不特定多数への客商売とは ホテルのフロントなんて、客商売の一つ。例えば、
秋にイスタンブールに行ったが、訳ありで少々豪華な、ヒルトンというところに2泊した。案外円高だから、思ったほど高くない。男尊女卑の現地にあって、米国系ホテルというから、モデル系のフロント女性が生意気だったりして、しかし毎日彼女は、300室もの客を相手にして、時給千円かもしれないが、だるいなんて言いながらフロント業務する。
しかし、私としては、そのぶっきらぼうな女でも、ヒルトン宿泊なんて、初めて、今後人生2度とないとして、しかもイスタンブールなんて二度と行かないわけで、ならば、その2泊は人生のエポックじゃないけれど、ちょっとしたいい経験になった。記憶に残る。
ホテルマンとは、他人の人生の演出をする。他人の人生に入り込む。きわどい商売しているんだな。好感度ならいいけれど憎まれたら、一生恨まれる。彼女たちは、人生に一度しか経験しないときに、ばったり立ち合うのだ。
似たようなもので、隣の足立区で、20年前に尾崎豊という愚か者が、薬で自殺した。護国寺の葬式に5万人来たのだから、それは昭和天皇よりも、美空ひばりよりも多かった。死んだ場所は、小峰さんというお宅の敷地内。それが理由で、小峰さんは、なんとこの20年自宅の一部を開放して、偏差値の低い全国の尾崎ファンが、この死に場所に追悼とか、怨恨とか、いろんな理由でくるんだけど、それ全部受け入れて、ボランティアしていた。想像を絶する。
なんで、当時53、いま73歳の、尾崎なんて知らなかったお爺さんが、こんな20年ボランティアしたんだろうと、それはヒルトンのバカ女よりも、100万倍他人の人生に入り込んだ。しかもお客商売でもないのに、人のいい小峰さんなんである。どうしてこんなことしたのか。
「ファンが来るからね」とその小峰さんはいうんだ。女の子が1日中そこで泣いている。
「何で泣くの」
彼女は答えない。
「尾崎という人が、ここで死んだから?」
「そう」
夜中になっても他人の家の前に座り込んで、泣く。翌朝まで泣く。
「そんなんじゃ、風邪ひくから、家の中に入りなよ」
こうして、尾崎ハウスという小峰さんのファンに開放した1部屋は、20年続いた。10万人以上のファンに会った。10万人の人生に小峰さんは関わった。
まあ簡単に言えば、あの馬鹿な尾崎が、小峰さんの敷地に入り込んで死んだからいいようなもので、他の家だったら、ファンはもてなしを受けていない。小峰さんによって、救われた人は、この10万人の中にどれくらいいるか。全員か、半分か。
大勢の偏差値の低い人を助けた。そういうことが、ボランティアだ。しかし、なぜ? なんで、そんなことやった? 好きだから、人助け、困っている人は嫌いじゃない。どんどん押しかけてきて、辞めるわけにいかなかった。続けるか。そして20年。
世間にはこういうことができる人がいる。私にはできないから、相当理解できないが、少し分かってきた。奇特な人だ。普通は真似できない。
その人の暖かさが、他人の人生を左右する。
秋にイスタンブールに行ったが、訳ありで少々豪華な、ヒルトンというところに2泊した。案外円高だから、思ったほど高くない。男尊女卑の現地にあって、米国系ホテルというから、モデル系のフロント女性が生意気だったりして、しかし毎日彼女は、300室もの客を相手にして、時給千円かもしれないが、だるいなんて言いながらフロント業務する。
しかし、私としては、そのぶっきらぼうな女でも、ヒルトン宿泊なんて、初めて、今後人生2度とないとして、しかもイスタンブールなんて二度と行かないわけで、ならば、その2泊は人生のエポックじゃないけれど、ちょっとしたいい経験になった。記憶に残る。
ホテルマンとは、他人の人生の演出をする。他人の人生に入り込む。きわどい商売しているんだな。好感度ならいいけれど憎まれたら、一生恨まれる。彼女たちは、人生に一度しか経験しないときに、ばったり立ち合うのだ。
似たようなもので、隣の足立区で、20年前に尾崎豊という愚か者が、薬で自殺した。護国寺の葬式に5万人来たのだから、それは昭和天皇よりも、美空ひばりよりも多かった。死んだ場所は、小峰さんというお宅の敷地内。それが理由で、小峰さんは、なんとこの20年自宅の一部を開放して、偏差値の低い全国の尾崎ファンが、この死に場所に追悼とか、怨恨とか、いろんな理由でくるんだけど、それ全部受け入れて、ボランティアしていた。想像を絶する。
なんで、当時53、いま73歳の、尾崎なんて知らなかったお爺さんが、こんな20年ボランティアしたんだろうと、それはヒルトンのバカ女よりも、100万倍他人の人生に入り込んだ。しかもお客商売でもないのに、人のいい小峰さんなんである。どうしてこんなことしたのか。
「ファンが来るからね」とその小峰さんはいうんだ。女の子が1日中そこで泣いている。
「何で泣くの」
彼女は答えない。
「尾崎という人が、ここで死んだから?」
「そう」
夜中になっても他人の家の前に座り込んで、泣く。翌朝まで泣く。
「そんなんじゃ、風邪ひくから、家の中に入りなよ」
こうして、尾崎ハウスという小峰さんのファンに開放した1部屋は、20年続いた。10万人以上のファンに会った。10万人の人生に小峰さんは関わった。
まあ簡単に言えば、あの馬鹿な尾崎が、小峰さんの敷地に入り込んで死んだからいいようなもので、他の家だったら、ファンはもてなしを受けていない。小峰さんによって、救われた人は、この10万人の中にどれくらいいるか。全員か、半分か。
大勢の偏差値の低い人を助けた。そういうことが、ボランティアだ。しかし、なぜ? なんで、そんなことやった? 好きだから、人助け、困っている人は嫌いじゃない。どんどん押しかけてきて、辞めるわけにいかなかった。続けるか。そして20年。
世間にはこういうことができる人がいる。私にはできないから、相当理解できないが、少し分かってきた。奇特な人だ。普通は真似できない。
その人の暖かさが、他人の人生を左右する。