MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『いたくても いたくても』

2016-07-21 00:13:10 | goo映画レビュー

原題:『いたくても いたくても』
監督:堀江貴大
脚本:堀江貴大
撮影:謝君謙
出演:嶺豪一/澁谷麻美/吉家翔琉/坂田聡/大沼百合子/芹澤興人/磯部泰宏/岩井堂聖子
2015年/日本
SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2016

ジョギングからプロレスへの「すれ違い」について

 例えば、主人公の星野健と恋人の山本葵が勤めている、怪しげな雰囲気を醸し出す坂田という社長が経営する通販会社がこれまたいかにもチープで怪しい商品を売っており、だから葵は会社を辞めてアマゾンで働くことにしたのかと勘繰ってしまうことは、本作が東京藝術大学大学院映像研究科映画専攻第九期生修了制作品という性格のものだから予算の問題として処理できるものの、ただいつもの癖でストーリーの流れだけで本作を理解しようとするとありきたりのつまらないものになってしまうと思う。だからここでは通販会社が素人によるプロレスという手立てで視聴率を取ろうとする点を重要視するべきであろう。
 星野と葵は葵の実家で彼女の母親と共に一緒に暮らしており、毎朝葵に急き立てられるように星野は葵と一緒にジョギングをしているのであるが、会社でプロレスを始めたことをきっかけにジョギングをしなくなってしまい、おそらくここから星野と葵の関係はギクシャクしだしたと思われる。
 ラストで星野は先輩の戸田を担ぎ上げて回すのであるが、ここで観客は作品前半で葵が会社の自分の椅子に座りながら天井を見つめて回っていたことを思い出すべきで、要するに葵が椅子で回っている間に、星野が戸田を回しているというすれ違いの運動を見いだすべきなのである。


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