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目の前を通り過ぎる膨大な量の活字の中から、心に引っかかった言葉をチョイス。
その他、音楽編、自然編も有り。

イトカワの秘密 60億Kmを旅して-「はやぶさ」の帰還、そして新たなる旅立ち-(その5)

2010-07-24 06:25:54 | 自然の海
                ※ イトカワの地質図
                  (TOP画像提供:JAXA)


日時:平成22年7月8日(木) 午後4時~5時
場所:NEC関西支社(大阪市OBP内)
講座タイトル:NECソリューション公開講座 in 関西2010
       「『はやぶさ』の帰還、そして新たな旅立ち」
話者:小笠原雅弘(日本電気航空宇宙システム株式会社 
                   宇宙・情報システム事業部)

サブタイトル:
 2010年6月13日、深夜。
 ウルル・カタジュの上空を二条の流れ星が西から東へ流れた。
 一個は途中で爆発を繰り返しながら砂漠の闇に消えていった。
 そして小さな輝きだけが残った。
 60億Kmもの旅をして「はやぶさ」が届けてくれたものは…



■イトカワの秘密

ここで。
氏の話は、はやぶさそのものから一旦離れて、彼を取り巻く状況へと
言及する。

これまでのはやぶさが打ちたてた数々の功績によって。

2006年に、National Space Society(NSS)によりSpace Pioneer
AwardをHayabusa Project Teamが受賞した。

このときの模様は、米国での授与式に参加した川口プロマネによって
JAXAのHPにコラムがUP
されている。

それによると、同時期に受賞したのはNASA長官や民間宇宙機として
有名なSpace-Xの開発に携わった人等であり、更に同賞の兄弟賞として
設けられたMemorial Awardについては、世界で始めて音速の壁を突破
した実験機X-1のパイロットであるチャック・イェーガー氏といった
錚々たる顔ぶれであって。

そこに、このプロジェクトが肩を並べることが出来たことは、本当に
光栄だったと、川口プロマネは述懐している。

(写真は、その際の賞状とトロフィー)
(画像提供:JAXA)


その後。
2006年6月2日発売のSCIENCE誌において。
はやぶさの特集が組まれることとなる。

SCIENCE誌に論文が掲載されるだけでも、世界の科学者
にとって大変な栄誉なことなのに。
特集まで組んでくれたとあれば、如何にSCIENCE誌が
はやぶさの偉業を高く評価してくれていたかが分かろうという
ものである。

今回の特集号刊行に向けて、編集長であるケネディ博士が
JAXAに寄せた手紙
でも、その意は窺い知ることが出来る。

特集号刊行のことを告げるJAXAのHPのコメントが、ものすごく
淡々と記述されてはいるのだけれど、その裏に喜びが満ちている
ように思えるのは、僕の気のせいに違いない(笑)。


ちなみに。
この特集号に掲載された7本の論文のうちの3本に、NECの
エンジニアの名前が共同執筆者となっていることを、誇らしげに
氏は告げていて。

その表情を見ていると、就職活動中にこの会社を知っておきたかった
と、切々と感じてしまった次第である。

だが。
そうなると、そもそも経済学部出身という純粋な文系脳の基本構成から
見直す必要があるため。

人生におけるターニングポイントの設定は、更に遡って高校2年の
コース選定時にまでいかないといけないことに気付いた次第である。

まあ、気付いたからといって、その道を選ぶことが出来る保障は無い
のだけれど。

好きと出来るは、違うものなああ。

いや、好きこそものの上手なれという言葉もある。

その時点から目覚めていれば、一念発起して理系脳へと基本的構成の
組み換えを行うこともまた、可能だったに違いない。

いや、人生において、遅すぎるということは無いはず。

今からでも頑張って勉学に取り組めば…と、思考の無駄遣いをしている
うちに、氏の説明は進んでいくので気持ちをスライドへと振り戻す。


※ 掲載された論文の概要ならびに著者は、JAXAのHPにて
  確認することが出来る。

  こちらでは、論文数は6本。
  NECの技術者の方のお名前が確認できるものは、そのうちの
  二つとなっている。
 
  まあ、大学やJAXAへ出向されている場合もあるだろうからね。

  参考までに、JAXAのHPにあった論文名を紹介しよう。

  1 「はやぶさ探査機によって観測された
               ラブルパイル型小惑星イトカワ」
     川口プロマネをはじめ、上杉氏、吉川氏といった錚々たる
     執筆陣である。

  2 「はやぶさから見た小惑星25143イトカワの詳細画像」
     テラキンこと寺薗氏のお名前が!

