にアニメを見ると
その画面の美しさ、
島や自然背景やドラゴン・登場人物たちのイマジネーションの豊かさ、
そして空をとぶシーンの例えようもない開放感、
そういうもの全てにすっかり魅了されてしまいます。
この感動はスチール写真や絵本などではダメで、
やはり本物のアニメ映像でなければ得られない。
これこそがまさにアニメのためのアニメだなあ・・・
と感じ入ってしまいます。



さてシリーズ2作目となった本作は1作めから5年後の物語。
ヒックの住むバーク島は、すっかりドラゴンと人間とが共生する
楽しく豊かな島となっています。
人々はみなドラゴンで空を飛ぶ。
ところが今回はそんな平和な島を脅かす存在が登場します。
巨大ドラゴンを操り、すべてのドラゴンと人々を征服しようと企むドラゴ。
ヒックは平和的解決を図ろうとしますが・・・。



本作には全く思いがけない人物が登場します。
なんと死んだといわれていたヒックの母親。
この方が、軽々とドラゴンを乗りこなし風を切って飛ぶ。
そしてすべてのドラゴンたちを外敵(主に人間)から守っている。
私は思いましたね・・・、
ナウシカだ!!
しかし何か一つを得れば一つを失うものです。
大きな悲劇がヒックたちに襲いかかります。
心沸き立つ島やヒックを取り巻く大自然の風景。
失敗しました。やはり劇場の大画面でみるべきでした。




本作は人の表情がものすごくきめ細やかに描写されます。

このヒックの顔も静止画ではどうというふうにも感じないのですが、
動画では実にイキイキと感情を持って魅力を放ち始めます。
その仕草や表情が、いかにもアメリカ青年的なのがまた面白い。
少なくとも日本人ではないですね。
はっきりわかります。
そしてまた、ドラゴンのトゥースの仕草がめちゃめちゃかわいい!!

多分、犬のしぐさをモデルにしているのではないでしょうか
そうそう、犬とかよくこんな表情とか仕草をするよね・・・と
リアルに思い浮かべてしまう。
大好きです。
なでてみたい!!



ヒックとドラゴン スペシャル・エディション [DVD]
ジェイ・バルチェル,田谷隼,ジェラルド・バトラー,田中正彦,アメリカ・フェレーラ
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン


「ヒックとドラゴン2」
2014年/アメリカ/105分
監督:ディーンデュボア
イマジネーション度★★★★★
美しさ★★★★★
満足度★★★★★

「タルト・タタンの夢」 近藤史恵

2015年09月06日 | 本(ミステリ)
サムライシェフの名推理

タルト・タタンの夢 (創元推理文庫)
近藤 史恵
東京創元社


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商店街の小さなフレンチ・レストラン、ビストロ・パ・マル。
シェフ三舟の料理は、気取らない、
本当のフランス料理が好きな客の心と舌をつかむものばかり。
そんな彼が、客たちの巻き込まれた事件や不可解な出来事の謎をあざやかに解く。
常連の西田さんが体調を崩したわけは?
フランス人の恋人はなぜ最低のカスレをつくったのか?
絶品料理の数々と極上のミステリをどうぞ!


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私、以前に近藤史恵さんはサクリファイスのシリーズが一番いい
などといったような記憶があるのですが、前言撤回。
この、ビストロ・パ・マルのシリーズもすごくいいです。
昨今、グルメ題材のミステリというのもありがちで、
本作もさほど期待せずに手にとったのですが、すぐに引きこまれました。


まずは登場人物の配置がいいですね。
ビストロ・パ・マル、
パ・マルはフランス語で<悪くない>という意味。
高級フランス料理店ではなく、
フランスの家庭料理的な物を出すささやかなレストランです。
従業員は店長兼シェフ(料理長)の三舟、
スー・シェフ(副料理長)志村、
紅一点ソムリエの金子、
そしてギャルソンの高築はまだ経験の浅い青年で、本作の語り手でもあります。
だから彼はフランス料理の何たるかもよくわかっていない私などのようなものにも、
分かりやすく解説を入れてくれるのであります。


