高槻成紀のホームページ

「晴行雨筆」の日々から生まれるもの

タヌキの糞からイチイ

2019-11-09 21:14:22 | 研究
アファンのタヌキの糞からイチイ
 今年(2019年)の10月のタヌキの糞を分析していたら、サルナシやケンポナシとともに見かけない種子が出てきました。やや弾丸状に先が尖っています。草本の種子ではなさそうです。どこかで見たような気もしますが、知らないので、図鑑の初めからチェックし直しなのでなかなか大変です。種子の図鑑は3冊あって、一通り見ましたが、該当なしです。ずっと見ていって、最後の方になると単子葉植物のランなどになるので
「あれ、該当なしだなあ」
とがっかりします。主だった樹木のあたりは丁寧にみましたが、該当するものがありません。
 困っていましたが、別の機会に気を取りなおして図鑑を開き、最初のほうにある裸子植物もチェックしたら、キャラボクがちょっと似ていました。しかしキャラボクは黒姫にはありません。でも似ています。それでハッとしました。キャラボクに近いイチイが出ていました。そういえばイチイはアファンの森の近くの農家の生垣で見たことがあります。改めて図鑑をよくみるとそっくりです。以前に採集していた標本を見たらぴったりでした。間違いありません。


タヌキの糞から検出されたイチイの種子


 多肉果といえば広葉樹と思いがちで、針葉樹という発想がありませんでした。針葉樹といえば松ぼっくりやモミなどの毬果を連想してしまい、図鑑をみるときも裸子植物のページは身を入れて見ていなかったと反省しました。
 林では見たことがないので、タヌキはどこかの農家まで出かけて落ちていたイチイの「果実」を食べたものと思われます。いや、正確にいうと果実ではなく種子の仮種皮が肉質に肥大したものです。


イチイの「多肉果」


コメント
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