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激しい内戦が続く1930年代のスペイン。人里離れた荒野に建つ孤児院へ一人の少年が連れてこられた。少年カルロスに与えられたベットは"12番"。そのベットはある日忽然といなくなった少年サンティが使っていたベッドだった。やがてカルロスはサンティの霊に悩まされるようになるが、彼が自分に何かを訴えていることに気がつく…。
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日本人になじみの薄い「スペイン内戦」。ボク自身もほとんど知識がない。
「民主政権と保守勢力(フランコ将軍率いる軍閥)との争いであり、その弾圧の凄まじさゆえ多くの国民が犠牲となり、今もその傷跡は強く残る。」この程度の知識。
そしてこの『デビルズ・バックボーン』、翻訳すれば「悪魔の背骨」である。相当恐ろしげなタイトルであり、パッケージも相当なもの。ところが観賞してみるとかなり毛色が違っている。日本での上映前の扱いが完全に心霊ホラーのノリであったため、そのへんを期待して観てしまった人(me too)は肩透かしをくらうかも。実はこれ当時のスペイン情勢の風刺映画である。
確かに幽霊が出てくるのであるが、それは戦時下における身勝手な大人の犠牲となった子供の霊であり、恐ろしさよりも哀愁を漂わせる。幽霊と子供達はついに大人への復習を成し遂げるのであるが、それにより得たものは空虚な気持ちだけ。悲しい人間の性を、大人の視点、子供の視点、そして死者の視点も交えて巧妙に組み立てていく。
合わせて映像作品としても見逃せない。
抜けるような青い空。麦畑に延々と続く道。投下されたままの不発弾。夜の雨。すべてが美しく写実的でありながら現実感を感じられない不思議な印象を残す。また幽霊(サンティ)の描写が特に注目に値する。メイクした少年俳優をCG加工したものであるが、溺死してしまった幽霊を、あんな手法で表現するなんて。。。あ~、言葉で表現できずもどかしい。それ観るだけでもTSUTAYAで手に取って欲しいぐらい。
ホラーとサスペンス、社会風刺と人間ドラマが巧みに合わさった秀逸な脚本。あんな題名がついていることもあり、逆に視点がボケてるとの批判も多いようであるが、これまでにない不思議な空気感の映画である。さらに深く味わうためスペイン内戦についてもっと調べてみようと思う。
評価:★★★★☆
あと、日本ではあまりお目にかからないスペイン映画。ボクのオススメは『オール・アバウト・マイ・マザー』と『海を飛ぶ夢』。スペイン映画観賞の入口としてご覧いただければ幸い。後者は入口にしては重すぎますがw
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