さて、ここのシェフ三舟がいわば名探偵役。
長めの髪を後ろで結び、
無精髭など生やしているのは「サムライ」をイメージしているらしい。
無愛想でちょっぴりとっつきにくい感じ。
ところがこの方が、客が話している事件や不可解な出来事を、
その話の中だけで推理し、スルスルと解答を導き出してしまう。
鮮やかです。
殺人事件などは出てきません。
日常の謎を説く短編のシリーズ。
スタイルはオーソドックスですが、
ヴァン・ショー(ホットワイン)とともに差し出される美しい真相の数々に唸らされるばかり。
ビストロなので当然料理の内容にも触れています。
フランスの料理名は、私などには全然馴染みがありませんが、
それにしてもいかにも美味しそう。
うちの近所にこんな店があればいいのになあ・・・とつくづく思ってしまいます。


迷い猫を餌付けししてしまった三舟シェフが
志村に起こられている図などという、前代未聞のシーンがあったりするのもご愛嬌。
楽しくて、おしゃれで、極上の味の一冊です。


「タルト・タタンの夢」近藤史恵 創元推理文庫
満足度★★★★★

毛皮のヴィーナス

2015年09月05日 | 映画(か行)
大人のSとM



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“マゾヒズム”の語源となった19世紀オーストラリアの小説家
レオポルド・フォン・ザッヘル=マゾッホの自伝的小説
「毛皮を着たヴィーナス」を元にした戯曲を映画化したもの。



舞台は劇場そのもので、自信家で傲慢な演出家トマと、
一見無教養で図々しい謎の女ワンダ、
二人だけのワン・シチュエーションドラマです。


新作「毛皮のヴィーナス」のオーディションに大幅に遅刻してやってきたワンダ。
彼女の強引さに押し切られ、トマが相手役を務めることにして、
しぶしぶ彼女の演技をみることになったのですが、
ワンダは演技を始めると役の理解もセリフも完璧。
トマは次第に彼女に引きつけられ、彼女のペースにハマり、
次第に立場は逆転し彼女に支配されるようになっていく。
そしてトマは、劇中の登場人物と同じく、
次第にワンダに支配されることに酔いしれていくのです。



支配と服従、加虐と嗜虐、フィクションと実人生、
これらの境界が次第にぼやけていき幻惑されていきます。
そしてノーマルと思っている私達自身も、
いつしか怪しい倒錯的官能の世界へ落ち込んでいく・・・。



おお、セリフだけでこんなにも感じるわけなのだな・・・。
実際に鞭打つシーンが有るわけでもないのに。
オーディションの舞台は、まだ今やっている西部劇の背景で、
かろうじてソファと机があるくらい。
肝心の毛皮は毛糸のマフラーだったりするのに。
一瞬にして辺りは完璧に19世紀のオーストリアと化す。
ただし、いいところになるとワンダの地が出て、
あれこれ脚本に文句をつけたりして私達を現実に引き戻します。
このゆさぶりもなかなかなんですよ。
あまり長ければきっと飽きが来る。
そんなところも計算されているようでした。


はじめワンダが身につけていた犬の首輪。
彼女はいともたやすく「SMの話だよね」といい、
だから首輪つけてきてみました・・と、屈託がない。
しかし支配する婦人を演じるときももつけたままなのが気になっていたのですが、
ラスト付近、いよいよ彼女が演出家のトマをも支配始めるシーンで、
彼女は自分の首輪をトマに付け替えるのです。
恐ろしいくらいに疼きます。
ああ、そのためのものだったか・・・。



いやほんと、恐ろしい。
もちろんこの俳優2人の演技力でありましょうし、
そしてまたこの世界を作り出す監督の力でもあるわけですね。
本作を見たら「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」なんか
学芸会みたいに思えます。
こんなこともできるんだ・・・。
映画の可能性の奥深さを知りました。


それにしても、ワンダって一体何者??
と思ってしまいますが、案外すべてトマの夢だったりしてね。
(あ、そんなことを言ってしまうとそれこそ“夢”がない?)

