新型コロナ 死者の数が急増 最多に 年代内訳は?対策は?
2022年2月17日 19時51分 NHK WEBより
15日は236人、16日は230人、そして17日は271人。
新型コロナウイルスによる全国の死者の数は3日連続で200人を超え、17日は一日の発表としてこれまでで最も多くなりました。
第6波では、特に高齢者で亡くなる人が相次いでいます。
専門家は、感染をきっかけに持病などが悪化して死亡するケースが起きていると指摘。
高齢者の感染をめぐるデータや、対策に追われる高齢者施設の状況をまとめました。
新型コロナウイルスによる全国の死者の数は3日連続で200人を超え、17日は一日の発表としてこれまでで最も多くなりました。
第6波では、特に高齢者で亡くなる人が相次いでいます。
専門家は、感染をきっかけに持病などが悪化して死亡するケースが起きていると指摘。
高齢者の感染をめぐるデータや、対策に追われる高齢者施設の状況をまとめました。
年代別の内訳 高齢の人ほど多く
1月以降、自治体から国に死亡が報告された感染者のおよそ9割は70代以上で、高齢の人ほど多くなっています。
▽90代以上 34.4%、
▽80代 36.6%、
▽70代 19.6%、
▽60代 4%、
▽50代 2.7%、
▽40代 1.7%、
▽30代 0.7%、
▽10代・20代 それぞれ0.1%、
▽10歳未満は0%。
※1月5日~2月8日。四捨五入のため、合計は100%になりません。
専門家 「高齢者 早期のワクチン3回目接種を」
厚生労働省の専門家会合のメンバーで、国際医療福祉大学の和田耕治教授は「高齢者では感染をきっかけに呼吸機能が低下したり、持病が悪化したりしている。すると、それまでの生活ではできていたことができなくなったり、寝たきりの状態になったりして肺炎などにかかり、亡くなるということが実際に起きている。70歳以下でも持病がある人や妊婦、透析や抗がん剤の治療を受けている人などは重症化しやすい」と注意を呼びかけています。
そのうえで「最も期待されるのは、ワクチンの3回目の接種をいかに早く高齢者に受けていただくかということだ。発症や重症化を予防する効果が高まるだけでなく、社会として医療のひっ迫を防ぐ効果もある」と指摘しています。
また、「自治体によっては、接種の準備ができていても高齢者にうまくアクセスできていないところがある。高齢者に3回目の接種の意義を伝え、相談窓口をつくって簡単に予約をできるようにするといった対応も必要だ。家族も、声かけや予約の手伝いをすることを考えてほしい」としています。
第6波の死者数 “4300人超のおそれ”と推定
新型コロナウイルスの「第6波」による死者数の推定結果を京都大学の西浦博教授らのグループがまとめ、16日、西浦教授が厚生労働省の専門家会合で示しました。
グループでは、2月上旬までの新型コロナの死者数のデータなどから年代ごとの致死率を計算し、今後の感染状況の試算と組み合わせて、オミクロン株が中心となっている流行の「第6波」での死者数を推定しました。 その結果、去年12月1日からことし4月20日までの間に新型コロナで亡くなる人の数は、
▼40代から50代では合わせて138人、
▼60代で326人、
▼70代で778人、
▼80代以上では3097人と推定され、
累計では4339人に上る見込みだということです。
流行の「第5波」の際の死者数はおよそ3000人とされていて、この人数を上回るおそれがあるということです。
グループによりますと、今回の試算にはワクチンの3回目接種などの効果は含まれていないということで、西浦教授は「ワクチンの3回目の接種と高齢者施設での感染対策で死者数を減らすことができる。高齢者の3回目接種は、実施すればするほどその人が助かることにつながると考えている」とコメントしています。
高齢者施設 感染きっかけに亡くなる人相次ぐ
高齢者施設では、新型コロナの感染をきっかけに体の衰えが進み、新型コロナ以外の死因で亡くなる高齢者も相次いでいます。
厚生労働省のまとめによりますと、今月14日までの1週間に全国で確認されたクラスターなどは合わせて1227件にのぼり、このうち高齢者福祉施設は455件と4週連続で過去最多を更新しました。
このうち茨城県茨城町の介護老人保健施設は、合わせて49人が感染するクラスターが発生して2人が死亡しました。
施設は大部屋が多く居住スペースを分けるゾーニングが難しかったこともあり、先月24日に職員2人と入所者1人が感染したあと、およそ2週間で入所者29人、職員20人に感染が広がりました。
施設では感染が発生した直後、保健所に感染した入所者の入院を求めましたが、認められたのは肺炎などの症状が出た8人にとどまりました。
しかし、もともと基礎疾患があったり体力が弱かったりする高齢者は、感染すると発熱で水分がとれなくなるなどして、体調を悪化させる人が相次いだといいます。
このうち73歳の女性は、先月27日に発熱したあと保健所からは入院対象ではないとされましたが、熱が下がらず食事もとれなくなりました。
