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カレーなる日々 / शानदार दिन

インドの日常を中心に日々を綴っています。

「叡智のひびき」中村天風

2025年07月28日 21時25分59秒 | 本 / BOOKS

2022年発行の中村天風の箴言(道徳上の格言や実践的教訓)を
注釈付きで説明したもの。

叡智」:物事の深遠な道理を見通し、悟り、わきまえることができる優れた知恵。

日々をおくるうえでの心がけと言えば簡単すぎるかなぁ。
人生哲学と言えば難しく聞こえるし、
とっつきにくいけど。

人類全員が書いてあること全てをやり遂げようとすれば、
世界平和も実現できるだろうし、
争いごとも妬みや恨みもなくなるんだろうけど。

私利私欲に走る人が多いし、
自分が良ければ他人は関係ないと思う
思いやりのない人も多いからなぁ。

まぁ善人になろうとまでは思わなくてもいいけど、
悪人にならないように気をつけるだけでも、
少しは世の中が良くなるんじゃないかな。

私はポジティブで前向きで、
いつもニコニコしていて楽しそうな人に思われているみたいだけど。
それでいいかなと思う。

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「運命を拓く」中村天風

2025年07月13日 21時01分59秒 | 本 / BOOKS

なぜ今、この本を読んだのか。
それは大谷翔平の愛読書と書いてあったからだ。

中村天風(1876~1968年)とは、何者か?
ググってみると日本の自己啓発講演家、思想家、ヨーガ行者とあった。
え!ヨーガ行者とな。これは親近感を覚える。

さらに実業家、大日本帝国陸軍諜報員、玄洋社社員とあった。
孫文の友人であり、中華民国最高顧問の称号も持った。
天風会を創始し心身統一法を広めた。本名は三郎。

学生時代に喧嘩で相手を刺殺、
日清日露戦争当時は軍事探偵として活動・・・。
ますますもって何者かわからない。
とりあえず読んでみる事にした。

明治9年に国立印刷局の初代局長の息子として生まれたが、
福岡の親戚に預けられ6歳より剣術を始め、
近所のイギリス人から英語の手ほどきを受け、
中学校の授業が英語だったために英語に堪能となる。
柔道部のエースだったが、ライバル校の選手に出刃包丁で襲われ、
組み合っているうちに相手を刺殺してしまったが正当防衛となった。

明治25年に玄洋社の頭山満に預けられ頭角を現し、
16歳で陸軍の諜報部員となって中国に渡り中国語も堪能となり、
日露戦争当時に活躍した。
ところが結核を患い、病気の為に弱くなった心を強くするために、
アメリカへ渡り、さらにイギリス、フランスで哲学者や著名人に会うが、
目的は達せられず明治44年に日本に帰る事にするが、
その途中でインド人のカリアッパと言うヨーガ聖人に出会う。

その時のくだりがいかにもインド的で面白かった。
「お前は私に出会えて命が助かるのだから幸せだ。」と言われ、
どうせ助からない身だとカリアッパについてインドへ渡る。
2年半ほどインドの山奥で修業するのだが、またその辺りも面白い。

大正2年に帰国した三郎は銀行など財界で活躍するが、
大正8年に突然感じると事があり、「統一哲医学会」を創設。
インドでの精神修業から健康を取り戻し開いた悟りを元に、
街頭にて心身統一法を説き始めた。

昭和15年に天風会と改称。松下幸之助なども会員だったらしい。
昭和43年に死去、護国寺にお墓があるらしい。
近所だし一度訪ねてみようかな。

大谷翔平がどう感化しどう実践しているのかはわからないけど。
ヨーガに元を発した呼吸法や瞑想などがあったり、
ネガティブな事を考えず常にポジティブシンキングであるとか、
ヨーガ的と言うかインド哲学的な考え方とか、
私には納得というか理解できるところが多かった。

