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「誘拐された犬」スペンサー・クイン 

2015年12月04日 | 本(ミステリ)
まさしく犬!!

誘拐された犬 名犬チェットと探偵バーニー (創元推理文庫)
古草 秀子
東京創元社


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貧乏探偵バーニーと、猫がらみの理由で警察犬訓練所を卒業しそこなった大型犬チェット。
この最強コンビは伯爵夫人に愛犬の警護を依頼されたが、
いかにもな失敗で即クビ。
その後、夫人は愛犬とともに誘拐されてしまう。
そして事件を取材中のバーニーの恋人まで失踪…。
何が起きているのか?
語り手が犬であるからこそ可能になったミステリ!
『チェット、大丈夫か?』改題文庫化。


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書店の店頭で「全世界の犬好きの心を鷲掴みにした」という、うたい文句に心惹かれ、
シリーズの2作目というのにいきなり買ってしまいました。
でも、読み始めてすぐに、このキャッチコピーがウソではないと納得!!


本作は貧乏探偵の相棒、犬のチェットが語り手なのです。
まあ、こういうケースはないわけではない。
でも大抵その語り手は「犬」でありながら完全に「人」の思考をしますね。
犬の姿を借りた人間。
けれども本作、チェットはまさしく「犬」なのです。
パートナーのバーニーや犬用のガム、ベーコンなどが大好き。
頭の上をバーニーがそっと掻いてくれれば嬉しくて
ついしっぽをゆさゆさと振ってしまう。
大抵の人の話は理解できるけれども、
バーニーが来客と込み入った話を始めると、
もうわけがわからなくなって興味を失ってしまう。
顧客の犬のために差し出されたオヤツを、無意識のうちに掠め取ってしまったりも・・・。


犬を飼ったことのある人なら分かる、完璧な犬のしぐさ。
そういうのがもう可愛くて可愛くて・・・。
やめられません。
そしてまた、相棒のバーニーがものすごくいい奴なんですよ! 
チェットの失敗のために仕事のしょっぱなから「クビ」宣告を受けてしまうのですが、
バーニーはそのことを決して他の人に告げ口をしたりしません。
チェット自身が自分の失敗に後悔し、車の隅でうつむき丸くなっているのもおかしいのですが、
その気分を十分に汲んでいるバーニーもナイス!!


いつも一緒のコンビですが、捜査の途中ではぐれてしまうシーンがあります。
チェットはそこでなかなか大変な体験をするのです。
後にようやくまた巡りあうのですが、その間のことをもちろんバーニーに話すことはできない。

「お前はきっと何かを見たんだな。話ができればいいのに・・・」

と、バーニーがつぶやきます。
けれど、バーニーは洞察力がするどいので、
チェットがある車を見て唸り声を上げているのを見て、ピンとくる。
そうして事件解決へつなげていくわけで、全くいいコンビです。


本国ではもう8作目まで出ているそうで、この先も楽しみです。
もちろん、順不同ですが、後ほど一作目の「助手席のチェット」も読みますね!!


「誘拐された犬」スペンサー・クイン 創元推理文庫
満足度★★★★★