すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

幸せはエビの数じゃない

2017年08月22日 | 読書
 「昭和だねえ」と言いたくなる時がある。
 呟いたその響きが、結構幸せ感に満ちていると思うのは、自分だけではないだろう。
 単なる懐かしさだけでなく、何を指しているのか本当に見究めれば、残り少ない?平成時代でも十分成立するはずなのだが…。


(夏野菜カレーに、昨日の残りのエビフライ1本添えて)

Volume71
 「年取って、ものがロクに食べられなくなって、エビを数えたりしなくてもいいかわりに、いっぱい余らせて、あまり食べられなかったっていう方が不幸せじゃないか。今みたいに、みんなで『一人三個よ!』なんか言って食べるのが、いちばん幸せなんだよ」

 これは、若かりし頃の永六輔の言葉だ。

 仲間と中華料理を食べにいき、渥美清が「いつか、俺がいっぱい働いて、数えなくともいいように食わしてやるからな」とまるで寅さんのように言ったときに、永がそれを制して述べた言葉だという。

 その場にいて「一人三個よ!」と仕切った黒柳徹子が、永六輔への弔辞として述べている。

 なんとも恰好いい。
 言い方は変かもしれないが、何か「人間としての風味」が感じられる言葉だなあ。
 永はもちろん、渥美や黒柳にもそれぞれの風味が備わっていて、強く印象付けられる。


 幸せはエビの数にあるわけじゃない。
 等しく分けあって食べることや、その時の気持ちに寄り添い願うことや、目の前の事実から明日を想像し希望につなげること、そして、今の自分を認め励ますこと…そんな心根が、花咲かせたときに感じることじゃないか。


 風味のある人たちは、こんなことをさらって言ってのける。

 そんな大人の姿が減っているからこそ、大切に拾っていきたい。