コメント (2)
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「勝負師の極意」武豊

2025年06月12日 21時44分59秒 | 本 / BOOKS

武豊、1969年(昭和44年)3月15日滋賀県生まれ。
父の邦彦は名人、ターフの魔術師と呼ばれた騎手で調教師であった事は、
うっすらとした知識として知っていた。
祖父の芳彦は北海道馬主協会の重鎮であった事は知らなかった。

と言う事で武豊はまさしくこれ以上ない血統で、
日本競馬会のサラブレッドなのだった。

1987年3月1日騎手デビュー、3月7日初勝利以来、
中央での騎乗回数25,108回、優勝4,579勝。
(2025年6月8日現在)
1988年菊花賞にてスーパークリークでG1初勝利、
19歳7か月23日でJRA史上最年少クラシック制覇。
この時の冷静な騎乗から天才と呼ばれるようになった。

1989年、3年目にしてJRA全国リーディングジョッキー獲得、
このあたりからスポーツ紙、競馬紙以外の雑誌やメディアに登場し、
武豊はその名を知られるようになった。

この年の夏からアメリカで騎乗し3戦目に初勝利を挙げ、
以降は年末年始や夏はほぼ毎年海外へ渡航し、アメリカ、フランス、
オーストラリア、ドイツ、イギリス、UAE、香港、韓国、
サウジアラビアの9か国で勝利を挙げている。

2012年から週刊誌で連載していた「勝負師の作法」から引用、
思い出をつづったエッセイ集。

騎乗した馬との思い出を中心に馬の特徴やレースの回顧、
どういう気持ちで馬と接し、どう騎乗したのか。
100頭100通りの個性的な馬たちに、どういう気持ちで接して、
馬の良い所を引き出すために、どう騎乗したのか。

この本で意外だったのは、馬との接し方を恋愛に例えていた事。
そんなキャラクターだと思っていなかったので驚いたなぁ。
別に硬派だと思っていたわけではなく、
ユーモアのセンスのある人だと知ってはいたけど。

レースの前は作戦を100~200通りくらい考えているんだって。
スタートから道中、一緒に走る馬がこう来たらこうする、
こうなったらこうだ、みたいな展開を考えてるそうだ。
騎手みんながみんなこうなのかは解らないけど。
勝つための作戦って大事。それはボクシングでも同じ。
勝負事だけでなく、仕事や恋愛(?)も同じか、笑。

今までで勝てないと思ったのは1度だけ、ナリタブライアンだって。

今から13年くらい前だから43歳くらいの時に書いているんだけど、
その時も、今より上手くなりたいと言う考え方があるから、
騎手を続けていると書いているし56歳の今でも変わっていない。
その気持ちがあるうちは現役を続けて行くと思う。
60歳はもとより、100回ダービーの時は64歳だけど、
まだまだいける。

たまたまダービーの騎乗を本人のジョッキーカメラで観たけれど、
驚くほど安定していた。全く上下動はなかったし、
それどころか左右に画面がぶれたのは3回くらいじゃないかな。
バックミラー着いてないのに・・・あんなに安定してるなんて。
恐ろしいほどの強靭な身体である。まだまだいける。
今年引退した大井の的場文雄さんは68歳だったし。

岡部幸雄さんに憧れててカッコいいと思っていたと書いてたけど、
岡部騎手がフランスで騎乗する事になった時に、
年下だけど先駆者の武くんに教えを乞うてきたところとか、
引退する時に「記録を塗り替えて申し訳ありません。」と言ったら、
「豊君に抜かれて嬉しかった。」と言ったところなんか、
本当にカッコいいと思った。

いずれ武くんの記録が抜かれる日がやって来た時、
武くんも言うんだろうな。
「〇〇君に抜かれて嬉しかった。」と。

どちらかと言うと私は武豊信者なのであるが、
(ずっと競馬をやっていたわけじゃないので・・・)
それほど感謝した記憶はないのである、笑。

覚えているのはナリタタイシンが目黒記念で復活勝利した事くらい。
最後の直線で最後方から一気に突き抜けた時は気持ち良かった。
まぁこれから感謝する日が来ることを心から祈っている。
武くん、頼んだよ。

