2019年12月5日に小下(こげ)沢でシカによる植物への影響を観察したので報告しておく。
<台風19号の影響>
中央高速の入り口から小下沢を歩いたが、台風19号の水害のため大きく様相を変えていた。林道は大きくえぐられ、沢の中の土砂が流されて底の岩盤が見えていた。沢沿いの樹木は土砂が流されて太い根がむき出しになっており、倒木もあった。直径50cmほどのイタヤカエデが林道側に倒れて、通行のために幹が切られていた。沢沿の林道を進むと、枝沢を横切るが、その枝沢も土砂が流れ落ちて大きな礫が林道を塞いでいた。あとで行ったベース南側の沢も大きな被害を受けており、入り口の右側にあった水場とそこにあった石碑も流されたようで、石碑は改めて立てられており、水場は復旧のために「高尾の森 づくりの会」の人が土砂を除く作業をしておられた。その沢は50mほど登ると林道がなくなっていた。
<シカの食痕>
「高尾の森を守る会」のベースの北の斜面を登り、狐塚をへて林道を進んで折り返した。ベース北側の斜面は杉植林で下生えにはアオキが多かった(図1)。

図1. スギ林の景観
案内いただいた山崎勇さんによれば3週間前にも来たが、その時はアオキに食痕はあったものの、探せばある程度だったということだが、今回はむしろ食痕がないものを探すのが難しいほどで、山崎さんも驚いておられた(図2)。

図2. スギ林のアオキ
アオキは葉だけでなく枝や茎も緑色でシカにとってはおいしいのであろう、枝もよく食べられていた(図3)。

図3. アオキの食痕
中には直径20mmほどもあるかなり太い幹が途中でおられているものもあった(図4)。

図4. 幹を折られたアオキ
道の脇を観察しながら歩いたが、食痕は以下に見られた(図5)。
イタヤカエデ、イノコズチ、ウリノキ、カラスザンショウ、コアカソ、fゴンズイ、タマアジサイ、ヌルデ、フユザンショウ、ミズキ、ミヤマフユイチゴ、ムラサキシキブ

図5. 食痕が認められた植物
現段階でははっきりしないが、以下の植物は明らかにシカが食べ残しており、今後他の植物が減少する中で相対的に目立つようになることが予測された。
シロヨメナ、マツカゼソウ、テンナンショウ類、シダ類(オオバイノモトソウ、ベニシダなど)
<まとめ>
山崎さんたちが継続撮影しておられるセンサーカメラの記録からもシカの撮影枚数は毎年倍増しており、今年もすでに昨年の2倍を上回っている。そしてこの1ヶ月で急激にアオキへの食圧が強くなっており、この冬にさらに強い影響が及ぶことは確実と懸念される。シカの影響は高尾山にも波及することになるが、その程度がどの程度であるかを注視する必要がある。