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映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

あの日の声を探して

2015年12月23日 | 映画(あ行)
ドキュメンタりーのようで映画的



* * * * * * * * * *

1999年、第二次チェチェン戦争を舞台としています。
「アーティスト」でアカデミー作品賞を受賞したミシェル・アザナビシウス監督作品としては
ちょっと意外な気がしますが、ラストで、「さすが!」と思いました。


ロシアに侵攻を受けたチェチェン。
9歳の少年ハジは、両親を殺されたショックで声を失い、
赤ん坊の弟を連れて廃墟の村を出ます。
赤ん坊はやむなく見知らぬ人の家の前に置き、ひとりさまようハジ。
実は彼が死んだと思った姉は生きていて、
姉は二人の弟を必死で探し始めるのですが・・・。
街にたどり着いたハジは、フランスから調査に来たEU職員キャロル(ベレニス・ベジョ)と出会い、
共に暮らすことになります。
キャロルは戦争の前では無力な自分を感じていたのですが、
せめて一人の子どもでも救うことができるのならば・・・と、思ったのですね。



少しずつ心がほぐれ、言葉を取り戻していくハジ。
ラストの「出会い」のシーンはとても感動的で、つい、もらい泣き。
音楽が好きでいつもCDを聞いているハジ。
キャロルがダンスを誘っても嫌がって決して体を揺すったりもしないハジだったのですが・・・。
ある時、彼が一人の時をそっと覗いてしまうキャロルが見たものは・・・。
ちょっと目を見張りますね! 
そうか、ハジがようやく自分を語り始めた時に、
父親がすごくダンスが上手くて、彼はそれが自慢だったと話していましたっけ。



さて本作、このハジを取り巻くストーリーと平行して、
ロシア軍の兵士となった一人の青年・コーリャ(マキシム・エメリヤノフ)を追います。
ちょっと気弱なごく普通の青年。
彼は軍隊内の強烈なヒエラルヒーや理不尽な暴力にさらされるうちに、
人を殺すことにも動じない「立派な」兵士になっていきます。
その挙句が、実は本作の冒頭につながっているという、
淡々とドキュメンタリー風に追ってきたストーリーながら、
まさに「映画的」な驚きが待っているのでした。



ごく普通の人々が簡単に被害者になるし、また加害者の側にもなってしまうのだ
・・・ということですね。
そんな中でも、人々は必死に生きていこうとするし、
また、人のために手を差し出しもする。
おススメ作です。

あの日の声を探して [DVD]
ギョーム・シフマン,ミシェル・アザナヴィシウス,トマ・ラングマン
ギャガ


「あの日の声を探して」
2014年/フランス・グルジア/135分
監督:ミシェル・アザナビシウス
出演:ベレニス・ベジョ、アネット・ベニング、マキシム・エメリヤノフ、アブドゥル・カリム・スマツイエフ