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「馬を走らせる」小島太

2025年06月07日 21時43分59秒 | 本 / BOOKS

元騎手で調教師だった小島太氏が書き2006年に刊行された本。

1947年北海道生まれ、1966年騎手デビュー、
1996年引退し調教師となったので10年目に書いた本である。

そもそも競馬の事を知らなかったので、
読んでみて小島氏が武豊騎手のお父さん:邦彦さんの弟分だった事や、
武家に出入りしていて子供の頃から豊騎手とは馴染みだった事も知った。

騎手もそうだけど、調教師の事もほとんど知らなかったので、
この本を読んで少しはわかった。馬が好きでないとできない職業だ。
儲けるためにやっているのではない。馬が好きなのだ。
(と書いているけど、本当にそうなんだろう。)

365日24時間、管理馬の事を考え、馬中心の生活である。
小島さんは厩舎に住み込んで馬と一緒に生活し、
馬を我が子のようにかわいがり、どうすれば結果を出せるのか、
それだけを考えていたそうだ。
騎手時代は不良(笑)だったようだが、
調教師となってからはガラリと変わったそうだ。

厩舎を経営するために必要な事、スタッフや馬主、騎手との関係、
収入と支出、調教の仕方、世話の仕方、などなど、
全く知らなかった事が、解って来るのは面白い。

競馬は馬が主役。

100頭いれば100頭の性格、能力があり、
100通りの調教方法がある。レースでも能力に合わせて、
出走するレースを考える。馬主にプラスになる事を考えながらも、
馬の状況によって最も良い方向を考える。

そうだよね。100頭100通り。
人間も動物も同じ。

そんな事を考えながら眠りにつくのだった。

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「誰も書かなかった 武豊 決断 」 島田明弘

2025年06月06日 21時42分59秒 | 本 / BOOKS

野球で言えば大谷翔平選手、ボクシングで言えば井上尚哉選手。
ゴルフで言えば松山英樹選手あたりは現代のスーパースターだ。
先日お亡くなりになった長嶋茂雄さんもスーパースターだ。

競馬で言えば武豊騎手もスーパースターである。
スポーツ選手は活躍できる年数が限られているが、
ゴルフと競馬ば長く活躍できる。

武豊騎手と親交のあるスポーツライター島田明宏が書き下ろした本で、
なかなか知りえなかったエピソードがたくさんある。
本人が書いた本も読んでいるのだが、栄光の陰に挫折はつきもので、
40年にわたって勝負の世界で活躍し続けるには、
言葉では言い表せない努力と人並み外れた精神力が必要だ。

この本は2014年に刊行されたが、
武豊騎手は2010年にレース中の落馬で大怪我をし、
その後の3年間は低迷したが、2013年の日本ダービーで、
キズナに騎乗して優勝、長かった苦悩を抜けだす事が出来た。

アメリカを始めフランスやイギリス、香港でも騎乗しているが、
今ほど日本の馬も騎手も賞賛されておらず、
嫌がらせを受けながらも結果を出す事で信頼を得て行った。
この辺りは野茂英雄さんと共通するものがある。
2人は交流あるようでアメリカで会っていた事も書かれている。

武豊信者(笑)には絶賛される内容であるが、
やっぱり武豊は凄いと思わされた。

先日のダービーでは、これしかないと思う思い切った騎乗で、
サトノシャイニングで先頭を切ったが4着であった。
本人も悔しかったと思うが、私も悔しかった!
その後のGⅡ目黒記念を制して、またこれから勝ち続ける予感がした。

 

