FRB議長、軟着陸「非常に困難」-景気後退の「可能性」はある
Craig Torres 2022年6月22日 22:41 JST 更新日時 2022年6月23日 7:42 JST ブルームバーグ
リセッションの可能性は特に高まってはいない-継続的利上げ適切
一段のサプライズに金融当局は「機敏に」対応していく必要がある
米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は、大幅利上げにより米経済がリセッション(景気後退)に陥る可能性があることをこれまでで最も明確に認めた。経済のソフトランディング(軟着陸)については「非常に困難」だと述べた。
議長は22日、上院銀行委員会の公聴会で証言。冒頭証言後の質疑応答で、「別のリスクは、われわれが物価安定を取り戻すことができず、経済に高インフレを根付かせてしまうことだ」とした上で、「その任務において失敗は許されず、インフレ率を2%に戻さなければならない」と明言した。
冒頭証言では、高インフレを抑制するため「継続的な利上げは適切になるとわれわれは想定している」と指摘。「過去1年間インフレが上向きのサプライズとなっているのは明白であり、一段のサプライズが待ち受けている可能性もある。よって、われわれは入手するデータと変化する見通しに機敏に対応していく必要がある」と述べた。
連邦公開市場委員会(FOMC)は今月開いた会合で、政策金利を0.75ポイント引き上げた。この利上げ幅は1994年以降で最大。会合後に記者会見した議長は、次回会合で0.75ポイントないし0.5ポイントの追加利上げが決定される可能性が高いと説明したが、22日の公聴会では今後の利上げ幅への直接的な言及はなかった。
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議長はこの日の証言でインフレについて、「高インフレがもたらしている苦難をわれわれは理解している」とし、「われわれはインフレを押し下げることに強くコミットしており、迅速に動いている」と説明した。
金利先物市場の動向によれば、米金融当局は今後も利上げを継続し、政策金利は来年半ばまでに約3.6%でピークに達するとみられている。
パウエル議長は冒頭証言後の質疑応答で「金融環境は引き締まり、一連の利上げを織り込んできている。それは適切なことだ」とし、「われわれは進んで利上げを行う必要がある」と語った。
米金融当局はリセッションを予想していないが、エコノミストの間では今後2年間のどこかの時点で景気低迷に陥る可能性があるとの見方が強まっている。
パウエル議長は冒頭証言で「米経済は非常に力強く、金融政策の引き締めに応じる態勢が整っている」と語った。その後、当局として「リセッションを引き起こそうとしておらず、引き起こす必要があるとも考えていない」と話した。
質疑応答では、リセッションの可能性が現在のところ特に高まっているとはみていないとしつつ、「可能性があるのは間違いない。われわれが意図する結果では全くない」と説明。ここ数カ月の出来事により、金融当局として力強い労働市場を維持しつつインフレを鈍化させることが一段と困難になっていると述べた。
議長はソフトランディングが「われわれの目標だ。非常に困難なものになるだろう。戦争や商品価格、サプライチェーン問題の深刻化など、ここ数カ月の出来事により困難さが著しく増している」と語った。
パウエルFRB議長(6月22日)Photographer: Ting Shen/Bloomberg
ワシントンに拠点を置く政策分析会社LHマイヤーのエコノミスト、デレク・タン氏は「リセッションリスクを巡る懸念は一段と明らかだ」と指摘。米金融当局はリセッションを招こうとしていないが、利上げ継続でそうなる可能性はあるというメッセージは「極めて難しい綱渡りだ」と述べた。
ブルームバーグ・エコノミクスのエコノミスト、エレーナ・シュルヤティエバ氏とアナ・ウォン氏は、「パウエル議長の上院銀行委員会での証言のトーンは直近のFOMC会合後の記者会見でのタカ派コメントに沿うものだった。金融当局はインフレ問題の現実を認めており、景気悪化のリスクの増大など金融引き締めに伴う代償を受け入れることを示唆している」と分析した。
原題:Powell Says Soft Landing ‘Very Challenging;’ Recession Possible(抜粋)
(議長発言や市場関係者のコメントなどを追加します)