「安全保障法制整備の具体的な方向性」に関する与党合意について(談話)
社会民主党幹事長 又市征治
1、自民・公明両党は3月20日午後、安全保障法制に関する協議会で、法整備の具体的な方向性について正式合意した。昨年7月の集団的自衛権行使容認の閣議決定を受けた具体的な法整備の方向性を確認したもので、政府はこの合意に即して法案化をはかり、本年5月半ばまでに国会に提出する予定である。我が国の平和主義の根本に係わる重大な問題が、国民不在のまま与党間の不透明な検討作業によってすすめられることは誠に遺憾である。
2、そもそも集団的自衛権の行使容認の閣議決定は、立憲主義を否定し平和憲法の原則を踏みにじるもので、社民党として強く抗議し、撤回を求めてきたところである。この不当な閣議決定を踏まえた安保法制の整備自体が問題であり、とうてい容認することはできない。平和憲法の徹底した平和主義の原則を、「積極的平和主義」と称する「戦争による安全」保障政策に転換しようとする、安倍内閣の政策転換と今回の与党合意に強く反対する。
3、具体的には、日本が攻撃されていないにもかかわらず他国の戦争に加わる集団的自衛権行使について条文に「過不足無く盛り込」み、国際貢献を名目とした他国軍の戦闘支援について「法整備を検討」と海外派兵の恒久法制定に踏み込んだ。周辺事態法の「目的規定を見直」し地理的制約を取り払う抜本改正の方向性が示されている。PKO協力法や自衛隊法を改正し、平和協力活動の業務内容や武器使用権限の拡大、船舶検査活動時の自衛隊部隊の権限拡大の検討等も明記されている。平和憲法に基づいて戦争への関与を厳しく制限してきた日本の法体系を全面的に転換し、政府が国の存立に係わると認定さえすれば、自衛隊の活動の制限がほとんど取り払われる内容となっている。
4、平和の党を自認する公明党は、安倍内閣の方針に一定の歯止めをかけたと「成果」を主張するだろうが、今回の合意には具体的な縛りはほとんどなく、「歯止め」の記述はあいまいなものばかりである。2月13日に再開された与党協議は、政府の案を公明党が押し返すパターンで進んだが、最初に政府が公明党の許容範囲を超える提案をしたうえで「譲歩」を重ねるという形で「見せ場」を演出したものだ。政府・自民党がしっかり「実」を取っている「出来レース」にほからない。
5、安倍総理は、「切れ目のない」安全保障法制が必要というが、平時の治安維持と武力行使との間には明確な切れ目を設けて、慎重に判断するのが当然である。自衛隊が武力で対応するのは最後の手段としてきたのが平和憲法の大原則であり、「切れ目」なしに軍事力行使が行なわれ、「歯止め無く」武力を行使させることにはとうてい同意できない。平和国家の根本にかかわる問題を、数に頼んで一会期の国会の拙速な議論で行なおうとすることは暴挙と言わざるを得ない。社民党は、平和憲法の大原則に立ち、院内外を通じて徹底した議論を求めていくものである。