毛皮のヴィーナス [DVD]
エマニュエル・セニエ,マチュー・アマルリック
ポニーキャニオン


「毛皮のヴィーナス」
2013年/フランス・ポーランド/96分
監督:ロマン・ポランスキー
出演:エマニュエル・セニエ、マチュー・アマルリック

官能度★★★★☆
満足度★★★★★

わたしに会うまでの1600キロ

2015年09月03日 | 映画(わ行)
自分と向き合う3カ月



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さて、オーストラリアを行く「奇跡の2000マイル」に続いて
今度はアメリカ「わたしに会うまでの1600キロ」。
アメリカ西海岸を南北に縦断する「パシフィック・クレスト・トレイル」という遊歩道を
一人の女性、シェリル・ストレイドが踏破した実話の映画化です。
遊歩道なんていうとなんだか生ぬるく聞こえてしまいますが・・・
男性でも音を上げる険しい山道、酷暑の砂漠などもある
メキシコ国境付近からカナダ国境付近まで続く大変な道のりです。
本作のオフィシャルサイトに、その地図が
日本列島の大きさと比較できるように乗っていますので、ぜひご覧あれ。
日本縦断より長いです。



そもそも、彼女がこの旅を思い立ったのは
母親(ローラ・ダーン)が亡くなり、その虚しさから逃れるために
麻薬とセックスに溺れ、夫と離婚することになってしまった。
そんなどん底の自分から立ち直ろうと思ったのがきっかけです。
映画は、長く険しい道のりを描写する傍ら、
シェリルの脳裏をよぎる過去のフラッシュバックを描写することにより、
彼女がこのような旅に出るまでの出来事をたどることができるようになっています。
シェリルにとって母親は道標であり希望の光だったのでしょう。
暴力をふるう夫と別れシングルマザーとして2人の子どもを育てながら、
いつも明るく前向きだった母。
その母の望む姿こそが自分のあるべき姿だと思っていたシェリルにとって、
母の死は自分の生きる方向を見失うことでもあったのです。



だがしかし、これまで彼女は山歩きの経験も何もなかったのですね。
バックパックに荷物を詰め込みすぎて立ち上がるのもやっと・・・、
歩き始めた直後にすでに後悔。
おまけに靴のサイズが合わずに大変なことに・・・。
テントを張るのも四苦八苦。
うーん、せめてベテランに少しはノウハウを学ぶべきでしたね・・・。
まあ、途中できちんとアドバイスしてくれる方もいて、良かったですが。
でも、いかにもそういう勢いだけで、というところが女性らしいし、
その後呆れるほどの困難に遭いながらも諦めなかったというのが、
やはり女性ならではという気がします。
でも女性の一人旅。
ガラガラヘビよりもむしろ“男”が怖いこともあるのが、辛い。



よろよろといかにも心もとなげな彼女の歩みが、
次第にしっかりしたものに変わっていきます。
大自然の中を一人歩む時、
母と過ごした幸せな時間、そして母の死と、その後の自分の惨めな姿
・・・いろいろなことが頭に浮かんできます。
良いことも悪いことも、全て太陽の光にさらされて、昇華していくような・・・。
そしてまっさらな自分に戻れそうな、そんな気がしてきます。



でも、本作の邦題は、いかにも「自分探し」の旅を強調しすぎていて、
あまり好きではありません。
原題は“WILD”といたってシンプルです。



作中「コンドルは飛んで行く」の曲がずっと見え隠れしていますが、
ラストでやっと実のサイモンとガーファンクルによる曲がかかります。
そういう演出もステキでした!!



そしてまた、エンドロールで実のシェリル・ストレイドさんの写真が紹介されるのですが、
これがまた、目に力のある美しい方。
ロビン・デビッドソンさんと共通の雰囲気が感じられました。


「わたしに会うまでの1600キロ」
2014年/アメリカ/116分
監督:ジャン=マルク・バレ
出演:リース・ウェザースプーン、ローラ・ダーン、トーマス・サドスキー、ミキール・ハースマン、ギャビー・ホフマン

旅の過酷度★★★★☆
達成感★★★★★


「ダンジョン飯2」九井諒子

2015年09月02日 | コミックス
それぞれの個性炸裂、パワーアップ

ダンジョン飯 2巻 (ビームコミックス)
九井 諒子
KADOKAWA/エンターブレイン


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餓死の恐れと隣り合わせで、ダンジョンを進むライオス一行。
地下3階で彼らを待っていたのは、
ゾンビに幽霊、生ける絵画や、ゴーレムといった食べられないモンスターばかり。
この未曾有の危機を、どう乗り越えるのか!? 
知られざる魔物の生態と、食への活用法が、いま明かされる! 
空腹と戦う、全てのダンジョン攻略者に捧ぐ。
はらぺこダンジョンファンタジー第2巻!


