(以下レイバーネットから)
会社から重要資料を開示させる~「非正規差別撤廃」メトロコマース第3回裁判
9月8日午後4時から、東京地裁で非正規差別撤廃を求める東京東部労組メトロコマース支部の第3回裁判(吉田徹裁判長)があった。法廷は715号で、少し広めでゆったりした感じ。傍聴席は52席ある。開始10分前には、支援者で傍聴席は埋まり、入りきれない人が10人以上も出た。原告席には弁護士4人と原告のメトロ売店員4人が座る。すべて女性だ。原告席が全員女性という光景は筆者は初めて見た。一方被告席は黒いスーツ姿の2名の男性弁護士のみ、東京メトロの代理人である。しかも、かれらは開廷ギリギリ1分前に入廷するという「やる気のなさ」を見せていた。この日の裁判は、準備書面の確認が主で、次回の日程を決めてわずか18分で閉廷した。
その後、隣りの弁護士会館で報告会が開かれ、50人以上が集まった。同じ「労働契約法20条」による差別撤廃裁判を起こしている郵政労働者も多数駆けつけた。
裁判はあっけなかったが、じつは大きな成果があった。それは第2回裁判で会社側を徹底して追及した結果、会社側が9月1日に「正社員の賃金体系」「就業規則」などの資料を開示してきたことだった。東京東部労組・須田光照書記長は「これまで5年間団交で資料開示を求めてきたが、いっさい拒否されてきた。それが今回裁判を起こしてやっと入手できた。その資料でわかったことは、正社員には実務年数や人事考課で昇給していく職務給、年齢とともに月収が1000円ずつ上がる年齢給、資格・成果手当、住宅手当、家族手当などが支給されていることだ。これらは契約社員Bには一切支給されていないものばかり。これら契約社員との差別を裏付ける資料を分析して、次回裁判以降、われわれの主張を全面的に展開していきたい」。
当該の4名のメトロコマース組合員が一人ひとり感想と決意を述べた。疋田節子さん(右から二人目)は「私にも息子がいる。5千円でも1万円でも家族手当があったらどんなに助かることか。家のローンだってある。同じ仕事なのだから同じ待遇をしてほしい。この裁判は絶対に負けられない」と訴えた。
後呂良子委員長(写真上)は「だれも傍聴に来てくれないかもしれないと思って、きのうは眠れなかった。でもこんなに来てくれて本当にうれしい。休みをとって来てくれた人も多いと思うが、裁判があっというまに終わり申し訳ない。民事裁判ってこんなものなのか。もっと時間をとって、法廷で当事者が話せるような裁判に変えていきたい」と述べた。また「最近、メトロで働く電車運転士が私の売店に激励に来てくれた。DVD『メトロレディーブルース』を観たという。本当にうれしくて元気が出た」という話を披露した。会議室にぎゅうぎゅう詰めの支援者からは大きな拍手が起きた。メトロコマース支部が「非正規差別撤廃」裁判を始めたことが、メトロ内外にジワジワ広がっていることを窺わせた。
次回第4回裁判は、10月23日(木)11時30分、東京地裁705号法廷と決まった。会社側資料をもとにして、非正規差別実態の告発と弁論がいよいよ本格的に開始される。また11月22日には都内で『メトロレディーブルース』大上映会が企画されており、世の中に向けて大きく発信していく準備も始まった。(M)