宗兼明香・南正人・高槻成紀
長野県東部の御代田町のカラマツ林に生息するテン(ニホンテンMartes melampus)の食性を糞分析法により明らかにした.評価は出現頻度法とポイント枠法の占有率によった.平均占有率は,春には哺乳類(64.1%),夏と秋には果実(夏は65.3%,秋は78.0%)が多かった.種子の出現からわかった果実利用は月ごとに変化し,春にはミズキなど,夏にはサクラ属など,秋にはマタタビ属やアケビ属などが多かった.昆虫は夏でも4.9%に過ぎず,他の地域より少なかった.これは本調査地に果実が豊富なためと考えられた.頻度法による評価では平均占有率が小さかった昆虫や葉が過大に評価された.占有率−順位曲線からは平均値や頻度法ではわからない,食物の供給量とテンの食物選択性を読み取ることができた.テンに利用された果実には林縁植物が多いことからテンが林縁植物の指向性散布をする可能性が示唆された.

調査地
表1 テンの糞組成


各季節の主要食物の「占有率ー順位」曲線
一部の個体しか食べることができないとL字型になる

主要種子の占有率の月変化
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