バイクライフ・バイクツーリングの魅力を北海道から。
聖地巡礼-バイクライディングin北海道-
大地疾走9 日勝峠

(2007年7月5日 14:00PM 日勝峠十勝側5合目展望台)
日勝峠は、日高と十勝を結んで日高山脈を越えていく標高1022m(諸説ある)の峠だ。
峠の標高自体は2000m級を越える信州近辺の峠に比べればかわいいものだが、十勝側のとっつきは標高100m程度で一気に900mを駆け上る峠は、まさに北海道を東西に分ける大地の壁を越えていく感じがする。
ウィキペディアによる日勝峠の記述にはこのようなものがある。

さらに続けて
何十回となく通った経験から言えば、このウィキペディアの記述は僕の経験や実感と一致している。
この難所、日勝は特別な峠なのだ。
この峠の東西で、天気も、風景も、車の流れも、風の色も、変わる。
この峠は越えるときに特別な気持ちになる。
排気量1052㏄のGPZ1100はパワーも低速トルクも十分で、この難所を登るのに、エンジンになんのストレスも覚えない。
まるでそこらの坂でも登るように、ぐいぐいと高度を上げていく。
「力」。
何でも力に頼るのは嫌いだ。できれば小さな力で、するすると危機をかわしながら、しなやかに、したたかに生きて行きたいと思う。
しかし、時に力が頼もしく感じられることがある。
力持ち。
その力に身を委ねることの安心感、気持ちよさ。
でもその力は、使い方を間違えば一瞬で僕を絶命させる。
それが車やバイクに乗るとういうことだ。
剥き身のバイクは、それをいつでも思い出させてくれる。

悪条件のことも多い日勝峠だが、今日は晴れたまま、通してくれたようだ。
途中、荷物を満載した自転車を追い抜いた。
昔ながらのランドナータイプの自転車。
十勝側から峠を登っていた。
前後に車もいなかったので、追い抜きざまに速度を落として、手を振りつつ声援を送ると、
手を上げて答えてくれた。
日焼けした笑顔が、誇らしく、まぶしい。
大きすぎない力。
自分の体の力を源に、自転車という道具を使い、徒歩より遥かに速い速度で移動する。
ホントは分かってる。
自転車こそが、最強の旅道具だ。
人力で登る自転車は、100馬力を超えるオートバイに全然負けていない。
のぼりで速度が遅くても、最高速度が遅くても、旅の密度は比べようもない。

でも同時にまた、僕は知っている。
バイクには、自転車では決して得られない感覚がある。
バイクは時としてライダーを振り落とす、また時には頑として動かなくなる、
手ごわい相棒だ。
力持ちの、相棒だ。
自転車の数倍もの速度で駆け抜けていくそのスケール感。
風景の中を地上1メートルの高さで自分自身が飛んでいく、その感覚。
谷を跨ぎ、山を越え、空に近づき、川と併走し、雲を追い抜き、疾走していく。
その疾走感。
時速何㎞とかじゃない。
風が体の中を通り抜けていくような、風景の色が自分の体の中に入っては抜けていく、この移動感覚。
それは徒歩でも、自転車でも、オープンカーでも得られない。
バイクにしかない、バイクだけの、
バイクで走るライダーにしか味わえない感覚だ。

見知らぬ町。
遠い海。
遥かなる山脈。
誰もいない岬。
はじめての道。
はじめての旅。
バイクはいつでも、僕らをはじめての旅にいざなう。
いつもの通勤路でさえ、はじめての道になる。
バイクに対するピュアな気持ちを忘れなければ、
旅はいつでも僕らとともにある。
大地・疾走。
僕らはいつでも、大いなる空の下を、この大地の上を、走っている。
「I am a Rider.」
1人ひとりが、その誇りを、しっかり胸に、刻んでいる限り。
今、走れ。この道を。
二度とないこの時を、自分の走りとして、刻んでいけ。
………

