
なぜかLDソフトが発売されていなかったテレビ版のファーストガンダム、待ちわびていた
ファンがこぞって購入したでしょうから、かなりのセット枚数が売れたと想像します。しかし、
いまだにこの企画商品を手元に残している方は少なくなったと思われます。なにせそもそも
LDソフトはかさばって場所をとる上に、LDの規格自体がDVDなどの高密度メディアへ
移行したことで役割を終え、再生機器の新規販売もずいぶん前にすでに終わっています。
のちにDVDセットなどを購入して乗り換えた方や、結婚や引っ越しを機に記録メディアへ
移した上でLDを廃棄処分した方も多くいたのではないでしょうか。かさばるLDは、
パートナーなど興味のない第三者からは邪魔者以外のなにものでもないですからね。
LDのジャケットや付属のブックレットはゴージャスで捨てがたい魅力がある一方、
やがてDVD化されるなどし再発売された作品については、本体のソフト自体にいまや
商品価値はほぼゼロです。時代のあだ花ともいえるレーザーディスクの末路ですが、
いろんな技術や規格が次々と生まれていた(しかもその多くが日本企業からの発信)時代に
感受性の高い若い時を過ごせたのは今思うと幸せでした。陳腐で大げさな言い方ながら、
「夢」とか「未来」とかを垣間見ていた気がするんですよ、それらの技術革新から。
上巻のそれぞれのジャケットイラスト。個人的な好みから、美形キャラのセイラさん、
ハモンさんを中心に配置してみました。
この手のブックレット恒例の富野由悠季総監督のインタビュー記事。
安彦良和さんのインタビューと一連のイラストを掲載。お話の中でオリジンのことには
まったく触れられていません。安彦さんの手によるファーストの漫画版「機動戦士ガンダム
THE ORIGIN」の雑誌連載開始が2001年からということは、このインタビューから
わずか3年後、この間で漫画執筆へと急速に気持ちが傾いていったことになりますか。
大河原邦男さんのインタビュー記事とイラスト。
このあたりまでが上巻添付のブックレットの内容。
下巻のジャケットイラスト。物語後半はやはりララァが中心。
下巻のブックレットの目玉は、富野監督自身による物語中盤から52話までのプロット全文。
当初は4クール全52話での放映予定だったため、43話で打ち切り、短縮されたことで、
いくつかのエピソードや登場人物などが削除されることになったのがよくわかる貴重な
資料です。短縮された43話版を見慣れた今となっては、プラスの9話分で長引くと、
かえってストーリー展開が間延びされるような印象を受けてしまう一方、もしも当初の
計画通りに話数を重ねていれば、ファーストガンダム(1年戦争)がより深みを増して
描かれていただろうことを考えると、途中打ち切りの憂き目は、やはり残念でなりません。
ボックスセットのイラストを担当された安彦良和さんはじめとする皆さんのプロフィールなどを
紹介したページ。表紙の画もすべて再録されています。
今回の再視聴(大雑把な)で、改めて時代を感じされられたひとつに、声優さんが掛け持ち
出演される機会が多々目につく(耳につく)ことでした。レギュラー出演者は、敵味方側
(地球連邦軍、ジオン公国)にかかわらず声を当てているし、準レギュラーやゲスト出演された
方々も、容赦なく複数の声を担当させられています。もちろん今時のアニメでも見られる習慣で
しょうけど、その頻度が半端なく多いように感じるんですよね。おそらくは、契約を結んでいる
(出演依頼している)声優者数がそもそも少ない上に、戦争ものということで敵味方合わせ
登場人物(兵士役など特に男性)が多数に上り、ほかの作品以上に目立つのだと思われます。
中でも一番便利に使われているのがナレーターとしてクレジットされている永井一郎さんで、
連邦、ジオン、さらに市井の人々に至るまで、手あたり次第声を当てまくり、元々声色を極端に
変えない永井さんですから、担当されていることはすぐにわかるのですが、雰囲気や喋り方など
を巧みに演じ分けられるので、ほとんど違和感なく聞いていられるのがさすがなんですよね。
後半登場するララァ・スン役でおなじみの潘恵子さんが、実は物語前半にガルマ・ザビの
恋人イセリナ・エッシェンバッハ役で登場していたことに、遅ればせながら今回の再視聴で
初めて知った次第です。シャアに謀られ戦場に散ったガルマ、その恋人が、次はシャアの同志
(恋仲に近いような存在)となるのですからおもしろいですよね。
第11話『イセリナ、恋のあと』は劇場版ではほぼカットされたので、イセリナの死は映画では
描かれていません。彼女はガルマの死を嘆き、彼を討った地球連邦軍戦艦・ホワイトベースに
仇討ちを企てます。その頃ジオン本国では、二人の恋のいきさつ(そしてもちろんイセリナが
復讐しようとしていること)などいざ知らず、ザビ家末弟の彼の死を国威高揚へ仕向けるべく、
長兄ギレンが国葬へと導くよう父であるデギン公王の説得を続けている最中。各々まったく違う
思惑で、ガルマの死が語られ、その後が同時並行して描かれている演出が鳥肌ものなんですよね、
今回改めてすごいなと思いましたよ。
イセリナは味方で友人でもあるシャアの裏切りがガルマを死に追いやったことは知る由もなく、
直接手を下したホワイトベースの乗組員に激しい憎悪の念をぶつけますが力尽き、ガルマの
あとを追うように散ります。ただただ生き延びたいがため、目の前の敵を倒すことに必死の
ホワイトベース・クルーらは、討ち取ったガルマがザビ家の一党だということすら知らず、
身に覚えのない恨みをかうことになるこの見ず知らずの女性が、なぜ自分たちを「仇」と呼ぶ
のかも当然わからないまま、うら若き美女の亡骸を埋葬する場面で11話は幕を閉じます。
(ああ、アムロ、刻(とき)が見える… ララァとはいつでも遊べるからこの連載を終わります)