女性には基礎疾患があったため、発症から5日後に入院ができましたが、その3日後に病院で亡くなったということです。
また、95歳の女性は、感染を確認した日の夜に血液中の酸素飽和度が低下し救急搬送を依頼しましたが、搬送されたのは翌日の午後でした。
入院後、コロナの症状は治まったということですが、感染をきっかけに体が衰え、9日後に亡くなりました。
死因はコロナではなく老衰とされました。
この施設では3回目のワクチン接種が始まったばかりで、感染が広がったフロアではまだ接種できていなかったということです。
施設の医師と看護師が点滴や解熱剤の投与などの医療的な対応にあたりましたが、感染者が増えると対応は難しく、施設は高齢者の早期の入院や感染症の専門家の派遣などを求めています。 施設を運営する社会福祉法人の木村哲之法人本部長
「オミクロン株は軽症だというイメージが広がっているが、虚弱で基礎疾患がある高齢者にとっては命に関わります。これだけ感染が広がると、施設内にウイルスが持ち込まれないように水際で食い止めることにも限界があります。感染が発生した場合の医療的な支援を整えてほしい」
医師「高齢者に力を注いでいくべき」
新型コロナウイルスで死亡する高齢者が増加していることについて、自宅療養者の診察にあたっている医師は、介護が必要な身体機能が衰えた高齢者が感染をきっかけに体調を悪化させ衰弱するケースが相次いでいると指摘します。
東京・板橋区の診療所の鈴木陽一医師は、自宅や高齢者施設で療養する感染者をのもとを訪問して診察しています。
特に身体機能が衰えた高齢者が感染した場合、のどの痛みや熱の症状が出て衰弱するケースが相次ぎ、なかには飲み込む力が弱くなって誤えん性肺炎を起こして亡くなった人もいるということです。 板橋区役所前診療所 鈴木陽一医師
「コロナは軽症でも、もともと体力のない高齢者は脱水で衰弱するなど実際の状態はかなり悪くなっていくことが少なくない。感染をきっかけに基礎疾患が悪化したり、誤えんが増えて肺炎になったりするなど、もともとぎりぎりのところで小康状態を保っていた人が一気に崩れるという状況になっているのではないか。オミクロン株でリスクが高いのは、ふだんから介護の必要性が高い高齢者であり高齢者施設だ。治療薬の数や医療現場の力に限りがあるなか、特に危険な状態にあるこうした高齢者に力を注いでいくべきではないか」
高齢者施設のクラスター防ぐには
東京・八王子市では1月末から高齢者の入院が増加し、医療機関の病床がひっ迫する事態となっていて、市は、高齢者施設で感染が確認され軽症の場合は入院せずに施設内で療養してもらう対応を始めました。
それにあたって、市は、高齢者施設で療養する際にクラスターが起きないようにする対策について、感染症の専門家による指導を進めています。
先週開かれたオンラインセミナーでは、東海大学医学部付属八王子病院の感染症の専門看護師や医師が講師となり、市内の高齢者施設の担当者120人余りが参加しました。
セミナーでは、感染した利用者の部屋を「レッドゾーン」として、対応する職員を限定したうえで備品やごみ箱をほかのエリアと分けることや、感染した利用者の介助の頻度を減らすことも有効だと説明されました。
セミナーを開いた新井隆男医師は「感染者全体が増えるのにともなって、重症者が増えて病床を埋めていて、施設の高齢者が感染しても入院できない状態になっている。施設にとっては不安かもしれないが、感染対策のポイントをおさえて対応してほしい」と話していました。
高齢者施設 現場の対策は
セミナーに参加した高齢者施設は、入所者が新型コロナに感染した場合でも施設内で療養してもらえるよう対策を進めています。
八王子市にある特別養護老人ホーム「偕楽園ホーム」には、60代から100歳代までのおよそ100人が入所しています。 施設では、入所者が感染した場合、それ以上感染が広がってクラスターになるのを防ごうと、ウイルスの飛散を防止する「陰圧装置」を備えた2つの部屋で療養してもらうことにしています。
医師の指導のもと、この部屋を中心に「レッドゾーン」を設け、ほかの入所者と接触しないようにします。
また、セミナーでは、消毒液や防護服、それにマスクなどの感染対策の備品は、部屋ごとに設置する必要があると指摘されましたが、複数の感染者や濃厚接触者が出ても対応できるよう、数百個ずつ常備しているということです。
この施設では、入所者や職員の感染は出ておらず、セミナーを受けて対策を進めているものの、施設内で感染が起きた場合には不安もあるといいます。
施設には、医師や看護師は常駐していますが、点滴や酸素の投与を行う医療設備はありません。
入所者の症状が急変して命の危機にひんした際に、すぐに医療機関への入院など適切な治療を受けられるのか、不安は尽きないと話します。 鷹野賢一施設長
「施設内での療養は軽症ならばできるかもしれないが、症状が悪化した際にここで治療はできません。医療機関がひっ迫する今の状態で受け入れてもらえるのか、その時にならないと分からないのが心配なところです。高齢者の生活を守るのが私たちの使命なので、感染対策を徹底したい」