(2009年7月5日 17:30PM 帰着)
峠を越え、車列に飲まれた単調な移動をくぐり、市街地の渋滞を抜け、
自宅にたどり着いた。
メインキーを切るまでの数秒間、
愛車に感謝を捧げて。
(大地疾走 完)
日勝峠は、日高と十勝を結んで日高山脈を越えていく標高1022m(諸説ある)の峠だ。
峠の標高自体は2000m級を越える信州近辺の峠に比べればかわいいものだが、十勝側のとっつきは標高100m程度で一気に900mを駆け上る峠は、まさに北海道を東西に分ける大地の壁を越えていく感じがする。
ウィキペディアによる日勝峠の記述にはこのようなものがある。
国道274号の途中にあり、道央と道東を結ぶ要衝。天候がよければ、清水側にある展望台や頂上付近から十勝平野の展望を望むことができるが、夏季は濃霧による視界不良、冬季間は路面凍結、吹雪による視界不良と、一年を通して悪条件となる場合が多く、重大事故の発生も多い。1,000m級の標高とはいえ森林限界に達し、気象条件としては長野・群馬県境の渋峠(標高2,172m)クラスに匹敵するうえに、道央~道東をつなぐ主要な道路で多くの大型車が昼夜を問わず通行する産業道路であるため圧雪アイスバーンが形成されやすく、路面状況も含めると世界的にもトップクラスの厳しい峠となっている。1日の通行台数は、およそ8,000台。
急曲線や急勾配が連続する線形ながら幅員が広いため車両の平均速度が高く、夏冬問わず80km/h以上の高速で流れていることが多い。そのため、運転に慣れない初心者や北海道外からのドライバーは恐怖感を抱くことすらある。また、登坂車線が整備された清水側と対照的に、日高側は通常の片側一車線のまま深い樹海の中で高度を上げ続けていく線形のため、速度の低い車両を後続車が追い抜けない状況が延々と続くこともある。

さらに続けて
高速道路が日本各地で整備された現在、一般道のみで残った交通の要衝(峠道)としてはその周辺地域の経済的規模・依存度から考えると国内でも重要度の高い峠といえる。しかし、冬期間はベテランのドライバーですら所要時間を犠牲にしてでも国道38号狩勝峠や国道236号の天馬街道、あるいは有料である道東自動車道を迂回することが少なくない。(出典同上)とくれば、この峠がどのようなものか、だいたい想像していただけるのではないかと思う。
何十回となく通った経験から言えば、このウィキペディアの記述は僕の経験や実感と一致している。
この難所、日勝は特別な峠なのだ。
この峠の東西で、天気も、風景も、車の流れも、風の色も、変わる。
この峠は越えるときに特別な気持ちになる。
排気量1052㏄のGPZ1100はパワーも低速トルクも十分で、この難所を登るのに、エンジンになんのストレスも覚えない。
まるでそこらの坂でも登るように、ぐいぐいと高度を上げていく。
「力」。
何でも力に頼るのは嫌いだ。できれば小さな力で、するすると危機をかわしながら、しなやかに、したたかに生きて行きたいと思う。
しかし、時に力が頼もしく感じられることがある。
力持ち。
その力に身を委ねることの安心感、気持ちよさ。
でもその力は、使い方を間違えば一瞬で僕を絶命させる。
それが車やバイクに乗るとういうことだ。
剥き身のバイクは、それをいつでも思い出させてくれる。

悪条件のことも多い日勝峠だが、今日は晴れたまま、通してくれたようだ。
途中、荷物を満載した自転車を追い抜いた。
昔ながらのランドナータイプの自転車。
十勝側から峠を登っていた。
前後に車もいなかったので、追い抜きざまに速度を落として、手を振りつつ声援を送ると、
手を上げて答えてくれた。
日焼けした笑顔が、誇らしく、まぶしい。
大きすぎない力。
自分の体の力を源に、自転車という道具を使い、徒歩より遥かに速い速度で移動する。
ホントは分かってる。
自転車こそが、最強の旅道具だ。
人力で登る自転車は、100馬力を超えるオートバイに全然負けていない。
のぼりで速度が遅くても、最高速度が遅くても、旅の密度は比べようもない。

でも同時にまた、僕は知っている。
バイクには、自転車では決して得られない感覚がある。
バイクは時としてライダーを振り落とす、また時には頑として動かなくなる、
手ごわい相棒だ。
力持ちの、相棒だ。
自転車の数倍もの速度で駆け抜けていくそのスケール感。
風景の中を地上1メートルの高さで自分自身が飛んでいく、その感覚。
谷を跨ぎ、山を越え、空に近づき、川と併走し、雲を追い抜き、疾走していく。
その疾走感。
時速何㎞とかじゃない。
風が体の中を通り抜けていくような、風景の色が自分の体の中に入っては抜けていく、この移動感覚。
それは徒歩でも、自転車でも、オープンカーでも得られない。
バイクにしかない、バイクだけの、
バイクで走るライダーにしか味わえない感覚だ。

見知らぬ町。
遠い海。
遥かなる山脈。
誰もいない岬。
はじめての道。
はじめての旅。
バイクはいつでも、僕らをはじめての旅にいざなう。
いつもの通勤路でさえ、はじめての道になる。
バイクに対するピュアな気持ちを忘れなければ、
旅はいつでも僕らとともにある。
大地・疾走。
僕らはいつでも、大いなる空の下を、この大地の上を、走っている。
「I am a Rider.」
1人ひとりが、その誇りを、しっかり胸に、刻んでいる限り。
今、走れ。この道を。
二度とないこの時を、自分の走りとして、刻んでいけ。
………