  3 「小惑星イトカワの全体形状と自転軸の観測」
     この論文では、NEC東芝スペースシステム㈱、
     NEC航空宇宙システム㈱の二社の社名が確認できる。

  4 「はやぶさ探査機によるイトカワの質量と局所地形の観測」
     こちらでも、NEC航空宇宙システム㈱の社名が!

  5 「はやぶさ探査機による小惑星イトカワの
                    近赤外線分光観測結果」
  6 「はやぶさ探査機による小惑星イトカワの蛍光X線分光観測」
     この二つの論文概要を読んで。
     以前から疑問に思っていたイトカワがLL5-6と表記
     される意味を、やっと知ることが出来た!
     ケイ酸鉄やケイ酸マグネシウム等の石質(Stony)を主成分
     とする小惑星がS型である(SはstonyのS)。
     その中でも、コンドルールという球粒状構造を持つ隕石が
     コンドライトと称せられる。
     そのコンドライトの化学的組成によってアルファベットの
     部分が、岩石的組成によって数字の部分が決定する。
     LL5-6を紐解けば、普通コンドライトの鉄分少な目の
     化学組成を持ち、コンドルールの含有が不明確な岩石組成
     であるということが分かる。

             (グラフ提供:JAXA



ここで、氏の説明はイトカワの組成に及ぶ。
論文1の表題にもあるような、ラブルパイル構造を持つイトカワ。
要は、中身がスカスカということである。

この構造特性を持つ小惑星の存在は。
40年ほど前に、ある科学者によって提唱されたものであり。
それを、今回の調査ではやぶさが初めて実証したということである。

ラブルパイルとは、宇宙空間において、母天体の衝突等によって誕生
した岩塊同士が、その微細な引力によって緩やかに結合して誕生した
ものであり、極低重力しか持ち得ないために圧縮が発生せず、中心部
までスカスカなままの状態を保持している天体である。


ちなみに、イトカワの場合は。
はやぶさによる重力検知と長径短径の測定から、割り出されたその
密度は、1.9g/cm3。
地球の場合は、5.5g/cm3なので、約1/3程度の密度しか
ないことが分かる。

こうした観測実績と、それに伴う海外賞の受賞に後押しされるように、
2007年には文部科学大臣表彰 科学技術賞(研究部門)を受賞。

(海外で賞をもらえると、やっと日本でも受賞できると苦笑していた
 氏の述懐が、印象的だった。
 もっと日本の褒賞制度も、独自にいいものを見出す目を持って
 欲しいものだと、痛切に思う)

また、前後するが。
NEC社内においても、2006年度NEC/CS 社長賞を受賞。
その際のメンバーは、「はやぶさ6人のサムライ」と言われたそうな。


※ このCSが何を意味するのかが、よく分からなかった。
  CS(顧客満足度)じゃないよね?
  航空宇宙システムの略でも無いし。


ともあれ。
こうした、華々しい成果を挙げたはやぶさであるが。
その帰路は、大変な困難に見舞われることとなる…。

(この稿、続く)



見えてきた 太陽系の起源と進化 (別冊日経サイエンス 167)
日経サイエンス編集部
日本経済新聞出版社

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3 コメント

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ありがとうございました (小笠原 雅弘)
2010-07-25 01:16:53
8日の講演会熱心に聴いていただいてありがとうございます。是非最後まで紹介願います。短い時間ですべてをご紹介できませんでした。NECの技術者たちはNEC特設サイトで大いに語っています(四話までアップしました)こちらもご覧ください
返信する
こちらこそです (MOLTA)
2010-07-26 00:21:48
うわあ。
まさか、ご本人のお目に留まるとは!
お恥ずかしい限りです。

意図と違うとか、色々と苦笑される部分もあると思いますが、ご笑覧下さい。

あまりにも目に付くところがあれば、お教えいただければ幸いです。

励ましを得て、何とか最後まで漕ぎ着けます!
返信する
Unknown (シャドー81)
2010-07-26 08:22:42
すごい。ご本人、公認じゃないですか!

これも、MOLTAさんの活動の成果ですね。

あまりにも目に付くところね・・・なに、聞いてない?(笑)
返信する

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