MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『アウト・オブ・マイ・ハンド』

2016-07-22 00:05:31 | goo映画レビュー

原題:『アウト・オブ・マイ・ハンド(Out of My Hand)』
監督:福永壮志
脚本:福永壮志/ドナリ・ブラクストン
撮影:村上涼/オーウェン・ドノヴァン
出演:ビショップ・ブレイ/ゼノビア・テイラー/デューク・マーフィー・デニス
2015年/アメリカ
SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2016

逡巡する主人公とブレる「真面目さ」について

 主人公のシスコの心情がいまいち理解できない。シスコは西アフリカのリベリア共和国のゴム農場で働いている。日が出ていないうちからランタンを灯して農場に向かい、ラテックスを採集しており、労働組合がストライキを始めて、組合側の意見に従い仕事を放棄していたのに、他の従業員たちはすぐに仕事に復帰してしまい妻にも言い訳ができず、ついに家族を残してニューヨークに向かいタクシーの運転手として働きだす。
 ここまでシスコが真面目な男であることはわかる。ある晩、シスコは同郷の男を乗せるのだが、何故か余計に貰った多額の乗車料金を受け取ることを拒否してしまう。しかし何故タクシー運転手が「チップ」を拒否するのかがよく分からない。あるいはかつて内戦で共に戦っていたジェイコブと出会い、昔のことを思い出したくなかったシスコはジェイコブを無視するつもりだったが、その日の晩、マリアという女がジェイコブの下から逃げてきたと言って助けを求めに来る。最初は断っていたシスコは妻子がありながらマリアと一晩ベッドを共にしてしまい、翌朝になってジェイコブがシスコの家を訪ねてきてシスコは彼らに騙されていたことに気がつくのである。別の晩に、シスコを見つけて近寄って来たジェイコブが車に轢かれたのを見ても救急車を呼ぶこともせず、その場から逃げ出してしまい、どうもシスコの「真面目さ」がブレるのである。
 ラストでシスコはタクシーのタイヤを交換している。おそらくシスコはそこでかつて息子が「自分が履いているサンダルはお父さんが作ったの?」と嬉しそうに訊ねていた問いを思い出しているはずで、確かにサンダルの原料となるゴムは自分が採集しているが、サンダルそのものを作っている訳ではないから答えに逡巡していた。今、シスコは自分が採集していたゴムで出来たタイヤを使っているのだが、息子のように素直に喜べないのは何故なのか再び逡巡するのである。


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