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「グリーン・レクイエム/緑幻想」新井素子

2025年05月22日 20時35分59秒 | 本 / BOOKS

屋久島から繋がる小説を検索していたら出てきた作品であるが、
全く関係がなかった。森・・・緑・・・グリーンか。

新井素子の1980年に刊行された作品。
SFと言うカテゴリーであるが、メルヘンかファンタジーかなぁ。

「週に一度のお食事を」「宇宙魚顛末記」と3作品がまとめられている。

大学の研究室で植物学者の助手をしている25歳の嶋村信彦が主人公。
幼い頃、家の裏にあった鬼が住むという森をさまよった時に
出会った不思議な少女:明日香と再会した事から、
明日香が普通の人間ではない事を知ってしまう。

SFと言ってもおどろおどろしい感じはせず、
本当にメルヘンチックでファンタジーぽかった。
ただ、私はSFが得意じゃないのかなぁ・・・。
ワクワクしながら読みすすむと言う感じはしなかった。

「週に一度のお食事を」はひょんな事から吸血鬼になった人類の話。
これも次が読みたい・・・とは思わなかった。

テーマ音楽になっている「グリーン・レクイエム」は聞いてみたいけど。

最後の「宇宙魚顛末記」にいたっては、
何が何だかわからない(そこがいいのかもしれないけど)
読むのが苦痛になったので、かなり読み飛ばした。

3作品の中ではやはり「グリーン・レクイエム」なんだけど、
たぶん文体や描写、台詞などが私の琴線に触れないのだと思う。
作品をとやかく言うのではなく、私には合わなかった。

1985年に「りぼんRE-BORN」と言うタイトルで映画化されている。
主人公は坂上忍、ヒロインは鳥居かほり。

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「クスノキの女神」東野圭吾

2025年05月19日 21時24分59秒 | 本 / BOOKS

東野圭吾のクスノキシリーズは、
2020年発行の「クスノキの番人」で始まる。

理不尽な解雇によって職を失った直井玲斗は、
解雇された会社に忍び込み逮捕される。
失意の玲斗の前に亡き母親の姉と名乗る柳澤千舟が現れ、
手を差し伸べる。

月郷神社のクスノキの番人になる事と引き換えに、
玲斗は釈放される。そのクスノキとは・・・
祈れば願いが叶えられると言う不思議なクスノキであった。

クスノキの番人となった玲斗の続編が2024年に発行された。

千舟と一緒に訪ねた施設で偶然出会った記憶に障害を持つ少年:元哉。
そして詩を書く高校生:佑紀奈。この二人を中心に物語は進んで行く。

クスノキの持つ不思議な力とはあまり関係のない所から、
クスノキの力が関係して行って、その辺りから・・・
なんだかすごく清々しいというか、ほっこりさせられならが読み進んだ。

ミステリーと言えばミステリーだけど、
東野作品の暗く沈んだ代表作とは異なって、
いい感じで進んでいって、いい感じで終わる、いい作品だった。

この小説の中に出て来る「少年とクスノキ」と言う絵本が、
本当に出版されるみたいなので、これも読みたいな。

「クスノキの番人」は2026年に映画化されるみたい。
これも観たい。

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「架空犯」東野圭吾

2025年05月06日 21時44分59秒 | 本 / BOOKS

2024年11月刊行の東野圭吾の小説。最新刊である。
発売されてすぐに買わずに、図書館に予約を入れた。
物凄い人気だから、半年後に順番が回って来た。

タイトルから想像できるのだが。
架空の犯罪なのか、架空の犯人なのか。

ある政治家とその妻である元女優が殺された場面から始まる。
五代努と言う刑事が捜査にあたる。

五代は優秀な刑事である。
現場に残された物、残されなかった物、
死体は何を語るのか・・・・。

犯罪は間違いなく起きている。
しかし、捜査はあらぬ方向へ向かってしまう。
そう仕向けた犯人がいる。
しかしその犯人は真犯人なのか、そうではないのか。

東野氏お得意の過去に深いしがらみがある。
血は争えないのか、血縁によるものなのか、
想像なのか、真実なのか。

なるほどと思わせる事も多いのだけど、
私にはそうかなぁ・・・・と思うところが一つあり、
(ここでは言えないけど)その点がどうもひっかかる。
それがこの作品の鍵であり、それがそうでなければ、
成り立たなくなっちゃうので、そうしておくけれど。

