医大生・たきいです。

医大生的独言。

「私は咳をこう診てきた」を読んで

2015-11-09 23:50:45 | 医学書レビュー

部屋汚さ過ぎて、届いたばかりでついさっき部屋に持ってきたはずのAmazonの袋が一時行方不明になる事件が起こりました(笑)。そろそろ心を入れ替えて部屋の掃除に取り組もうかと考えた次第です。医大生・たきいです。






呼吸器内科の勉強でもすっかと軽い気持ちで手に取った一冊がこちら。2,000円という医学書にしては安い本です。

私は咳をこう診てきた
亀井 三博
南山堂


この本、呼吸器の勉強しようかなという意図でなんとなく手に取ってみたのですが、いい意味で裏切られました。読み終わってから知りましたが、巷では診断に至るまでの思考過程が実によく分かる一冊、だなんていう評価を得ているようです。検査前確率を以って有効な尤度比の検査を選んで診断まで持っていくプロセスが実に明解に書いてあります。ここまで丁寧に医者の頭の使い方を示してある本は他にあるでしょうか。非常に勉強になりました。診断だけではなく、その先の治療に関しても、プロフェッショナルの心意気が手に取るように見えてきて興奮を覚えました。

ただし。この本に一番感銘を受けた点はもっと他にあるんです。著者の亀井先生は、自らを「文系医師」と名乗っておられますが、淀むことなく流れるような文章が実に美しい。本文中に「私は映像が浮かぶような病歴が好きだ」(本著p.82)との記述がありましたが、薄い本ながらも結構たくさん載っている症例のどれもが、患者さんと真摯に向き合っているのだと伝わってくる美しい文章の上に病歴が書かれてあるのです。

私なんかが見よう見まねで小説のような病歴の書き方をしてしまったら空中分解して上の先生から怒られてしまいそうなことは目に見えていますから迂闊なことはしません。まずは基本の型があるわけですから。だけれども、これから何年かかるかは分からないけれど、いつかこんな美しい文章のカルテを書けるようになりたい。このブログ上で、「俺って文系だわ」とほざいていたことがこれまで何度かありましたが、失言でした。こうした美しい病歴を書ける方でなければこの業界で文系と名乗ることは許されないでしょう。精進します。

試験前に勉強が間に合わなくて泣きそうになったことはこれまで何度かあったけれど(笑)、医学書読んで初めて感動して泣きました。特に最後の「在宅ケアの章」は涙なしには読めません。悟りました。医者ってこういう職業だったのか。もっと読み込んでいきたい一冊です。この本、2,000円は安いと思う。

因みに。一般的な医学生が「呼吸器の勉強してー!」とお考えの際は、恐らくこっちの本のほうがオススメでございます。

レジデントのためのやさしイイ呼吸器教室[ベストティーチャーに教わる全27章]改訂第2版
長尾大志
日本医事新報社








(今週の実習はハードそうで冷や汗な人(笑))

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