すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

心地よさの感覚麻痺

2017年08月01日 | 読書
 今の自家用車に買い換えるときに、「ダウンサイジングをしよう」と思っていた。ちょうど5年前だ。大震災もありそうした考え方も少し広まってきた頃か。結局、比較試乗したら同じモデルに収まった(むしろ車体はモデル変更で大きくなった)。心地よさの拡大に支配されている頭、許される環境があったということだ。



2017読了78
 『楽しい縮小社会』(松久寛・森まゆみ  筑摩選書)

 「縮小社会」と言えば、どうしても政治の動きと関わる。しかし、どんなレベルで語るにしろ、私たちの未来は縮小社会であることに変わりはないだろう。問題なのはむしろ「楽しい」方なのだ。それを楽しいと思える方向に行くのかどうか、である。考えてみると、それは大きく「環境」と「(個の)意識」で決まる。


 工学者と作家の対談を中心にしながら、その前後を縮小社会の実践に絡んだ作家の思いと事例紹介という構成になっている。対談は「縮小社会の可能性」「エネルギー」「社会保障」「セーフティネット」が話題であり、いずれも経済成長と人口問題がカギ。個の生き方、暮らし方に引き寄せて考えられるかどうかである。


 様々な視点が提示された。特に工学者が語る「エネルギー」の問題が印象深い。農作物や水産物を生産する、供給するためのエネルギーがどれほどかかる現状なのか、それらを食することもエネルギー換算すれば、どんな差引になるのか。その積み重ねによって検討される未来予測は、どう選択するべきか興味深かった。


 思い浮かび上がるのは、先月訪ねたドイツとの比較だ。我が国の日常における「サービス」があまりに騒がしくないか。必要のないモノ、コトにあふれている。まずその精選をするべきではないか。社会全体の断捨離、そして自らは半径数メートルのことを見廻して、心地よさの感覚麻痺がないか点検してみようと思う。