(2009年7月5日 17:30PM 帰着)
峠を越え、車列に飲まれた単調な移動をくぐり、市街地の渋滞を抜け、
自宅にたどり着いた。
メインキーを切るまでの数秒間、
愛車に感謝を捧げて。
(大地疾走 完)
コメント ( 6 ) | Trackback ( 0 )

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樹生さんのブログ読んでるときちんと書かなきゃな~
って思うのですが、、、、、
なんとなく、面倒になってしまってます(^^;
北海道の中でも、この辺りが一番大地って感じしますね
雄大な自然の中、一人気ままに走る
仲間と走ったり、峠道を攻めたり、ジムごっこでクルクルも楽しいのですが
やはり、自分には一人気ままが合っているような気がします
来シーズンは少し一人で走る機会を多くして
もう一度原点に帰ってみよう、かと
今回の樹生さんの記事を読んで、思いました。
バイクに乗るということと、ブログの記事を書くということとは、全く別々のことですよね。
記事を書くのもまたライディングとは別の集中力と時間が必要で、今年はその時間がなかなか取りにくく、先月は私も更新が少なくなってしまいました。
私は一人で走ることがほとんどなので、前回みたいにGSX1400ミーティングにお邪魔したり、時折職場の仲間とちょっとツーリングしたりするのが新鮮でまた楽しい時間になっています。
僕にとってはバイクは基本的に1人の乗り物なんですね、たぶん。
いつも一緒じゃなくて、ひとりとひとりが出会えたりするから、バイクでのミーティングやマスツーリングが楽しい気がするんです。
でも、それは少数派かも。
僕は古いタイプのバイク乗りなのかもしれません。
長距離お疲れ様でした。
十勝方面は私も何度か訪れたことがあります。北海道らしい広々とした景色がすばらしいですね。
去年の夏初めてバイクで日高峠を越えました。今回、樹生さんが写真を撮られた展望台からの眺めは、とても感動しました。
今回のルートは、去年走った道も含まれており、思い出にふけりながら記事を読みました。
いつの日か北海道を訪れることができたなら、もう一度ここを走りたいと思います。
話変わりますが、色々あってうちのGPZの車検が切れてしまいました。落ち着いたらきちんと整備して復活させようと思います。
うちのGPZも樹生さんのGPZと同じ仕様でバーハンドルに変更しております。
暫定でもらい物のハンドルバーを装着しておりましたが、もうちょっと絞ったものを探しておりました。
また、全幅も許容範囲を超えて広がってしまったため、幅の狭いものが必要でした。
そんななか、過去の記事でバリオス2のハンドルを装着されているのを知り、試してみることにしました。
ハンドルは、たまたまオークションにでていた物を安く仕入れることができました。
復活までには装着したいと思います。
ありがとうございました。
兵庫はもう、かなり暑いでしょうか。
北海道は今週いっぱいはっきりしない天気が続くようです。
北海道は道が空いていて峠も高速なために、下道だけでも距離を稼ぎやすい環境にあります。
今回も700㎞走りましたが、本州以南では400㎞くらいの感覚かなぁ…などと思ったりしています。
このスケール感にGPZは合っているのだと思います。
バーハンドルの記事、参考になったのでしたらとてもうれしいです。
私は手が短い方らしく(^^;)、ノーマルもアフターパーツのハンドルもどうも合わなくて、結局バリオスⅡにたどり着きました。
わっきゅうさんのポジションに合うといいのですけれど…。
いろいろ御事情があって車検日が過ぎたのですね。
車検を通し、維持して、バイクに乗る。
それだけでも実はなかなか大変ですよね。
わっきゅうさんのGPZが路上に復帰できる日が早く来ることを祈っております。
私は秋田出身ですが、蔵王には行ったことがありません。
地図で見ると、エコーラインはすごいワインディングですね。
出羽三山といえば月山、湯殿山、羽黒山ですが、それ以外にも東北は山岳信仰の深い山が多く、蔵王にも修行の方もいらしたのでしょうね。
自転車は一時のブームというよりは、大きな流れになりつつあるような気がしますが、それはたぶん、とてもいいことなのだと思います。
自転車にもバイク同様、いろいろあるので、みんなロードバイクにレーサージャージでなく、様々なスタイルが広がっていけばいいなと考えています。
私も贅肉が厚くなってきたので、自転車、乗らなきゃ、と思うんです。思うんですがね…意志弱いなあ…。