先の北海道への旅の道中読み終えたのが、「悪魔の寵児/横溝正史著」です。
行き帰りの船内で半分ずつ読みました。帰宅後外していたカバーを取り付けた際、
「こんな登場人物いたっけかな?」と思ったのが、外国人風(南方系、あるいは
アフリカ系?)に見える男です。これが人形師・猿丸だと気づくまでだいぶかかり
ましたよ。絵を担当した杉本一文さんの目には、猿丸の姿は、こんな筋骨隆々の
外国人っぽい容貌に映ったのでしょうか。
~寵児は当時、名作「悪魔の手毬唄」と並行して雑誌連載されていたことに
まず驚きます。~手毬唄は、戦後すぐに発表され好評を博した一連の本格推理
もの(本陣殺人事件、獄門島などなど)のテイストを久々復活させた傑作で、
対して~寵児は、その頃横溝さんが多数発表していた大衆向けの怪奇ロマン色
の強い作品です。両作品の振り幅があまりに多きすぎて、それらが同時期の作品
とは、なかなか理解が追いつきません。格調高い文章にトリックを散りばめた
完成度の高い~手毬唄に対し、~寵児は一応推理小説の範疇を保ち、死体喪失
など異彩を放つ展開を見せつつも、エログロ専行気味なのは否めません。
それでも食傷させず読ませるのは、横溝さんのお手並みの鮮やかさでしょう。
金田一耕助は早くから登場するもあまり目立った活躍はできず、関係者が
容赦なく次々血祭りに。犯人以外ほとんど誰もいなくなる展開は、さすがに
どうかと思いますよ、金田一さん。
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