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映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ヴィンセントが教えてくれたこと

2015年09月09日 | 映画(あ行)
「叔父さん」の効用



* * * * * * * * * *

アルコールとギャンブルを愛する、嫌われ者の偏屈オヤジ、ヴィンセント(ビル・マーレイ)。
その隣の家にシングルマザーのマギー(メリッサ・マッカーシー)と
12歳の息子オリバー(ジェイデン・リーベラー)が越してきます。
女手一つでオリバーを育てなければならないので
マギーは仕事をしなければなりません。

かなり不安はあったものの、とりあえず暇そうなヴィンセントに
息子の面倒をみてもらうことにします。
しかし、ヴィンセントはオリバーをバーや競馬場に連れて行ったり
喧嘩の仕方を教えたり・・・。
けれどそんなヴィンセントと共に過ごすうちに、
オリバーは彼の表面的な口の悪さや荒っぽさとは別の、優しさに気づいていくのです。



何かの本で読んだのですが、
子どもの成長には親とは別に「叔父さん」の存在が必要なのだと。
ここでいう「叔父さん」は、一般的な年輩の男性ではなくて、
父や母の兄弟である親戚の「叔父さん」。
必ずしもそうであるわけではありませんが、
イメージ的に、まだ両親よりは若くて、定職についていないような。
親や兄姉からは
「いつまでもふらふらしていてしょーもないやつだ・・・」
なんて思われている存在。
しかしその存在が、甥や姪にとっては有用だというのです。
親はどうしても子どもには「正しく」あることを望みます。
だからまあ、自分たちの隙をあまり子どもには見せないようにする。
ところが「叔父さん」は、本来その子の将来に責任があるでなし、
自らのだらしなさや世の中の影の部分も
平気で見せてしまうわけです。
そしてまた本人の自由さをも。
子どもは、そんな叔父さんを反面教師とすることもあればまた、
その自由さに憧れたり、社会勉強をしたり・・・、
親からは得られない色々なとこを学び取るという訳ですね。



それで思ったのは、本作のヴィンセントは、
まさにそういう「叔父さん」的存在なわけです。
決して「父親」ではない。
ところがですね、私、オリバーがこんな風に人の気持ちが分かる子にここまで成長してきたのは
やっぱり両親の育て方が良かったんだろうなあ・・・と思ってしまいました。
パパはちょっと浮気性が玉にキズかもしれないけれど、
基本的に子ども好きのいいお父さんなんですよ、きっと。



「聖人発表会」という学校の催しでのオリバーの発表には、つい泣かされました・・・。
本作で泣かされるなんて思ってもいませんでしたが。
オリバーは腹筋一回のへなちょこではありますが、
頭が良くて、人の気持ちがわかる、いい子ですよねー。
いじめっ子と結局一番の仲良しになるところもステキです。



そしてヴィンセント!!
全く、悪ぶっているくせに、
ネコを可愛がり、妊婦のストリッパー(ナオミ・ワッツ!!)を気にかけ、
自分を夫と認識していない妻を見舞い・・・、
そして孤独だ。
実にかっこわるくてカッコいいオヤジを見事に演じたビル・マーレイ、ナイスでした。



「ヴィンセントが教えてくれたこと」
2014年/アメリカ/102分
監督・脚本:セオドア・メルフィ
出演:ビル・マーレイ、メリッサ・マッカーシー、ナオミ・ワッツ、クリス・オダウド、ジェイソン・リーベラー

オヤジのカッコ悪さ★★★★☆
オヤジのカッコよさ★★★★★
満足度★★★★★