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9月の歌3 豊浦の海

洞爺湖から道道97号へ戻り、途中からさらに細い旧道に逸れて豊浦温泉近くで国道37号線に合流する。
北海道地元では噴火湾と呼ばれている内浦湾は、室蘭から函館近くの森町まで、きれいな円形を描きながら続く約150㎞の長さのある湾だ。
北海道の海岸は湿原になっているか海からいきなり断崖になっているかのどちらかの場合が多く、それはこの湾内にも言える。

特に豊浦静狩間は海から断崖をなして交通上は難所だ。
鉄道も山側にそれてトネンルで越えて行き、国道も内陸部を峠とトンネルで越え、海沿いの道は通っていない。

途中、鉄道マニアには有名な、降りてもどこにも行けない駅、家も街も道さえもない駅、「こぼろ駅」があるのもこの区間である。
(歩いて海までは降りられるが、その海からは海岸線も崖で歩けない。)

この区間をバイクで訪れるには、豊頃から礼文華(れぶんげ)までの間に、鉄道と平行して旧道が走っている。一応道道608号、と道道609号線ということになっている道だ。


海沿いの道は静かだった。
キャンプ場があり、家族連れのキャンパーがたくさん来ていたが、雰囲気は落ち着いている。
9月の海は、まして北海道ではすでに泳げる時期ではないが、海沿いにはいつもなんらかの安らぎがある。
内浦湾を望み、遠く室蘭方向が霞んでいる海岸線の彼方を見ながら波打ち際を散歩すると、落ち着いた気持ちがしてくる。

晴れた空。波の静かな海。


砂浜は長くは続かず、すぐにこうした岩と崖の海岸線になる。
道はセンターラインのない一車線となり、海が荒れれば通行止めとなる。
そう、この風景だけを見れば、北海道ではなく、本州のどこかの半島の海岸線のような雰囲気だ。
海沿いの道を少し行くと、やがて礼文華。道は海沿いの断崖に阻まれ、ここから内陸へ入る。


何気ない秋の山の風景。
黄色い花が至るところに咲いている。
この山の景色も、よく見ると北海道のもっと北の地域とは全然違う。
僕のブログに映った山の写真の中でもこの山は特異だと思う。むしろ本州的な風景だ。
それは山に針葉樹(おそらく杉だと思うが)が、きれいに植林されていることである。

さすがに北海道は寒く、杉の植林には適さない。
また、北海道の開拓は、豊富にある原始の森林資源を伐り出しては本州へ運ぶことなどで始まった。だからこうして何代にもわたる杉の植林の山の風景は少ないのである。


スギ花粉にようアレルギーが大きな問題となっている今、杉の単一相の山はその生態系の貧しさからも、原始の広葉樹による雑木の山が望ましいイメージを持ち始めている。

しかし、村の近くの山に杉を植え、それを伐っては村の建物の建材にするというのは、日本の伝統的な地産地消の姿でもあった。
和人(わじん)である樹生(たっき)和人(かずひと)クンは、杉の林にノスタルジアを禁じえないのであった。


国道37号線に合流し、礼文華、静狩の峠を越えれば、内浦湾沿いに原野の広がる長万部方向の海岸線が見えてくる。
国道からさらに逸れてこの原野の中の道を突っ切り、長万部から国縫(くんぬい)まで下ったら、再び国道230号線で渡島半島を横断、日本海側に抜ける。
総走行距離9万3千キロを越えて、GPZはいまだ快調。
秋の空は高く、爽快な気分でのツーリングが続く。  (つづく)
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