大沢在昌氏の2009年の小説。
とある港町に男がやって来る。
亡くなった母親がこの町の出身と言う事で訪ねて来たらしい。
男の苗字から6年前に死亡した大地主の親戚である事が判明する。
地主は独身で相続人がいなかったため遺言書により、
財産は町が引き継いでいた。
男は地主の父親が愛人に産ませた子供で、
地主にとっては腹違いの妹の子(甥)にあたり遺産の相続人になる。
町に一人しかいない弁護士が示した遺言書が本物であったのかも怪しく、
ひいては突然死した地主の死因にも疑わしい点があった。
この男の出現により静かな町が騒めき始める。
弁護士と親戚の市長、土建屋、地元のヤクザ、
土地を奪うためにやって来たリゾート会社。
定年間近の老刑事が署長命令で動き出すが、
実は地主の死因に疑いを持っていたため、
内心は面白くなってきたと捜査を始める。
相続人の男は母親がアメリカに留学した時に生まれたため、
日本の事情を知らず朴訥でとぼけたところもあるが、
プロレスをやっていたので喧嘩には強い。
関係者の間をうまく立ち回っていくと、
悪どい事をやって来た人々が次々とあぶりだされていく。
口封じのために抹殺されていく人、犯人は誰なのか?
悪人も含めてかなりの人間が抹殺されていくのだが、
それでいて嫌な感じがしない。犯人らしき人物は浮かび上がるのだが、
なぜ? どうして? と動機が最後まで判らない。
最終的には積み重なる恨みになるほどと思うのだった。