テイストとしたら「容疑者Xの献身」みたいな作品。
2021年の「白鳥とコウモリ」で登場した
刑事:五代努シリーズの第2弾に位置づけられるようだ。

 

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「屋久島トワイライト」樋口明雄

2025年04月21日 21時32分59秒 | 本 / BOOKS

屋久島を舞台にした樋口彰雄の小説。

いちおう「還らざる聖域」の続編みたいだけど、
前編は屋久島にテロリストが上陸してきて、
島民が生まれ故郷を守るために戦うと言うストーリーだった。

今回は主人公となる数人の登場人物は前編から引き続いているが、
屋久島に巣くう「メン」と呼ばれる妖怪と戦うストーリー。

屋久島山岳ガイド狩野哲也シリーズの第2弾と言うらしい。

屋久島には河童伝説もあって、
神の島だけに屋久杉が生息するジャングルには、
妖怪ではないにしろ、精霊とかいそうな感じはした。

伝説の妖怪の中でも山姫と呼ばれる女性の幽霊にまつわる伝説は有名。
この小説の中では妖怪界の大祭に捧げる生贄を見つけるために、
山姫が人間を魔界に誘い込む。

妖怪がいる所には祈祷師にような者もいて、
妖怪と戦うのであった。

やはり舞台となる屋久島の安房地区をはじめ、
屋久杉のトレッキングコースなども、
実際に行った場所は思い浮かぶのであった。

「還らざる聖域」のほうが身近な感じがして、
恐怖に縮み上がるのだが、
オカルト好きな人にはこちらもいいかもしれない。

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「還らざる聖域」樋口明雄

2025年04月07日 21時32分59秒 | 本 / BOOKS

屋久島を題材にした小説を捜していて見つけた作品。
2023年発行の樋口明雄の小説。

林芙美子の「浮雲」は屋久島滞在時に書かれたものであるが、
屋久島を題材にしたわけだはなく。
物語が終結したのが屋久島だっただけである。
屋久島の良さと言うか特徴に重きを置かれていなかったので、
読み終わった時に物足りなさが残った。

この小説は良かった。

この小説は屋久島を題材にしており、
ほとんどが屋久島で起こった事であり、
私が訪れた屋久島の特徴がそのまま描かれており、
読みながら記憶がよみがえってきた。

舞台が屋久島でなければならなかった、
屋久島でなければ成り立たなかった、
(他にあるのかもしれないけど)
屋久島を書いた小説の中で一番だろう。

前置きが長くなったが、
すごくいい! と思える小説だった。

何の罪もない屋久島が突然、事件に巻き込まれる。
それも大掛かりで組織的で、時代を変えるような、
世界の一部を巻き込んだ大事件。

日本の近くにある危険なK国に、
国を根底から変えるような政治的な事件が起こる。
その一端を担がされるかのように、
屋久島にテロリスト集団が送り込まれる。

屋久島の一部が破壊され、罪のない島民が犠牲になる。
島を占拠せしめんとするテロリストは、
島民を人質にして日本政府に無理難題を要求する。
それはアメリカをも巻き込む大事件に発展していく。

ストーリーには屋久島の安房の町や縄文杉のあるエリア、
私の記憶に残っているところが出て来る。
島の出身者である山岳ガイドや警察官の行動、
住民たちの島を守ろうとする気持ちなど、
地の利を使ってテロリストと対峙するところ、
手に汗握る攻防が見どころである。

テロリストって言うとそれほどピンとこないけど、
実際に武器を手にして戦争や紛争に参加した人間って、
その手で命を奪った事がある人ってやっぱり普通の人間とは違う。
気持ちの根底に座った物がある。
殺らなきゃ殺られる、そんな状況になって、
そんな状況を乗り越えて生きているわけだから。