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待ってました! 
「ダンジョン飯」の第二弾。
前巻よりも更に面白くなっていると思います。
というのも、本巻ではこのライオス一行のチームメンバー
それぞれの個性がとても豊かに描かれてきているから。


何と言っても、ダンジョン飯の達人・センシはとてもユニークで頼りになります。
ゴーレムを耕して野菜を作ってみたり、
パンを作ってオークと親しくなったり、
宝虫のこともよく知っている。
実際、センシなくしてこの旅は成り立ちません。
凄いなあ・・・。
しかし、彼が完璧かというとそういうわけでもない。
本巻ラストの水棲馬(ケルピー)では、思い込みで大変危険な目に合いますよ。
そんなところも皆のチームワークで乗り切るようになってくる。
大変頼もしいメンバーなのです。
それにしてもセンシのふんわりツヤツヤおひげも楽しい!!


もともと一番食い意地の張っていたのは、ライオスですね。
彼は「生ける絵画」の中に入り込んで、
絵に描かれたごちそうを食べてみようと目論むのですが・・・。
さすがにチームの他のメンバーはそこまで物好きではありません。


本作で一番おいしそうだったのは、『ミミック』です。
そう、あの宝箱の中に潜んでいる・・・。
これが、カニとかエビ系で、ゆでたのがなんとも美味しそう!!
しかもこの大きさ。
これは絶対にイケます!!


そしてまた、宝虫とミミックの捕食関係、生態系が
なんともうまく出来ていて感心してしまう。
モンスターといえども生きるのに必死ですね。


チルチャックの意外な年齢もまたおかしい!!
水の地下4階。
この先の旅もまだまだ楽しみです。

「ダンジョン飯2」九井諒子 ビームコミックス
満足度★★★★★

スパイ・レジェンド

2015年09月01日 | 映画(さ行)
師匠と弟子の微妙な確執



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ピアース・ブロスナン、
007ダイ・アナザー・デイで5代目ジェームズ・ボンド役を卒業以来、
12年ぶりのスパイアクションです。



本作主人公ピーター・デヴェロー(ピアース・ブロスナン)は、
このピアース・ブロスナンと微妙にダブって、元CIAの敏腕エージェント。
今は穏やかな引退生活をしていましたが、
元同僚に呼び出されて仕事を依頼されます。
ロシアで潜入捜査中のナタリアを連れ帰って欲しいというのです。
実は彼女はピーターの元恋人。
しかし、彼女はなんと彼の目の前で殺されてしまうのです。
しかもCIAの自らが育てた若手エージェント、デヴィッド・メイソン(ルーク・ブレイシー)によって。
ロシアの暗殺者とCIAを敵に回し、
ピーターの孤独な戦いが始まる・・・。



スパイアクションはやや食傷気味、
しかも今更ピアース・ブロスナン・・・?
ということで、公開時は見逃していたのですが、意外と面白かった。
本作のいいところは、ピーターが敵対する最大の相手が、
以前若手の後輩としてみっちり指導してきたデヴィッドというところ。
ピーターは「奴が通った後に生き残ったものはいない」ということで、
ノーべンバー・マンと呼ばれていて、厳しく口うるさい上官ではありましたが、
デヴィッドは尊敬していたのですね。
以前、敵に利用されることになるので「女と親しくならないように」と
ピーターに言われたことを守って女遊びもしないでいたくらいです。
ところが、そのピーターにかつて愛した女性がいて、
子どもまでいると知ったデヴィッドは・・・。



アメリカ映画に多い「父と息子の確執」にも似たこの二人の関係が、
ヒリヒリとしてスリリングです。

何度か命がけの対峙をしますが、
でもラストでは言葉もかわさないのに通じ合う連携プレイ。
微妙な愛憎を見せるこの二人の関係性こそが本作の花であります。
あ、でもヒロイン、アリス・フルニア(オルガ・キュリレンコ)も花!! 
美しい~!!
そう言えば彼女もボンド・ガールの経験ありですね。



スパイ・レジェンド [DVD]
ピアース・ブロスナン,オルガ・キュリレンコ,ルーク・ブレイシー
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント

「スパイ・レジェンド」
2014年/アメリカ/108分
監督:ロジャー・ドナルドソン
出演:ピアース・ブロスナン、ルーク・ブレイシー、オルガ・キュリレンコ、エリザ・テイラー、カテリーナ・スコーソン
師匠と弟子の確執度★★★★★
満足度★★★★☆