竹とんぼ

家族のエールに励まされて投句や句会での結果に一喜一憂
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冬ざれ自画像水族館の水鏡 鷹羽狩行

2019-11-16 | 今日の季語


冬ざれ自画像水族館の水鏡 鷹羽狩行

どこかに映っている自分の顔を見出すことはよくある。電車やバスの窓に、川や池や沼の水面に。さらにそこに空や雲や雪や雨を重ねてドラマの一シーンを演出するのも、映像的な手法の一典型である。自画像というから、顔だけというよりもう少し広い範囲の自分の像であろう。水族館の水槽の大きなガラスに作者は自分の姿を見た。映っている自分の姿の中を縦横に泳ぐ魚たち。自分の姿に気づくのは自分を認識することの入口。作者はそこに「冬ざれ」の自分を見出しているのである。俳句に触発されて起こった二十世紀初頭のアメリカ詩の運動、イマジズムは、短い詩を多く作り、俳句の特性を取り込んで、「良い詩の三原則」というマニフェストを発表した。その中の二つが、「形容詞や副詞など修飾語を使用しないこと」「硬質なイメージをもちいること」。彼等が俳句から得た新鮮な特徴の原型がこの句にも実践されている。独自のリズムの文体の中に、かつんと響き合うように置かれた二つのイメージの衝突がある。『誕生』(1965)所収。(今井 聖)

冬ざれ】 ふゆざれ
◇「冬ざるる」
冬の万象の荒れさびれたるさまを言うが、本来の「冬されば(冬になれば)」の誤用。しかし、「ざれ」とした濁音の響きは、冬の蕭条としたさびしさを思わせることから、俗用ながらも定着。

例句 作者

冬ざれや子供がとんで来るひかり 細川加賀
冬ざれや小鳥のあさる韮畠 蕪村
冬ざれや両手につつむ旅の顔 草間時彦
冬ざれて如来の耳のうつくしき 佐野青陽人
冬ざれや雨にぬれたる枯葉竹 永井荷風
冬ざれや翼小さき燭天使 永方裕子
冬ざれや卵の中の薄あかり 秋山卓三
冬ざれや目を閉ぢてゐる烏骨鶏 角田悦子
冬ざれやころゝと鳴ける檻の鶴 水原秋櫻子
冬ざれのくちびるを吸ふ別れかな 日野草城

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