屋久島の自然が破壊されるところは心が痛んだけど、
フィクションだからね。

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「浮雲」林芙美子

2025年03月30日 21時49分59秒 | 本 / BOOKS

屋久島に行った際に出会った林芙美子。
林芙美子本人に会ったのではなく、
たまたま通りがかった屋久島山荘と言うホテルに、
林芙美子が滞在しこの「浮雲」を執筆したという。事に出会ったのだ。

 

約3か月経って読んでみようと思い立った。

1903年(明治36年)生まれの林芙美子が、
幼児期から不遇であった自らの生い立ち「放浪記」を書いたのが、
1928年(昭和3年)である。この大ヒットで人気作家となった。

「浮雲」は1951年(昭和26年)に屋久島で書かれた。

物語は1943年(昭和18)にベトナムにタイピストとして渡った
「ゆき子」が主人公であり、ベトナムでの仕事で知り合った
農林省の役人で植物の専門家である富岡との愛憎劇である。

富岡は日本に残した妻がありながら、
現地人のメイドとも関係し、ゆき子とも不倫関係になる。

戦争が終わって二人は別々に帰国するが、
富岡にとってベトナムでの出来事は火遊びであった。
ゆき子は富岡を訪ねるが農林省を辞めた富岡は落ちぶれ果てており、
ゆき子の事を邪魔者と考えていた。

ゆき子はすっかりシタタカになっており、
富岡にまとわりついて行く。
仕方なく富岡は現実から逃げるためにゆき子を心中しようと、
伊香保温泉に行くが、そこでも富岡は現地の若い女と関係を結び、
またそれが死ねずに帰った東京で事件を巻き起こす。

富岡と言う男は女にだらしなく、
現実から逃げるために浮雲のように女から女へと渡り歩く。
そして、ゆき子や多くの女たちを苦しめてしまう。

舞台はベトナムから東京、伊香保温泉、東京、静岡と変わって行き、
屋久島の字が出たのは300ページ以降・・・・
今か今かと読み進んで行って、ようやく・・・・と思った。

屋久島の部分は起承転結の結の部分で、
410ページのうち終わりの100ページもなかった。
現代の屋久島が観光地化しているといっても、
大自然が売りである。終戦まもなくの屋久島では、
夢のような楽しい毎日を送れれるわけもなく・・・・
浮雲のように生きて、浮雲のように消えて行った。

それでも私が見たホテルや何ヶ所かの訪問地は登場したので、
思いを巡らせる事はできた。

戦争に負けた日本は物もなく金もなく、
現実から逃げるために犯罪を犯したり、
他人を欺いたりする事は生きるために仕方なかった、のかもしれない。

旅行好きの私は、ベトナム(行ったことないけど)の下りや、
旅行のシーンは心躍る気持ちだったけれど。
やはり貧しさからくる暗さや、気持ちの移り変わり、葛藤・・・
この辺りがスイスイと読めなかったところかなぁ。

1955年に高峰三枝子主演で映画化されている。
富岡役は作家:有島武郎の長男である森雅之。
1973年に亡くなっているので知る由もないのだが、
富岡役がハマるほどのニヒルな演技が板についた俳優で
私生活も富岡同様であったようだ。

 

 

 

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「魔女の後悔」大沢在昌

2025年03月22日 21時14分59秒 | 本 / BOOKS

2024年発行の大沢在昌の「魔女シリーズ」第4弾。

14歳で実の祖母に地獄島と言う売春島に売られ、
24歳で島抜けし、顔を変え、過去を捨てて、壮絶な経験を経て、
闇のコンサルタントとして、生きる水原。

水原は経験を通して出会った男の人相や物腰などで、
どんな人間かが見抜いてしまう特殊な能力がある所から、
魔女と呼ばれている。

闇のコンサルタントとは何か?
裏社会の事件を追い悪を懲らしめる、
解りやすく言えば必殺仕置き人のような仕事である。

基本的には自分の他は誰も信じないのだが、
元刑事で性転換手術を受けて女性として生きる星川とはいいコンビ。
公安あがりの湯浅には情報を提供しつつ身を守ってもらえる程度の
利益は与えている。

