映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ギリシャに消えた嘘

2015年12月27日 | 映画(か行)
ひりひりする人間関係



* * * * * * * * * *

1962年ギリシャ。
アテネでガイドをしているアメリカ人青年ライダル(オスカー・アイザック)が
パルテノン神殿で優雅なアメリカ人紳士チェスター(ヴィゴ・モーテンセン)と
妻コレット(キルステン・ダンスト)と出会います。
しかし、チェスターは本国で危ない仕事を手がけていたため、
彼の行方を探していた探偵が訪ねてくるのですが、
チェスターは誤って殺してしまうのです。
その後始末をライダルが手助け。
微妙な関係のこの3人が、警察の手から逃亡の旅をすることに・・・。



パトリシア・ハイスミス原作のサスペンス。
もともとライダルも、いい加減なやり方で観光客からお金を巻き上げていた
というようなヤクザな男なのです。
しかし、つい最近亡くなった自分の父とチェスターの顔立ちがどことなく似ていたことと、
妻コレットに惹かれるものがあったことで、彼らに関わるようになったのですね。
ただし、彼と父は上手くはいっていなくて、
ちょっと反発する気持ちもあるのです。



一見裕福で気持ちにもたっぷりゆとりがあり、頼りになりそうな紳士チェスターが、
追い詰められ、身も心もよれよれになって、エゴを丸出しにしていきます。
そのためにまた新たな悲劇が起こる。
どこかチェスターを自分の父親と重ねてしまうライダルは、
上辺を取り繕ったチェスターに反発を感じつつ、
しかし次第に憔悴し本性を露わにしていく彼に親しみも感じていくのですね。
ひりひりしたこの2人の関係性が秀逸です。



それにしてもせっかくのギリシャの旅なのに、
警察の目を逃れながら・・・ということで気分は重い。
もう、さっさと捕まってしまったほうがいっそいいのではないかという気持ちと、
無事逃げ切ってほしいという気持ちに、
見ている私たちまでもが引き裂かれてしまいます。
しかしまあ、逃げ通せるはずもないものではありますが・・・。



この二人の間を余計複雑にしているのが妻コレット。
彼女と夫にはかなりの年の開きがあります。
無論夫を愛してはいるのですが、若いライダルに興味がなくはない。
特別頭がいいわけでもなく、むしろ凡庸な女。
ただしセクシー。
こういう女を、キルステン・ダンストが上手く演じています。



ギリシャに消えた嘘 [DVD]
ヴィゴ・モーテンセン,キルスティン・ダンスト,オスカー・アイザック
バップ


「ギリシャに消えた嘘」
2014年/イギリス・フランス・アメリカ/96分
監督:ホセイン・アミー
出演:ヴィゴ・モーテンセン、キルステン・ダンスト、オスカー・アイザック

ひりひりする人間関係度★★★★★
満足度★★★★☆