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桜と絵本と豆乳と

ヨッパライの帰る場所

2017年08月08日 | 読書
 テレビやラジオで見聞きする人に「憧れ」を抱いたことは何度かある。その最初が「北山修」であった。フォーク・クルセダーズそして加藤和彦とのデュオ、そのわずかな期間を、本当に風のように過ぎ去ったので淡い思いであるが、「格好いい」印象が残っている。その時代の裏側も存分に語られている新書を見つけた。

2017読了79
 『帰れないヨッパライたちへ』(きたやまおさむ NHK出版新書)


(穂が出始めましたね)

 精神科医になったことは前から知っていた。テレビにも出演していた。しかし著者を手にするのは初めてである。副題は「生きるための深層心理学」と名づけられている。書名は当然ながら空前の大ヒット曲「帰って来たヨッパライ」との対照であろう。何故「帰れない」のか。それは「居場所」がないからである。


 この本は「嫉妬の心理学」と名づけていいほど、キーワードとして「嫉妬」が登場する。実生活では、あまり印象のよくない感情ではあるが、心理学としてみれば、人生を突き動かす原動力になっているという論に納得できた。要はその感情を認めて、いかに行動し評価していくか、世渡りするかということである。


 そのために非常に大事な役割を果たす存在として「第二者」がいる。この言葉はとても印象付けられる。ふだん「第三者」とはよく使うが、それは私(第一者)と対する者だ。そうではなく、傍や背にいて中立的でありながら、絶えず助言し励まし、橋渡しをする役目を担う者である。多くの場合「母親」が該当する。


 この存在の重要性を今さらながら痛感する。形態は変わっても「母性原理」の働かせ方が、社会へ強い影響を与えることを再確認しよう。男女共同参画社会の中でもう一段重視して位置づけたい。この精神科医が言い切った「愛はまず『居場所』を提供すること」を、未来のために真剣に考え工夫しなければならない。