社説:普天間問題 「そこにある危険」除け
毎日新聞 2012年12月31日 02時31分
沖縄・米軍普天間飛行場の移設問題では、安倍自公政権も、日米両政府の合意通り名護市辺野古への「県内移設」を目指すという。
安倍晋三首相は就任直前、「基本的には辺野古に移設していく方向で地元の理解を得るため努力していきたい」と語った。
しかし、その後も、仲井真弘多沖縄県知事は「県外移設を求める私の考えは変わらない。県議会、県内全41市町村の首長や議会がすべて(辺野古移設に)反対だ。政府が仮に工事をしようとしてもスムーズに進まない」と述べている。
防衛省は辺野古移設に必要な知事の公有水面埋め立て許可に向けた申請準備を進めているが、知事や名護市長をはじめ、沖縄の理解が得られるとは到底思えない。
衆院選で自民党は沖縄県の4小選挙区のうち3選挙区で勝利し、残る一つも比例代表で復活当選した。いずれの候補も党沖縄県連も「県外移設」を公約に掲げていた。
石破茂自民党幹事長は「最終的に県外移設というゴール」を目指すのだから「党本部と沖縄県連に齟齬(そご)はない」と言う。だが、県連や候補者の「県外移設」公約は辺野古移設後の将来の目標だった、というのは沖縄の有権者を裏切る詭弁(きべん)である。
沖縄では、「県外移設」が知事、自民党を含めた県議会、各自治体の総意であり、辺野古移設の見通しが立たないという現実は変わらない。とすれば、安倍政権がまず取り組むべきなのは、移設が実現するまでの間、普天間飛行場周辺住民の危険性を早急に除去・軽減する手立てを講じることだろう。これは、鳩山政権による「普天間の迷走」以降、問題解決に消極的になった民主党政権が放置してきた課題である。
普天間飛行場は宜野湾市の人口密集地にあり、周辺には約9万人が居住し、120以上の公共施設が張り付いている。墜落など万一のことがあれば重大事故につながる。
沖縄県によれば、10月に普天間飛行場に配備された垂直離着陸輸送機MV22オスプレイについて、安全確保のため日米両政府が合意した運用ルールに違反するとみられる飛行が11月末までに318件あった。政府は違反の有無を検証し、違反があれば米側に厳重に改善を申し入れるべきだ。
安倍政権が検討しているオスプレイの本土への訓練移転は、沖縄の負担軽減に結びつくが、訓練にとどまらず、普天間飛行場の基地機能を分散移転すれば、周辺住民の危険性は大幅に軽減できる。
小野寺五典防衛相は普天間飛行場の固定化回避を強調している。同時に、「今そこにある危険」を除去する方策を真剣に検討してほしい。