元極道の女親分で今は京都の尼寺の浄景尼からの依頼を受け、
お世話になった恩返しをすべく無償で仕事を請け負う水原。
とある13歳の少女を京都の尼寺へ護衛して欲しいという依頼だが、
少女が相続する多額の遺産を狙った犯人が襲ってくる。

少女の父親が残した遺産はまっとうな金でなかったようで、
詐欺に遭ったという韓国からの追手もいるようだ。

犯人の中に水原に個人的な恨みを持つ人物がいる事に気づいた水原は、
水原の命を奪いたい主犯が遺産目的の共犯者を制御できないように仕向ける。

その主犯の正体は・・・地獄島にあった。
どこでどう巡り巡ってきたのか?
少女と水原には所縁があるのか?

終わり方が続編あるよ的だったので、次作も期待しちゃうなぁ。

 

 

 

 

 

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「拳に聞け」塩田武士

2025年02月28日 21時41分59秒 | 本 / BOOKS

2015年発行の塩田武士のボクシング小説。

元芸人で便利屋の省吾が立ち退きを迫った、
大阪の弱小ボクシングジムを舞台に描かれた、
感動的なストーリーなのだが、大阪やからね。
ボケとツッコミ満載なのだった。

ハードボイルド作家の大沢在昌の小説で、
大阪を舞台に営業マンが探偵のように犯人を追いつめていく作品がある。
ハードボイルドなのに大阪が舞台であるという事と、
大阪弁の台詞だとハードボイルドに落ちとツッコミが存在し、
思わずプッと吹き出してしまうところもある。

本作品も主人公が元お笑い芸人と言う事もあるが、
普通の登場人物でも、まじめな設定のシーンでも、
思わずプッと吹き出してしまうところもある。

そこが大阪弁の持つ魔力なのだと思う。

大阪の弱小ボクシングジムには会長と選手が1人、
選手は会長の息子である。
センスのある息子の勇気をチャンピオンにするため、
夜はタクシー運転手をしている会長が英才教育をしている。

そのボクシングジムを廃業させ、
その場所に定食屋を開こうとする女性が、
省吾に立ち退かせる仕事を依頼するところから始まる。

立ち退きを迫るためにジムを訪ねた省吾だが、
親子の状況を見て逆に協力する事になってしまう。
依頼者の女性もジムに状況を見て、
住み込みで一家の様子を見る事になってしまう。

なんだかよく解らないうちに、
そのジムに協力してしまうところが、
なんだが大阪チックなのである。

勇気は期待に応えるべく練習を重ね、
紆余曲折を重ねつつ次第にランキングを上げていく。
一気にスターダムに駆け上がるわけはなく、
一進一退の末に一歩づつ上り詰めて行く所が現実っぽい。

そして一度負けた相手がチャンピオンになった時、
リベンジを果たすべく挑戦者となる勇気。
ここでも単なるサクセスストーリーにならないところが、
これまた現実っぽいのであった。

一度は捨てお笑い芸人への夢を、
勇気や一家の苦労を助けているうちに取り戻す省吾。
もういちど立ち上がり、一度は去った舞台へチャレンジして行く。

ボクシングをテーマにしているが、
周りの人間の喜怒哀楽や背負った物、
本来は暗く重くなるところも、
大阪独特のボケとツッコミで笑い飛ばしてしまう。
軽やかでしんみりしないボクシング小説だった。

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「1R1分34秒」町屋良平

2025年02月27日 21時40分59秒 | 本 / BOOKS

ここのところボクシング小説を読み続けている。
タイトルからしてボクシングらしい。
2019年発行の町屋良平の作品。

主人公はボクで名前はない。
4回戦の若いボクサーで、初戦はKOで勝ったものの、
その後3敗1分であり、1勝3敗1分、
早い話が弱いのである。ただパンチ力はあるようだ。

