解雇特区提案 ディーセントワークどころではない
政府の産業競争力会議で9月20日、「国家戦略特区」において実施する規制緩和の検討項目が提示された。
その内容は、特に雇用分野ですさまじい。骨子は①契約で労働契約法に定められた有期労働契約通算5年超の有期雇用労働者の無期雇用転換申し込み権を労働者が放棄することを認め、「使用者側が、無期転換の可能性を気にせず、有期雇用を行なえるようにする」②契約で解雇ルールを明確化できるようにし、仮に裁判になっても契約条項が裁判規範となることを法で定める③一定の要件を満たす労働者を時間外・休日労働規制の対象から除外する。
言うまでもなく、憲法はその25条で「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を保障し、27条で「賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める」とし、これを受け労基法1条は「労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない」「この法律で定める労働条件の基準は最低のもの」と規定している。また改正労契法は、裁判判例によって確立された解雇権濫用(らんよう)法理を法定化した。これらは全部、なかったことにしようというのである。
同会議特区ワーキンググループ(WG)は、「雇用は特区になじまない」との厚労省見解を「こうした理由で『なじまない』と言ったらおよそ特区は成立しない」と一蹴。懸念があるなら「不当労働行為や契約強要・不履行などに対する監視機能強化」をすればいいとした。事前規制から事後チェックへ、というお約束の世界なのだろうが、人員不足が慢性化している労働基準監督行政の現状を理解しているとは思えない。
政府会合に先立ち、大阪府・市は労働規制緩和の「チャレンジ特区」を提案した。橋下市長は「労働法で守られなくてもいいという労働者もいるはずだ」と言い放ち、地域間の労働条件切り下げ競争の先頭に立つことを宣言した。また規制改革会議雇用WGは、派遣法改正の厚労省研究会案ではまだ生ぬるいとして、独自の案を出すのだという。もはや規制緩和は言った者勝ち状況になっている。
日本で働く全ての者に普遍的に適用されるべき労働者保護ルールという原則をなげうち、グローバル資本主義下の「底辺に向かっての競争」に人々を駆り立てる。これが成長戦略だと言うなら、大げさでなく政府の正統性に関わる問題だ。