旅にしあれば

人生の長い旅、お気に入りの歌でも口ずさみながら、
気ままに歩くとしましょうか…

六色の蛹

2024-08-17 18:52:00 | 図書館はどこですか




7月31日付け朝日新聞夕刊で紹介されていた「六色の蛹(さなぎ)/櫻田智也著」
を読むことができました。今回は、予約したタイミングが良かったためか、比較的
早めに順番が回ってきました。本書はタイトルから連想されるように、短編六編で
構成されており、最終章はエピローグ的な掌編、実質五編と考えていいでしょう。

探偵役の魞沢 泉(えりさわ せん)は昆虫好きの心優しい青年という設定なので、
短編いずれにも昆虫のエピソードが絡むのと、各話テーマとなる色を前面に押し出す
ことで、連作短編としてシリーズ色をより鮮明にしています。昆虫が取っつきに
なっていたりはするものの、メインとなる題材は「猟銃」「土器」「花」「音楽」
など多岐に渡り、それに臆することなく正面から挑む魞沢の知識量と神出鬼没ぶり
が目覚ましいです。魞沢は流浪の民なのでしょうか? 定職についているようで
なく、自分の興味ある事柄にひたすらまい進するさまに、個人的に共感は覚えます。
魞沢を主役に据えたシリーズ第三弾とのことで、前二作には、彼の経歴などを紹介
したくだりがあるのかもしれません。

短編という構成上、各話登場人物少なく物語が進行するので、ポインセチアが鍵と
なるエピソード『赤の追憶』などのように、トリックというか、結末への展開が
なんとなくわかってしまう物語もありました。このあたり、最近「探偵小説の鬼」
と化している私の審美眼がいよいよ目覚め始めた成果なのかもしれないですがね。

鋭い推理で犯人を追い詰める一方、罪びとの心に寄り添うような魞沢の気遣いが
すべてのエピソードで見え隠れし、いずれも比較的優しい結末を迎える読後感は
悪くなく、いずれ近いうち、前二作も読むことになるかもしれません。


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