しかし、気持ちの強さがない。
何が何でもとか、チャンピオンになってとか、ない。

なんでボクシングをやってるのか。

でもこういう若者がいるのかもしれない。
みんながチャンピオンになれるわけではないし、
センスがあるわけではない。

ボクは飲食店でバイトをしている。
店のみんながチケットを買ってくれたり、
シフトを優遇してもらったりしていたけど、
勝てないのでまわりから気を使われる存在になる。
ボクはジムに体験入門でやって来た、
女の子をナンパしたりする。

その辺にいるただの若者である。
ボクシングに賭けているものがない。
果たしてボクシングをやる意味があるのか。

そんなボクはトレーナーに見放されてしまう。
しかしそんなボクだが、パンチ力があるので、
同じジムの6回戦ボクサーである通称ウメキチが、
トレーナーとしてつく事にある。

ウメキチはボクの欠点をよく解っており、
解りやすく指導していく。ボクはウメキチの指示を
うっとうしく思いつつも従って行く。

そして迎える次の試合・・・・
「1R1分34秒」でKO勝ちする・・・・
のかと思ったら・・・
「1R1分34秒」でKO勝ちするのを空想するのであった。

 私はボクシングをした事がない。
 (正確には体験入門だけだ)
 だから技術的な事はよく解らないのだが、
 ウメキチの分析と指導はとても分かりやすかった。

 減量中の精神的な浮き沈みとか、
 トレーニングのつらさやモチベーションとか、
 周りの環境との付き合い方とか。
 この辺りも実際そうなんだろうと思った。

 作者は物凄くボクシングに詳しいんだなぁ。
 もしかしたら真剣に打ち込んでいた事があったのかなぁ、
 などと思っていたら・・・・
 最後のあとがきを見て驚いた!

 なんと技術的な事は小熊ジムの田之岡条選手の説明を受けていた。
 田之岡選手は私の友人がスポンサーについている選手だ。
 スポンサーにこの本を推薦したら、やっぱりビックリしてたわ。

世の中狭いなぁ。

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「あゝ、荒野」寺山修司

2025年02月07日 21時30分59秒 | 本 / BOOKS

原作は1966年に刊行された寺山修司の長編小説。
2107年に原作映画がノベライズされた。

寺山修司と言えば・・・
私は三上博史のデビュー作「草迷宮」を上げる。
それと八千草薫の「田園に死す」、独特な世界である。

原作では1960年代が舞台であるが、
2017年に映画化されるにあたって
舞台は2021年の東京オリンピック後に設定された。

主人公は、傷害事件を起こし少年院から出所した新次と
言語障害を持つ床屋の健二。
父親が自殺した事で母親に捨てられ孤児院で育ち、
悪い事に手を染め少年院に3年いた21歳の新次。

韓国人の母親と韓国で暮らしていたが、
母親が死んでしまい日本人の父親に日本に連れて来られ、
虐待されながらも床屋で働く31歳の健二が、
潰れかけたボクシングジムに住み込んでプロになる。

全く異なったバックグラウンドで性格も正反対の2人が、
お互いにひかれあいながら兄弟のように生活して行く。

新次の母親、彼女、彼女の母親、健二の父親、
ボクシングジムのオーナー、トレーナー、オーナーの愛人、
登場人物がどこかで繋がっており、
複雑に絡み合う人間関係。
かみあう気持ち、すれ違う気持ち。

寺山修司作品独特のドロドロしたものが、
ボクシングに絡みついてきて、
この作品の前に読んだ沢木耕太郎作品の爽やかさとは両極の物語。

ボクシングをする動機がチャンピオンになりたいという事ではなく、
新次は殺したいほど憎んでいる男がボクサーになっていたので、
その男と戦い殺すためであり、ずっと孤独であった健二は、
誰かとつながるためにボクシングを続ける。
最後は二人がその目的を達成するために戦うのだ。

「感動のラストシーン」とあったけど・・・
なんか感動と言うより・・・なんだかなぁ。

寺山ワールド、ボクシングでなくても良かったかもしれないなぁ。

 

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